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学園にて
学園祭に向けて
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後期の中間考査が終わってひと息ついたら、学園の創立祭だ。
生徒が自分たちでイベントを開催し、様々な研究発表や来賓を招いての催しをする。
ウチのクラスは何しよう?と、ホームルームでクラス委員が皆んなに意見を求めてた。
主だったのは研究展示とか祝詞讃美歌の合唱とか、ひと月足らずで学生が出来る程度の案がアレコレと出された。
わたしは何でもいい。夢の中だと楽しめなかった創立祝いという名の学園祭を、存分に楽しむのだ。確か外部生クラスや一部のクラブなんかは、飲食系の出し物をするはずだ。
友達たちといろいろ廻るのが、今から楽しみで仕方ない。
夜には王立学園名物、年に一度の花火フェスもある。場所取りもしなきゃね。
(だからどっちかといえば、適当に教室に展示置いて自由時間たっぷりあるとかが良いかな~?)
なんてニマニマしてた。
クラスメイトたちは、それぞれの意見で喧喧囂囂侃侃諤諤して大盛り上がりだ。
どうせなら派手に楽しみたい、そしてあわよくば内部生クラスに一泡吹かせたいと気合い入ってる組と、準備期間たった一カ月で大した事なんて出来ない、めんどくさいから適当に済まして楽しみたい省エネ推奨な組が、とてものこと意見もまとまりそうになく騒ぎ合ってる。
誰も彼も押し黙って何も進まないのに比べたら、これだけ活発な話し合い出来るなんて皆んながクラスに馴染んでる証拠だね。
わたしは完全に後者派だな~。でも展示品とか作るにしても、何を作るかでまた割れるだろうなぁ。
……なんて完全に傍観者モードで眺めていたら、隣りの席のエルサが意を決したように手を挙げ、立ち上がった。
「私、舞台演劇がしたいんです」
演劇?あぁ、エルサちゃん好きだったもんね。確かに学園祭の催し物としてはあるけど、舞台での割り当て時間じゃそんな大したお話は出来ないよ?
「『ロジャー&ジュリーwithティボー』を新解釈でやりたい」
とエルサが発言し、クラス中がザワッとなった。それってマズくない?とばかりに、皆んながわたしの方を見る。
わたしも何も聞いてないから、慌てて「わたしじゃない、わたし言ってない」とブンブン首を振った。
「今まではフェアネス侯爵の視点だったけど、私はラフネス伯爵視点で物語を書きたいの。お友達のサリーのおウチへ遊びに行かせてもらって、それを強く思ったから、その想いを皆んなと形にしたいんです」
あの歌劇が発表されてから十数年、そろそろ新しい解釈が発表されてもいい。
「それってどういうやつ?」
と質問が飛び、エルサはひとつひとつ温めていたアイデアを披露した。
ティボー主役のヴィラン物。サリーとは友達だけど、王都での学園祭に奇抜な事はしない。あくまで本編を踏まえつつ、ラフネス伯爵側をフィーチャーするの。
「なるほど、ラフネス伯爵は物語のヴィランだから、憎っくきフェアネスにはいろいろ言いまくれるってわけか」
と、エルサの意図を邪推したアミーくんが手を叩いた。するとあちこちで、「それは良いな!」と口々に男子たちが賛同する。
当のエルサが慌てて「そういうつもりは無いから!」と否定したけど、アンバーから「でもフェアネスの双子が観客席に座ってるとしたら?」
「トラウマになるくらいの悪口を浴びせまくってあげるわ!」
「わぉ!過激ぃ~!」
つい、口を滑らしてた。
わたしは苦笑し、担任の先生頭抱えてる。
「さすがにそんなものには許可出せないぞ」
「いやだわ先生、冗談だって冗談!ね、エルサ!」
アンバーがケラケラ笑ってエルサの肩を叩く。それに促されて、エルサは話を続けた。
「私がやりたいのは、ちょっと視点を変える新しいロジャジュリです。具体的には…」
と言ってから、エルサはツッとわたしの方を見た。
「主役逆転、男女逆転配役です」
生徒が自分たちでイベントを開催し、様々な研究発表や来賓を招いての催しをする。
ウチのクラスは何しよう?と、ホームルームでクラス委員が皆んなに意見を求めてた。
主だったのは研究展示とか祝詞讃美歌の合唱とか、ひと月足らずで学生が出来る程度の案がアレコレと出された。
わたしは何でもいい。夢の中だと楽しめなかった創立祝いという名の学園祭を、存分に楽しむのだ。確か外部生クラスや一部のクラブなんかは、飲食系の出し物をするはずだ。
友達たちといろいろ廻るのが、今から楽しみで仕方ない。
夜には王立学園名物、年に一度の花火フェスもある。場所取りもしなきゃね。
(だからどっちかといえば、適当に教室に展示置いて自由時間たっぷりあるとかが良いかな~?)
なんてニマニマしてた。
クラスメイトたちは、それぞれの意見で喧喧囂囂侃侃諤諤して大盛り上がりだ。
どうせなら派手に楽しみたい、そしてあわよくば内部生クラスに一泡吹かせたいと気合い入ってる組と、準備期間たった一カ月で大した事なんて出来ない、めんどくさいから適当に済まして楽しみたい省エネ推奨な組が、とてものこと意見もまとまりそうになく騒ぎ合ってる。
誰も彼も押し黙って何も進まないのに比べたら、これだけ活発な話し合い出来るなんて皆んながクラスに馴染んでる証拠だね。
わたしは完全に後者派だな~。でも展示品とか作るにしても、何を作るかでまた割れるだろうなぁ。
……なんて完全に傍観者モードで眺めていたら、隣りの席のエルサが意を決したように手を挙げ、立ち上がった。
「私、舞台演劇がしたいんです」
演劇?あぁ、エルサちゃん好きだったもんね。確かに学園祭の催し物としてはあるけど、舞台での割り当て時間じゃそんな大したお話は出来ないよ?
「『ロジャー&ジュリーwithティボー』を新解釈でやりたい」
とエルサが発言し、クラス中がザワッとなった。それってマズくない?とばかりに、皆んながわたしの方を見る。
わたしも何も聞いてないから、慌てて「わたしじゃない、わたし言ってない」とブンブン首を振った。
「今まではフェアネス侯爵の視点だったけど、私はラフネス伯爵視点で物語を書きたいの。お友達のサリーのおウチへ遊びに行かせてもらって、それを強く思ったから、その想いを皆んなと形にしたいんです」
あの歌劇が発表されてから十数年、そろそろ新しい解釈が発表されてもいい。
「それってどういうやつ?」
と質問が飛び、エルサはひとつひとつ温めていたアイデアを披露した。
ティボー主役のヴィラン物。サリーとは友達だけど、王都での学園祭に奇抜な事はしない。あくまで本編を踏まえつつ、ラフネス伯爵側をフィーチャーするの。
「なるほど、ラフネス伯爵は物語のヴィランだから、憎っくきフェアネスにはいろいろ言いまくれるってわけか」
と、エルサの意図を邪推したアミーくんが手を叩いた。するとあちこちで、「それは良いな!」と口々に男子たちが賛同する。
当のエルサが慌てて「そういうつもりは無いから!」と否定したけど、アンバーから「でもフェアネスの双子が観客席に座ってるとしたら?」
「トラウマになるくらいの悪口を浴びせまくってあげるわ!」
「わぉ!過激ぃ~!」
つい、口を滑らしてた。
わたしは苦笑し、担任の先生頭抱えてる。
「さすがにそんなものには許可出せないぞ」
「いやだわ先生、冗談だって冗談!ね、エルサ!」
アンバーがケラケラ笑ってエルサの肩を叩く。それに促されて、エルサは話を続けた。
「私がやりたいのは、ちょっと視点を変える新しいロジャジュリです。具体的には…」
と言ってから、エルサはツッとわたしの方を見た。
「主役逆転、男女逆転配役です」
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