10番目の同級生

ジャメヴ

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自殺? 他殺?

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  中西が会社に着くと社内はプチパニックになっていた。
「知ってる?  社長自殺したって」
「ニュース見た見た。自殺するような人じゃないよな」
「殺されたんじゃないか?  恨みは滅茶苦茶買ってるぜ」
「第一発見者は信雄専務だって、怪しいよな」
「いや、別荘で自殺ならそうなるでしょ?」
「熊谷次長じゃね~の?」
「やめとけ!  熊谷次長のスパイとか2、3人いるかもよ」

(みんな色々推理してるな。だが、本命は園田店長だ!)
  パニック状態でも、業務は開始された。信雄専務がまだ出勤していないので正式な説明も無い。

  中西は10時の休憩に藤原へ電話を掛けた。
「もしもし、お疲れっす」
「おお、お疲れ」
「仕事中ですか?」
「いや、今日も夕勤だ。どうかしたか?」
「信忠社長の件ですよ」
「ああ、亡くなったみたいだな。ニュースで見たよ」
「園田店長と言い争いしてたって言ってましたよね?」
「ああ、ぶちギレてたな。えっ!  まさか、それだけで園田さん疑ってるのか?」
「昨日、ホームセンターで園田店長がロープ物色してたんですよ」
「ロープ?  何に使うんだ?」
「絞めるんですよ……首を!」
「なるほど、お前面白い事言うな」
「いやいや、本気ですよ」
「分かった。この謎は俺が解いてやるよ。じっちゃんの名に懸けて!」
お前のじいちゃん一般人だろ!  と、中西は自分の事を棚にあげて、心の中で突っ込んだ。

  藤原は午後3時の休憩時に店長園田へ話し掛ける。
「園田さん、休みの日とか何されてるんですか?」
「そうだなあ、今、特に趣味とか無いし、何してるって言われるとこれっていうものは無いかなあ」
「昨日とかって何されてました?」
「昨日も特に……。午前中は家でゴロゴロして、午後はちょっと出掛けて、その辺ブラブラしてたかな」
「因みに園田さんって、包丁とかどこで買うんですか?  職人だから家の包丁も良いの使ってるんですか?」
藤原はホームセンターというワードを出さずに誘導する。
「いや、仕事で使う包丁はこだわってるけど、家で使うのは、そんなに気にしていないな。ホームセンターで買ったのを使ってるよ」
「へ~、そうなんですか。ホームセンターとかよく行きます?」
「あんまり行かないかな。昨日、たまたま行ってきたけどね。包丁は買わなかったけど……」
「何買ったんですか?」
「昨日は何買ったかな?  まあ、色々買ったよ」
藤原はロープというワードを出そうと粘る。
「なるほど……テレビとか何見ます?」
「藤原どうした?  今日はよく喋るな」
店長園田は、いつもそんなに喋ってこない藤原がやたら話しかけてくるのに違和感を覚えたような返事をした。それでも藤原は会話を続ける。
「いや、仕事の話はよくしますけど、園田さんのプライベートの事をあんまり知らないなと思って……」
「そうだな、テレビか……まあ、普通にニュースかな。特にスポーツニュースだな。これっていう好きなスポーツがある訳じゃ無いけどね」
「そう言えば、昨日のボクシングの世界戦は見られました?」
「最後の方しか見れなかったんだ。だから結果は知っているよ」
「凄かったですよね。リアルタイムで見ましたよ。何か別の事してたんですか?」
「ちょっと忘れちゃってて、外で作業していたよ。よし、そろそろ行くか」
「あ、もう時間か」
休憩時間が終わってしまった。藤原は先入観からか怪しすぎると感じていた。ロープの件もそうだが、スポーツ好きが視聴率30パーセントを超えるボクシング世界戦を忘れるのは不自然だと……。だが、藤原も見るのを忘れていた事をスッカリ忘れているようだ。とは言うものの、夜の9時過ぎまで外で作業をしていたというのは客観的に見てもあまりに不自然だ。
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