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Trash Land
indestructible II
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「……まだ諦めずにいるのか。煩い物体どもだ」
「魔導士ギルド」の周囲にある僅かな空地や路肩に撮影機材を携えて屯しているマスメディアを、窓から侮蔑を込めて眺めながら舌打ちをし、複雑で不可思議な紋章の刺繍が施してあるマントから手を出して顎を撫でつつ、ハズラット・ムーンは呟いた。心の底から鬱陶しい様子である。
そしてマスメディアを人どころか生物としてすら認識していない。扱いが完全に路傍の石コロと一緒である。
「貴方がマスメディアに言った内容は、明らかにそれを挑発していましたからね。はっきり言って無理のないことだと思います」
その傍にいる赤いローブを羽織った男が言う。だがハズラットはそれを一瞥し、
「挑発などではない。莫迦にしたのだ。挑発とは野生動物なみに知能がある生物に対して有効な手段であって、あの程度のことしか考えられず、且つ標的が決まれば真偽は二の次にして責め立てる物体には無効だろう。そんな奴らは莫迦で充分だ」
「そんなことを言っていると、敵が増えますよ」
良いことを言ったとキメ顔をする副長。マスメディアの扱いが生物ですらなくなっていた。
そしてそんな副長を見て呆れたように首を振る。事実、呆れているのだが。
そんな反応をする男に視線を移し、今度はハズラットの方が呆れた様に、
「お前は、どちらの味方なのだ? マスメディアの味方だとしたら手加減せずに追放するぞ。……ふむ、莫迦と言ったのはやはり訂正しよう。一般の莫迦に失礼だからな。あいつらは莫迦以下でも賛辞と取れる程の低能すら褒め言葉に値する……う~む、言語ではこの概念を説明出来ん」
重ねるが、ハズラットはイグドラシルと同じくマスメディアを激しく憎んでいる。
彼は一度、弟と共にそのマスメディアに殺されかけたのだ。
世間的に、物理的に。
そしてそれが原因で、自分の大切な人を、これからずっとずっと護って行きたいと思っていた人を亡くしてしまった。永遠に。
「ま、お前があの言語では形容し難いくらいに愚かしい物体どもの手先になるなどということは絶対にないと思っている。まだ死にたくないようだし」
「涼しい顔で恐ろしいことを言わないで下さい。寿命が縮まります」
ハンカチで額を拭きつつ男が言う。その頭は、もう薄くなっていた。因みに彼は、ハズラットよりも若い。
「恐ろしいか? 当然のことを言ったまでだ。それにあの――便宜上莫迦と呼ぼう――莫迦どもは一度くらい死ぬほど恐ろしい目にあってみないと絶対に解らないだろうよ。……仮にそうなっても解らないだろうが。……付ける薬がないし死んでも無駄だから性質が悪い」
何しろ莫迦以下だし。心の中で独白し、ハズラットは窓に視線を戻した。
「それより、今後の動向を如何なさるおつもりですか?」
男は話題を変えた。これ以上マスメディアへの悪口雑言を聞かされるのも苦痛だし、そんなことを羅列しても仕方のないことだ。
彼にとって、マスメディアなどどうでも良い。大切なのは、自分の研究のみ。これ以上その邪魔はされたくないというのが本音だ。
憎んでもいない。尊敬もしていない。どうでもいい存在としてすら認識していない。
「……どうもしない。今まで通りの生活を続ける。必要とあれはこの『世界の館』を〝結界〟で封鎖する。そうなれば外でどれほど騒ごうと、例え都市が倒壊しようと全く影響が無い。出来ればやりたくないが……疲れるし時間の無駄だ」
そう言うと思った。
そう考え、男は「そうですか」とだけ答えて一礼し、彼の部屋を後にした。ハズラットは、どのような犠牲を払おうとこの「世界の館」だけは護ろうとしている。そしてそれは男にとっても同じこと。
此処は、〝魔導〟という誰も受け入れてくれない〝力〟を持つ者達の居場所。
そして遥けき太古より受け継がれた秘法の守護者達が集う処。
此処にいる限り、自分達は全てを認めて貰える。
「さて、研究の続きをするか……」
独白し、男は自室へ向かうべく歩き出した……つもりだった。だがその足が進まず、彼はそのまま床に転がった。
「足が動かない……この効果は……」
筋肉は前に進もうとしている。だが、足そのものが動かない。何か強い〝力〟で抑え付けられている。
「いけない……これは……この効果は〝テレキネシス〟。〝PSI〟が入り込んだのか!?」
呟く男の眼の前に、眼鏡を掛けたスーツ姿の女性が立っていた。首にはネクタイをしており、その長く艶やかな髪を無造作に頭頂で縛っている。
「ハズラットの部屋は、此処ね?」
女は呟き、片手で男の首を掴むと、信じられないことだが軽々と持ち上げた。
その時に僅かだがモーター音がし、それで男は理解した。この女は脳以外を改造している、と。
「個人的には人質を取るなんて、やりたくないんだけどね」
そう言うとドアノブに手をかける。
だが、その右手が掴まれた。
「魔導士ギルド」の周囲にある僅かな空地や路肩に撮影機材を携えて屯しているマスメディアを、窓から侮蔑を込めて眺めながら舌打ちをし、複雑で不可思議な紋章の刺繍が施してあるマントから手を出して顎を撫でつつ、ハズラット・ムーンは呟いた。心の底から鬱陶しい様子である。
そしてマスメディアを人どころか生物としてすら認識していない。扱いが完全に路傍の石コロと一緒である。
「貴方がマスメディアに言った内容は、明らかにそれを挑発していましたからね。はっきり言って無理のないことだと思います」
その傍にいる赤いローブを羽織った男が言う。だがハズラットはそれを一瞥し、
「挑発などではない。莫迦にしたのだ。挑発とは野生動物なみに知能がある生物に対して有効な手段であって、あの程度のことしか考えられず、且つ標的が決まれば真偽は二の次にして責め立てる物体には無効だろう。そんな奴らは莫迦で充分だ」
「そんなことを言っていると、敵が増えますよ」
良いことを言ったとキメ顔をする副長。マスメディアの扱いが生物ですらなくなっていた。
そしてそんな副長を見て呆れたように首を振る。事実、呆れているのだが。
そんな反応をする男に視線を移し、今度はハズラットの方が呆れた様に、
「お前は、どちらの味方なのだ? マスメディアの味方だとしたら手加減せずに追放するぞ。……ふむ、莫迦と言ったのはやはり訂正しよう。一般の莫迦に失礼だからな。あいつらは莫迦以下でも賛辞と取れる程の低能すら褒め言葉に値する……う~む、言語ではこの概念を説明出来ん」
重ねるが、ハズラットはイグドラシルと同じくマスメディアを激しく憎んでいる。
彼は一度、弟と共にそのマスメディアに殺されかけたのだ。
世間的に、物理的に。
そしてそれが原因で、自分の大切な人を、これからずっとずっと護って行きたいと思っていた人を亡くしてしまった。永遠に。
「ま、お前があの言語では形容し難いくらいに愚かしい物体どもの手先になるなどということは絶対にないと思っている。まだ死にたくないようだし」
「涼しい顔で恐ろしいことを言わないで下さい。寿命が縮まります」
ハンカチで額を拭きつつ男が言う。その頭は、もう薄くなっていた。因みに彼は、ハズラットよりも若い。
「恐ろしいか? 当然のことを言ったまでだ。それにあの――便宜上莫迦と呼ぼう――莫迦どもは一度くらい死ぬほど恐ろしい目にあってみないと絶対に解らないだろうよ。……仮にそうなっても解らないだろうが。……付ける薬がないし死んでも無駄だから性質が悪い」
何しろ莫迦以下だし。心の中で独白し、ハズラットは窓に視線を戻した。
「それより、今後の動向を如何なさるおつもりですか?」
男は話題を変えた。これ以上マスメディアへの悪口雑言を聞かされるのも苦痛だし、そんなことを羅列しても仕方のないことだ。
彼にとって、マスメディアなどどうでも良い。大切なのは、自分の研究のみ。これ以上その邪魔はされたくないというのが本音だ。
憎んでもいない。尊敬もしていない。どうでもいい存在としてすら認識していない。
「……どうもしない。今まで通りの生活を続ける。必要とあれはこの『世界の館』を〝結界〟で封鎖する。そうなれば外でどれほど騒ごうと、例え都市が倒壊しようと全く影響が無い。出来ればやりたくないが……疲れるし時間の無駄だ」
そう言うと思った。
そう考え、男は「そうですか」とだけ答えて一礼し、彼の部屋を後にした。ハズラットは、どのような犠牲を払おうとこの「世界の館」だけは護ろうとしている。そしてそれは男にとっても同じこと。
此処は、〝魔導〟という誰も受け入れてくれない〝力〟を持つ者達の居場所。
そして遥けき太古より受け継がれた秘法の守護者達が集う処。
此処にいる限り、自分達は全てを認めて貰える。
「さて、研究の続きをするか……」
独白し、男は自室へ向かうべく歩き出した……つもりだった。だがその足が進まず、彼はそのまま床に転がった。
「足が動かない……この効果は……」
筋肉は前に進もうとしている。だが、足そのものが動かない。何か強い〝力〟で抑え付けられている。
「いけない……これは……この効果は〝テレキネシス〟。〝PSI〟が入り込んだのか!?」
呟く男の眼の前に、眼鏡を掛けたスーツ姿の女性が立っていた。首にはネクタイをしており、その長く艶やかな髪を無造作に頭頂で縛っている。
「ハズラットの部屋は、此処ね?」
女は呟き、片手で男の首を掴むと、信じられないことだが軽々と持ち上げた。
その時に僅かだがモーター音がし、それで男は理解した。この女は脳以外を改造している、と。
「個人的には人質を取るなんて、やりたくないんだけどね」
そう言うとドアノブに手をかける。
だが、その右手が掴まれた。
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