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アルデバラン
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2人の距離は明らかに近くなった。いつもは、ほとんどしゃべらない九十九もよく喋る。普段は無口だが、仲の良い友達とか家族とかには喋るタイプなのだろう。
「ご飯は何にするの?」
「実はもう予約してあるんだ」
「凄い! 準備良いね」
「『アルデバラン』の予約が取れたんだ」
「えっ!」
九十九は少し引いているようだ。何故なら『アルデバラン』は A5 ランクの肉と最高級の鶏卵を扱う高級すき焼き店で、ディナーは1人1万円以上確実なのだ。
「大丈夫。奢るから」
「でも……」
「そのかわり1番安いコースだから、量が少ないけど我慢してね」
「ありがとう。私、少食だから大丈夫」
『アルデバラン』では、今年から、初回来店者に限り、1日2組限定で半額コースを提供している。最初のうちは競争率が高く、全く予約出来ない状態だったが、今は落ち着いている。どうも、専門家に言わせると半額コースは肉の質が落ちているというのだ。それでも大人気なのは間違い無い。そもそも素人に A5 だの A4 だのの区別がつく訳がなく、どちらも美味しい。そもそも、A5 ランクというのは味の評価では無い。味見なんて出来ないので、プロが見た目で判断しているのだ。当然、A5 ランクの評価を受けるような肉は美味しいのだが……。
今日、五木がダメ元で予約したところ、たまたまキャンセルがあったのだ。
2人は最高級の肉を堪能した。
その日の昼、『アルデバラン』店長園田はコスモグループ社長、六角信忠に怒鳴られていた。
「園田! 安売りをするなと言っただろう!」
「ですが社長、少し悪い肉もあります」
「全て A5 ランクの肉だ!」
「 A5 ランクでもピンキリです」
「一般人がいると品格が落ちるだろ!」
「新規の顧客獲得にはベストだと思います」
「ダメだダメだ、来月から中止だ!」
「予約が半年後まで埋まっています」
「分かった。5月末までで切れ! その後、続けたいなら、お前のポケットマネーでサービスしろ!」
そう言うと、社長信忠は店を出た。立ち尽くす店長園田を置いて、従業員達が見送りに行くと、振り向く事無く高級外車で帰っていった。
「園田さん……」
他のスタッフ達は園田の心情を理解し気遣う。と同時に社長信忠への怒りが募る。園田は他のスタッフから信頼が厚い。
「みんな、気にするな。お客様に罪は無い。いつも通り、最高のおもてなしで!」
店長園田は平静を装っていたが、スタッフにバレるぐらい、はらわたが煮えくり返っている様子だった。そもそも、信忠が店に来ると A5 ランクの中でも最高の肉を用意し、最高級ワインや最高級鶏卵など気を配った挙げ句、ダメ出しをくらう。しかも、金を払わない。そのくせ売り上げが少ないだの文句を言う。お前のせいだろ! と言いたいのだが、社長には逆らえない。園田の肉の目利きは相当なものだった。『アルデバラン』が仕入れる肉は全て最高級 A5 ランクの肉だが、園田には、その中でもランク分けができる程、肉の目利きに優れていた。その能力を活かして、悪い肉を半額コースにあてたのだが、そこに文句を言われて怒りを隠しきれない様子だった。◆
「ご飯は何にするの?」
「実はもう予約してあるんだ」
「凄い! 準備良いね」
「『アルデバラン』の予約が取れたんだ」
「えっ!」
九十九は少し引いているようだ。何故なら『アルデバラン』は A5 ランクの肉と最高級の鶏卵を扱う高級すき焼き店で、ディナーは1人1万円以上確実なのだ。
「大丈夫。奢るから」
「でも……」
「そのかわり1番安いコースだから、量が少ないけど我慢してね」
「ありがとう。私、少食だから大丈夫」
『アルデバラン』では、今年から、初回来店者に限り、1日2組限定で半額コースを提供している。最初のうちは競争率が高く、全く予約出来ない状態だったが、今は落ち着いている。どうも、専門家に言わせると半額コースは肉の質が落ちているというのだ。それでも大人気なのは間違い無い。そもそも素人に A5 だの A4 だのの区別がつく訳がなく、どちらも美味しい。そもそも、A5 ランクというのは味の評価では無い。味見なんて出来ないので、プロが見た目で判断しているのだ。当然、A5 ランクの評価を受けるような肉は美味しいのだが……。
今日、五木がダメ元で予約したところ、たまたまキャンセルがあったのだ。
2人は最高級の肉を堪能した。
その日の昼、『アルデバラン』店長園田はコスモグループ社長、六角信忠に怒鳴られていた。
「園田! 安売りをするなと言っただろう!」
「ですが社長、少し悪い肉もあります」
「全て A5 ランクの肉だ!」
「 A5 ランクでもピンキリです」
「一般人がいると品格が落ちるだろ!」
「新規の顧客獲得にはベストだと思います」
「ダメだダメだ、来月から中止だ!」
「予約が半年後まで埋まっています」
「分かった。5月末までで切れ! その後、続けたいなら、お前のポケットマネーでサービスしろ!」
そう言うと、社長信忠は店を出た。立ち尽くす店長園田を置いて、従業員達が見送りに行くと、振り向く事無く高級外車で帰っていった。
「園田さん……」
他のスタッフ達は園田の心情を理解し気遣う。と同時に社長信忠への怒りが募る。園田は他のスタッフから信頼が厚い。
「みんな、気にするな。お客様に罪は無い。いつも通り、最高のおもてなしで!」
店長園田は平静を装っていたが、スタッフにバレるぐらい、はらわたが煮えくり返っている様子だった。そもそも、信忠が店に来ると A5 ランクの中でも最高の肉を用意し、最高級ワインや最高級鶏卵など気を配った挙げ句、ダメ出しをくらう。しかも、金を払わない。そのくせ売り上げが少ないだの文句を言う。お前のせいだろ! と言いたいのだが、社長には逆らえない。園田の肉の目利きは相当なものだった。『アルデバラン』が仕入れる肉は全て最高級 A5 ランクの肉だが、園田には、その中でもランク分けができる程、肉の目利きに優れていた。その能力を活かして、悪い肉を半額コースにあてたのだが、そこに文句を言われて怒りを隠しきれない様子だった。◆
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