優しい嘘

陽紫葵

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優しい噓

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それから、毎日のように会うようになった。
福崎さんの店に行ったり、家に泊まったり。
そんな日々が1か月程続いた頃、ある女性が家に訪ねてきた。
いきなり、
「彼と別れて」
と言った。
彼って、もしかして、福崎さんの彼女?と頭をよぎったが、
「晋ちゃんと別れて」
と言った。
「晋也の事?」
「年上だからって、偉そうに」
「別に私は」
ふと気付いた。お腹が大きい。そうゆう事か。
「わかった。わかったから、今日は帰って」
と、帰ってもらい、すぐに晋也に電話をした。
「彼女来たよ」
「彼女って?」
「惚けないで!」
「そっか、アイツ行ったんだ?」
「妊娠、してるの?」
「あぁ、ごめん」
「いつから?」
「2年、かな」
やっぱ、あの頃か。
「鼓ちゃんのこと嫌いになったわけじゃない。会社の同僚で、飲み会で成り行きでそうなって、ずっと鼓ちゃんに申し訳なく思ってて、会うと気まずくて、なんか、避けるようにもなって、そうしてる内に、彼女と会う方が多くなって、甘えてしまって。この前、行った時、別れようって言おうと思ったのに言えなくて。また、あんな態度取ってしまって、ごめん」
私は何も言えなくなった。
「鼓ちゃん、聞いてる?」
「うん」
「鼓ちゃんもいるんだろ?他に」
「え?」
「その人と、幸せにな」
それにも答えられない。
「じゃ」
と、電話を切った。
Tutu…と電話の音が、冷たく感じた。
私は、晋也の何を見てたんだろう?きっと、何も変わってなかったんだ。でも、私は気付けなかった。
福崎さんい会いたい。
でも、福崎には彼女がいる。私にも彼氏がいるから、バランスの取れた付き合いだったはず。
別れたからと言って、委ねることは出来ない。
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