3 / 72
川島
しおりを挟む
俺は小さく会釈をしながら話す。
「一ノ瀬です。俺の知っているパチンコの知識を話せば良いですか?」
「はい、お願いします」
「まあ、先に注文しておこうかな。あなたの奢りなら国産黒毛和牛のサイコロステーキでも食べようっと」
俺はチラッと川島の顔色を伺いながら言った。
「どうぞどうぞ。私は焼鳥5本セットとお茶で」
川島は俺の視線を気にする様子もなく呼び出しボタンを丁寧に押した。店員が来て注文を済ますと俺は貰う物は貰ったと上機嫌で話し出す。
「俺が知っている限り、パチプロ、スロプロは4種類存在します。1つ目は、モーニングと言って、朝、直ぐに大当たりが出るように設定された台を狙って打つプロ。これは店員と仲良くなれば可能だと思いますが、露骨にモーニング台だけを打つと直ぐにバレてしまいますけどね。2つ目は、高設定のスロット台を何らかの方法で見つけ打つプロ。こちらも店員と仲良くなるか、あるいは、根気よくデータを収集すれば可能なんでしょうか? 3つ目は、チューリップが開くタイミングでテクニックを駆使して打つプロ。これは禁止行為なので、バレないように行動しないと出禁をくらってしまいます。4つ目は、俺のように換金率の低い店で良く回る台に座り、朝から晩まで打つプロです。換金率の低い店が人気になる筈が無いと思われがちなんですが、その分、よく回るように設定されています。さらに、長時間打つ傾向になるので常に出玉が多い状態になり、この店は良く出ると思わせる事が出来ます。他にも色んなプロがいるんでしょうけど俺の知識はここまでです」
川島は静かに頷いている。
「ここまで分かります?」
「はい」
「ホントに理解できました?」
「はい、大丈夫です」
いや、絶対理解できていないだろ! と俺は思った。50半ばぐらいに見える川島は真新しいジャージで髪の毛も整っており、ちゃんとしている。パチンコの常連客には全く見えない。むしろ、パチンコをする人といえばジャージだなと考え、新品のジャージを今日買ってきたような感じだ。それなのに今の専門用語を理解出来ていると言う。素人には理解出来ない内容も入っていた筈なのに……。俺は試すように質問した。
「因みに換金率って分かります?」
「出玉を店が買い戻すパーセンテージですよね? 最近は、全国的に等価交換禁止の動きがありますよね」
「!」
何ぃ~。何故か詳しい。そんな風には見えないぞ。パチンコはやらずに攻略本だけ読むタイプなのか? お金はもう手にいれたので気にする必要もないが、ボロをださせてやろうと続けて質問する。
「因みにさっきの『オリオン』って店の換金率知ってます?」
「2円50銭ですよね?」
「川島さん『オリオン』で勝った事あるんですか?」
「まあ、多少は……」
ボロを出させる為、出来る限り間髪入れずに続けて質問する。
「川島さんて月何回ぐらいパチンコ行ってます?」
「週2回ぐらいですかね」
「朝から晩までですか?」
「まあ、気分によりますけど、昼からとか、夕方からとか……朝からは行かないですね」
朝、並ばないから見た事無いのかなと考えながら続ける。
「他の店も行きます?」
「行った事はありますけど、あまり行かないですね。ほとんど『オリオン』です」
「へー」
俺は感心したようなバカにしたような適当な返事をした。よく分からない。何か嘘っぽいが、川島が言っている事の辻褄は合っている。という事は、自分の先入観のせいなのだと渋々納得した。
ふと時間が気になり、俺は質問する。
「ソロソロ30分ぐらい経ちますけど、もう少し話します? 何か川島さんに興味が出てきたんで俺は別に大丈夫ですよ」
「では、もう少し良いですか? もう1万円お渡しします」
「一ノ瀬です。俺の知っているパチンコの知識を話せば良いですか?」
「はい、お願いします」
「まあ、先に注文しておこうかな。あなたの奢りなら国産黒毛和牛のサイコロステーキでも食べようっと」
俺はチラッと川島の顔色を伺いながら言った。
「どうぞどうぞ。私は焼鳥5本セットとお茶で」
川島は俺の視線を気にする様子もなく呼び出しボタンを丁寧に押した。店員が来て注文を済ますと俺は貰う物は貰ったと上機嫌で話し出す。
「俺が知っている限り、パチプロ、スロプロは4種類存在します。1つ目は、モーニングと言って、朝、直ぐに大当たりが出るように設定された台を狙って打つプロ。これは店員と仲良くなれば可能だと思いますが、露骨にモーニング台だけを打つと直ぐにバレてしまいますけどね。2つ目は、高設定のスロット台を何らかの方法で見つけ打つプロ。こちらも店員と仲良くなるか、あるいは、根気よくデータを収集すれば可能なんでしょうか? 3つ目は、チューリップが開くタイミングでテクニックを駆使して打つプロ。これは禁止行為なので、バレないように行動しないと出禁をくらってしまいます。4つ目は、俺のように換金率の低い店で良く回る台に座り、朝から晩まで打つプロです。換金率の低い店が人気になる筈が無いと思われがちなんですが、その分、よく回るように設定されています。さらに、長時間打つ傾向になるので常に出玉が多い状態になり、この店は良く出ると思わせる事が出来ます。他にも色んなプロがいるんでしょうけど俺の知識はここまでです」
川島は静かに頷いている。
「ここまで分かります?」
「はい」
「ホントに理解できました?」
「はい、大丈夫です」
いや、絶対理解できていないだろ! と俺は思った。50半ばぐらいに見える川島は真新しいジャージで髪の毛も整っており、ちゃんとしている。パチンコの常連客には全く見えない。むしろ、パチンコをする人といえばジャージだなと考え、新品のジャージを今日買ってきたような感じだ。それなのに今の専門用語を理解出来ていると言う。素人には理解出来ない内容も入っていた筈なのに……。俺は試すように質問した。
「因みに換金率って分かります?」
「出玉を店が買い戻すパーセンテージですよね? 最近は、全国的に等価交換禁止の動きがありますよね」
「!」
何ぃ~。何故か詳しい。そんな風には見えないぞ。パチンコはやらずに攻略本だけ読むタイプなのか? お金はもう手にいれたので気にする必要もないが、ボロをださせてやろうと続けて質問する。
「因みにさっきの『オリオン』って店の換金率知ってます?」
「2円50銭ですよね?」
「川島さん『オリオン』で勝った事あるんですか?」
「まあ、多少は……」
ボロを出させる為、出来る限り間髪入れずに続けて質問する。
「川島さんて月何回ぐらいパチンコ行ってます?」
「週2回ぐらいですかね」
「朝から晩までですか?」
「まあ、気分によりますけど、昼からとか、夕方からとか……朝からは行かないですね」
朝、並ばないから見た事無いのかなと考えながら続ける。
「他の店も行きます?」
「行った事はありますけど、あまり行かないですね。ほとんど『オリオン』です」
「へー」
俺は感心したようなバカにしたような適当な返事をした。よく分からない。何か嘘っぽいが、川島が言っている事の辻褄は合っている。という事は、自分の先入観のせいなのだと渋々納得した。
ふと時間が気になり、俺は質問する。
「ソロソロ30分ぐらい経ちますけど、もう少し話します? 何か川島さんに興味が出てきたんで俺は別に大丈夫ですよ」
「では、もう少し良いですか? もう1万円お渡しします」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる