紅葉かつ散る

月並

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十一、訪問

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 次の日、私は珍しく自分から寺子屋に足を向けた。小林君に、昨日のことを謝らなければならないと思ったからだった。
 けれど教室に入るのが怖くて、入り口の前で躊躇していた。

「田辺、そんなところで何をしている。さっさと入れ」

 声を掛けられた。振り向くと先生がいた。頭が真っ白になってしまった。

「また人見知りか?」

 先生は呆れたように溜め息を吐く。私は今にも逃げ出したい衝動をなんとか抑えるのに必死だった。

「先生、あの」
「なんだ? お前と会話をするのは初めてだ」
「あ、あの、小林君は」
「小林? あいつは今日も来てないぞ」

 「も」という言葉に引っかかりを覚えた。
 小林君がいないのなら、ここには用がない。でも、小林君に謝らないままだと、気がそぞろになってしまいそうだ。

「小林君の家って……」
「近いぞ。ここから西に歩いてすぐだ。表札が出ているから分かるだろう」

 先生にお辞儀だけすると、さっさとその場を後にした。



 小林君の家はすぐに見つかった。小林君の匂いがするので、確かにここだろう。

「すみません」

 私なりに精一杯の声を出した。家の中からは、物音ひとつしない。
 誰もいないとわかり、安堵の息を吐いて、すぐに頭を振った。

 安堵しちゃだめなのだ。小林君がいないと、いつまで経っても罪悪感を引きずることになる。
 匂いがするのだから、中にいるのではないだろうか。そう思い、そっと小林君の敷地に足を踏み入れる。
 家に上がるのは流石に躊躇われるので、庭へ回ることにした。

 小林君の家は大きかった。なにしろ、庭に池があるくらいだ。池に顔を映してみる。濁った緑に映しても、赤色ははっきり分かった。

「田辺さん?」

 庭に面した部屋で、小林君が布団にくるまっていた。幽霊でも見たかのように、目を丸くしている。

「どうしてここに」
「あの、昨日は、ごめんなさい」

 私は頭を深く下げた。小林君は、暫く何も言わなかった。静けさが耳を襲う。

「頭を上げて。何か田辺さんが気を悪くするようなことを言ってしまったんだよね。ごめん」

 小林君は、掛け布団を剥いで身を起こした。

「体、大丈夫、なの?」

 小林君は頷いた。

「僕ね、昔からいろんな病気にかかるんだ。生まれつき体が弱くて。だから、倒れるのは慣れちゃった」

 そう言って小林君は、弱々しい笑みを浮かべた。反応に困ってしまう。

「そうだ、田辺さんに質問してもいいかな」

 話題を変えられた。小林君は、心配してほしくないのだろう。私は頷いた。
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