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Trash Land
broken reality III
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〝結界都市〟中心部43番街は、別名〝サイバー・ストリート〟と呼ばれている。
その理由は、其処彼処に点在する店舗を見れば誰の目にも明らかだ。
其処には〝サイバー〟専用の装備を取り扱っている店や、銃火器、刀剣類、防具類は元より、中には〝サイバー〟の身体パーツを取り扱っている店まである。
此処に来れば、その装備で揃わない物は無いと言われているほどだ。
そしてその中でも、一際目立つ店がある。だがその店は武器、防具などの道具類を取り扱ってはいない。
売っているものは、食品。
この店、カフェ[セフィロート]は〝サイバー〟専用のレストランなのである。
〝サイバー〟専用であるが故に、その食事はとにかく高カロリーで、軽食だけでも二千キロカロリーはあるのだ。
このカフェ[セフィロート]のマスターはフィンヴァラ。
そして彼自身も〝サイバー〟なのだが、二つだけ他のサイバーと違う点がある。
彼には、表情というものが一切無い。喋る時ですら、口を動かさない。
喉に付いている人口声帯から発せられるマシンボイスが、唯一彼のコミュニケーション手段だ。
そしてもう一つは、彼には感情がある。
皮肉なことに、誰よりも〝サイバー〟らしい容姿をの彼は、他のどんなそれよりもノーマルに近い。
11タイム。
フィンヴァラは入り口の扉に木製の『営業中』と書かれた札を下げ、いつも通りにカウンターに立ってグラスを磨き始めた。
少しすると出入り口が開き、其処に取り付けてある鈴が美しい音色をたてて響き、まだ誰もいない店内に木霊する。
「イラッシャイマセ」
マスターのフィンヴァラが、表情の全くない顔を向ける。金色の癖のある短髪と瞳のない白い双眸が宿る顔が、入って来た客を真っ直ぐに見詰めた。
「オヤ、珍シイジャナイカ。コンナ処に何ノ用ダ? D・りけっと」
客――D・リケットはなにも言わず、カウンター席に坐って紅茶を注文する。
そしてフィンヴァラもそれ以上はなにも言わず、カウンターの奥で紅茶を煎れた。
リケットが自分に用があるということは解っている。そうでなければこんな処には来ないから。
ほどなく、フィンヴァラはリケット前に巨大なカップに注がれた大量のミルクティを出した。
それを一瞥し、3リットルはあろうかというそれを片手で持ち上げ、然も一気に飲み干した。
因みに、このミルクティは激甘である。
カロリーは軽く見積もっても600キロカロリーくらいはあるだろう。
ついでにこの店は、カロリーばかりを求めているために、通常メニューの味は最悪だ。
味覚などは関係ない〝サイバー〟だから食べられるのだろう。
そして〝結界都市〟の人々は、この店には絶対に訪れない。
稀に、なにも知らない観光客が此処を訪れてしまうことがあるが、まずその量と味と金額で取り合えず絶句し、訪れている人々を見て更に絶句する
そして止めはマスターだ。
解り易く一目で〝サイバー〟と見て取れる彼に、無機質な声で優しい言葉を掛けられても、知らない者は当たり前に凍り付く。
この〝サイバー〟専用カフェ[セフィロート]は、実は『〝結界都市〟ドラゴンズ・ヘッドの歩き方・最☆新☆版』にその記事が載っている。
だがそれはどう見ても、居心地の良い洒落た店にしか見えないし、更に何処にも〝サイバー〟専用とは書かれていない。
『〝結界都市〟ドラゴンズ・ヘッドの歩き方・最☆新☆版』という雑誌は、売上が上位を占める雑誌社の発行であるため、記事を疑う者は少ないのが現状だ。
「頼みがある」
グラスを磨き始めるフィンヴァラに、紅茶を一滴たりとも残さず飲み干したリケットは口を開いた。
そしてそれを聞いたフィンヴァラは、溜息を吐きつつ肩を竦めた。だがやはりその表情は動かない。
「オ前ガ僕ニ頼ミ? 一体ドウイウ風ノ吹キ回シダ?」
腕を組み、柱に寄り掛かって訊き返す。その無表情とマシンボイスがなければ、誰よりも人間臭い台詞と仕草だ。
「マァ、理由ハ訊カナイケドネ。訊イテモドウセ答エナイダロウシ。ダケド、僕ガ君ニシテアゲラレルコトハ、モウ何モナイ筈ダケド?」
「The time of achieving the pledge of blood came.But in my present equipment,it is insufficient.Power is required.I want the blade which was able to be done by the psycho matter」
ゆっくりとそう言うリケットを見下ろし、フィンヴァラはカウンターに両手をついた。
「僕ハ、モウ〝はんたー〟デモナンデモナインダヨ。ソレナノニ、ソウイウコトヲ頼ムノハ御門違イモ甚ダシイ。ソレニ、君ハ既ニ僕ヲ超エテイルンダヨ。今更ソンナ物ハ必要ナイ筈ダ。違ウカイ? ソレニ、金デ買エル物ハ何デモ手ニ入ル筈。コレ以上、君ハナニヲ手ニ入レヨウトシテイルンダイ?」
コーヒーカップにコーヒーを煎れ、フィンヴァラは何処へともなく視線を向けているリケットに訊いた。
「俺は、何も手に入れていない」
そう呟くリケット前にコーヒーを出す。それは小さなカップだった。そして中には甘味料の類は入っていない。
フィンヴァラは口直しでブラックコーヒーを出すことがある。
因みに有料だし、味覚がない〝サイバー〟にとってあまり意味はないが。
「I do not have memory. But such a thing is unnecessary. What I am now is everything. And... Such memory becomes obstructive」
「ソウダロウネ。君ハ人デアルコトヲ捨テタトキカラ、ソレヲ全部無クシテシマッタ。モットモ〝さいばー〟ニナルンダッタラ、ソレハ仕方ノナイコト。中ニハ僕ノヨウニ全テ残ッテイル珍シイ奴モイルケド」
グラス磨きを再開し、呟く。もし彼に表情があったのなら、その顔には哀れみが浮かぶだろう。だが彼の顔は、凍り付いた様に動かない。
その理由は、其処彼処に点在する店舗を見れば誰の目にも明らかだ。
其処には〝サイバー〟専用の装備を取り扱っている店や、銃火器、刀剣類、防具類は元より、中には〝サイバー〟の身体パーツを取り扱っている店まである。
此処に来れば、その装備で揃わない物は無いと言われているほどだ。
そしてその中でも、一際目立つ店がある。だがその店は武器、防具などの道具類を取り扱ってはいない。
売っているものは、食品。
この店、カフェ[セフィロート]は〝サイバー〟専用のレストランなのである。
〝サイバー〟専用であるが故に、その食事はとにかく高カロリーで、軽食だけでも二千キロカロリーはあるのだ。
このカフェ[セフィロート]のマスターはフィンヴァラ。
そして彼自身も〝サイバー〟なのだが、二つだけ他のサイバーと違う点がある。
彼には、表情というものが一切無い。喋る時ですら、口を動かさない。
喉に付いている人口声帯から発せられるマシンボイスが、唯一彼のコミュニケーション手段だ。
そしてもう一つは、彼には感情がある。
皮肉なことに、誰よりも〝サイバー〟らしい容姿をの彼は、他のどんなそれよりもノーマルに近い。
11タイム。
フィンヴァラは入り口の扉に木製の『営業中』と書かれた札を下げ、いつも通りにカウンターに立ってグラスを磨き始めた。
少しすると出入り口が開き、其処に取り付けてある鈴が美しい音色をたてて響き、まだ誰もいない店内に木霊する。
「イラッシャイマセ」
マスターのフィンヴァラが、表情の全くない顔を向ける。金色の癖のある短髪と瞳のない白い双眸が宿る顔が、入って来た客を真っ直ぐに見詰めた。
「オヤ、珍シイジャナイカ。コンナ処に何ノ用ダ? D・りけっと」
客――D・リケットはなにも言わず、カウンター席に坐って紅茶を注文する。
そしてフィンヴァラもそれ以上はなにも言わず、カウンターの奥で紅茶を煎れた。
リケットが自分に用があるということは解っている。そうでなければこんな処には来ないから。
ほどなく、フィンヴァラはリケット前に巨大なカップに注がれた大量のミルクティを出した。
それを一瞥し、3リットルはあろうかというそれを片手で持ち上げ、然も一気に飲み干した。
因みに、このミルクティは激甘である。
カロリーは軽く見積もっても600キロカロリーくらいはあるだろう。
ついでにこの店は、カロリーばかりを求めているために、通常メニューの味は最悪だ。
味覚などは関係ない〝サイバー〟だから食べられるのだろう。
そして〝結界都市〟の人々は、この店には絶対に訪れない。
稀に、なにも知らない観光客が此処を訪れてしまうことがあるが、まずその量と味と金額で取り合えず絶句し、訪れている人々を見て更に絶句する
そして止めはマスターだ。
解り易く一目で〝サイバー〟と見て取れる彼に、無機質な声で優しい言葉を掛けられても、知らない者は当たり前に凍り付く。
この〝サイバー〟専用カフェ[セフィロート]は、実は『〝結界都市〟ドラゴンズ・ヘッドの歩き方・最☆新☆版』にその記事が載っている。
だがそれはどう見ても、居心地の良い洒落た店にしか見えないし、更に何処にも〝サイバー〟専用とは書かれていない。
『〝結界都市〟ドラゴンズ・ヘッドの歩き方・最☆新☆版』という雑誌は、売上が上位を占める雑誌社の発行であるため、記事を疑う者は少ないのが現状だ。
「頼みがある」
グラスを磨き始めるフィンヴァラに、紅茶を一滴たりとも残さず飲み干したリケットは口を開いた。
そしてそれを聞いたフィンヴァラは、溜息を吐きつつ肩を竦めた。だがやはりその表情は動かない。
「オ前ガ僕ニ頼ミ? 一体ドウイウ風ノ吹キ回シダ?」
腕を組み、柱に寄り掛かって訊き返す。その無表情とマシンボイスがなければ、誰よりも人間臭い台詞と仕草だ。
「マァ、理由ハ訊カナイケドネ。訊イテモドウセ答エナイダロウシ。ダケド、僕ガ君ニシテアゲラレルコトハ、モウ何モナイ筈ダケド?」
「The time of achieving the pledge of blood came.But in my present equipment,it is insufficient.Power is required.I want the blade which was able to be done by the psycho matter」
ゆっくりとそう言うリケットを見下ろし、フィンヴァラはカウンターに両手をついた。
「僕ハ、モウ〝はんたー〟デモナンデモナインダヨ。ソレナノニ、ソウイウコトヲ頼ムノハ御門違イモ甚ダシイ。ソレニ、君ハ既ニ僕ヲ超エテイルンダヨ。今更ソンナ物ハ必要ナイ筈ダ。違ウカイ? ソレニ、金デ買エル物ハ何デモ手ニ入ル筈。コレ以上、君ハナニヲ手ニ入レヨウトシテイルンダイ?」
コーヒーカップにコーヒーを煎れ、フィンヴァラは何処へともなく視線を向けているリケットに訊いた。
「俺は、何も手に入れていない」
そう呟くリケット前にコーヒーを出す。それは小さなカップだった。そして中には甘味料の類は入っていない。
フィンヴァラは口直しでブラックコーヒーを出すことがある。
因みに有料だし、味覚がない〝サイバー〟にとってあまり意味はないが。
「I do not have memory. But such a thing is unnecessary. What I am now is everything. And... Such memory becomes obstructive」
「ソウダロウネ。君ハ人デアルコトヲ捨テタトキカラ、ソレヲ全部無クシテシマッタ。モットモ〝さいばー〟ニナルンダッタラ、ソレハ仕方ノナイコト。中ニハ僕ノヨウニ全テ残ッテイル珍シイ奴モイルケド」
グラス磨きを再開し、呟く。もし彼に表情があったのなら、その顔には哀れみが浮かぶだろう。だが彼の顔は、凍り付いた様に動かない。
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