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音信不通
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あっという間に自転車に着き、バールだけ捨て、袋は握ったまま。鍵を開け、自転車に乗りペダルに全体重をかける! 全く後ろを振り向いていない。誰かが見てようが追いかけてこようが関係無い! 俺には追い付けない。
一心不乱に自転車を漕ぐ。少し落ち着いた。どれぐらい逃げたのだろう? 2キロぐらいだろうか? 後ろを振り向く。誰もいない。握ったままだった袋をポケットにしまい、スマホで東を確認し、さらに自転車を漕いだ。
やったな、一先ず成功だ。五木は上手くやれただろうか?
さらに自転車を漕ぐ。コンビニは防犯カメラがあるから避けて、すぐ先の自販機でスポーツドリンクを買って飲んだ。スマホの時刻を見ると10時だった。五木からは連絡が無い。
大丈夫か? 失敗したのか? いや、まだ逃げているんだろう。そもそも、五木に失敗などあるか? 五木側で心配なのはトラブルだけだ、と俺は自転車を漕ぎながら考える。
部下から2,000万円受け取るのが五木の難所だろう。そこ以外は何でもない。受け取れなかったか? いや、俺も電話を掛けていない。五木も同じ条件だ。成功している事を願おう。
俺は五木に電話を掛けた。……繋がらない……。俺は心臓と血管、神経と脳の繋がりがほんの一瞬絶たれたような感覚になった。さらに待つ……繋がらない……。このタイミングで出ない筈がない。9割方失敗だと悟った。辛い……。自分が捕まるより辛いのかも知れない。失敗しても記念日になると思っていたがそうでは無かった。
失敗したのなら帰るか? いや、100パーセント失敗だと決まった訳ではない。1パーセントの望みに掛けて寝られる場所を探そう。
スマホで調べると早朝4時から泊まれるホテルが近くにある。近くといっても30キロは離れている。遠いが、ゆっくり行っても4時までには着くだろう。俺はこのホテルで休む事に決めた。
4時前にはホテルに着き、無事チェックインできたが、五木からの連絡は無かった……。
4月1日昼12時
起きて直ぐ、五木に電話を掛けたが当然繋がらない。さすがに様子を見に帰った方がいい。捕まるだろうが、五木がいないのに逃げ回っても仕方がない。
チェックアウトして自転車に乗ったその時だった。 スマホが鳴った! 五木かと思い、指と目が同時にスマホへ動く。ディスプレイに表示されていたのは……三橋さんだった。普段であれば嬉しい筈だが全く嬉しくない、むしろ腹立たしい。三橋さんに罪は無いが……。
「はい……」
俺は暗い声で電話に出た。
「一ノ瀬君?! どこにいるの?! 五木君が! 五木君が!」
捕まったか? と思うと同時に三橋さんの声が聞こえた。
「死んじゃったの!」
「!!」
俺は目の奥の何かの神経が1本切れた感覚に襲われた後、少し眠気があった筈なのに完全に覚醒した。
「どこだ?! 今どこだ?!」
「五木君の実家! 場所分かる?」
「分かる! 直ぐ行くが2時間は掛かる!」
「何でそんな遠くに行ってるのよ!」
「とにかく、直ぐ向かう!」
俺は電話を切り、スマホのマップで調べた。思った通り、五木の実家までは20キロぐらいだ。最初はジュエリー西川から離れるように直線で逃げたが、ホテルへ行く為に少し戻った感じになっている。俺は全力で自転車を漕いだ。
電車? タクシー? 分からない土地では自転車の方が速いか? 五木が死んだだって? 何故? 実際見ないと信用しない! 『炎のティアラ』を盗んだ後、何があったんだ? 絶対に信用しない!
奇しくも、その日はエイプリルフールだった……。
一心不乱に自転車を漕ぐ。少し落ち着いた。どれぐらい逃げたのだろう? 2キロぐらいだろうか? 後ろを振り向く。誰もいない。握ったままだった袋をポケットにしまい、スマホで東を確認し、さらに自転車を漕いだ。
やったな、一先ず成功だ。五木は上手くやれただろうか?
さらに自転車を漕ぐ。コンビニは防犯カメラがあるから避けて、すぐ先の自販機でスポーツドリンクを買って飲んだ。スマホの時刻を見ると10時だった。五木からは連絡が無い。
大丈夫か? 失敗したのか? いや、まだ逃げているんだろう。そもそも、五木に失敗などあるか? 五木側で心配なのはトラブルだけだ、と俺は自転車を漕ぎながら考える。
部下から2,000万円受け取るのが五木の難所だろう。そこ以外は何でもない。受け取れなかったか? いや、俺も電話を掛けていない。五木も同じ条件だ。成功している事を願おう。
俺は五木に電話を掛けた。……繋がらない……。俺は心臓と血管、神経と脳の繋がりがほんの一瞬絶たれたような感覚になった。さらに待つ……繋がらない……。このタイミングで出ない筈がない。9割方失敗だと悟った。辛い……。自分が捕まるより辛いのかも知れない。失敗しても記念日になると思っていたがそうでは無かった。
失敗したのなら帰るか? いや、100パーセント失敗だと決まった訳ではない。1パーセントの望みに掛けて寝られる場所を探そう。
スマホで調べると早朝4時から泊まれるホテルが近くにある。近くといっても30キロは離れている。遠いが、ゆっくり行っても4時までには着くだろう。俺はこのホテルで休む事に決めた。
4時前にはホテルに着き、無事チェックインできたが、五木からの連絡は無かった……。
4月1日昼12時
起きて直ぐ、五木に電話を掛けたが当然繋がらない。さすがに様子を見に帰った方がいい。捕まるだろうが、五木がいないのに逃げ回っても仕方がない。
チェックアウトして自転車に乗ったその時だった。 スマホが鳴った! 五木かと思い、指と目が同時にスマホへ動く。ディスプレイに表示されていたのは……三橋さんだった。普段であれば嬉しい筈だが全く嬉しくない、むしろ腹立たしい。三橋さんに罪は無いが……。
「はい……」
俺は暗い声で電話に出た。
「一ノ瀬君?! どこにいるの?! 五木君が! 五木君が!」
捕まったか? と思うと同時に三橋さんの声が聞こえた。
「死んじゃったの!」
「!!」
俺は目の奥の何かの神経が1本切れた感覚に襲われた後、少し眠気があった筈なのに完全に覚醒した。
「どこだ?! 今どこだ?!」
「五木君の実家! 場所分かる?」
「分かる! 直ぐ行くが2時間は掛かる!」
「何でそんな遠くに行ってるのよ!」
「とにかく、直ぐ向かう!」
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