10番目の同級生

ジャメヴ

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4,000万円

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4月2日午後7時半
  真相を理解した俺は信雄から4,000万強奪作戦を実行する。信雄は俺が死んだと思っているので、五木か警察官だと思って出るかも知れない。
  俺は信雄に電話を掛ける。
「もしもし」
「やあ、一ノ瀬だ。幽霊じゃないぜ」
「……五木君だね。一ノ瀬君から聞いているよ」
「五木は俺の身代わりになってお前達兄弟に轢き殺されたよ!」
俺は強い口調で言い放った。
「……」
「残念だったな」
「お前!  本当に一ノ瀬なのか?  どうして?」
「どうして生きているかって?  今言ったじゃないか。気が動転しているのか?  こっちは全部分かってるんだぜ。オマエらが俺を殺そうとした事も。なあ、六角信雄さん」
「……」
「全部ってのは本当に全部だ。あんたと信孝が共犯で信忠を殺した事もな」
「……」
「4,000万円で手を打とう。手元にあるか?」
「……ああ、ある……」
「午後8時に『オリオン』の駐輪場で待っているよ」
「……分かった……」
「4,000万ぐらい、お前には何でも無いだろ?  今から俺を殺す事の難しさを考えたら破格の値段だからな」
「……そうだな、その後の事は、お前を信用する」
「そもそも、この話は、俺達がある程度信用しないと成立しない、そうだろ?」
「……ああ……」


  午後8時5分前に信雄が『オリオン』の駐車場に着いたのを見て、俺は直ぐに信雄の車に近付くと、ウインドウが開けられ、信雄は紙袋を俺に差し出した。
「4,000万ある。数えるんだな」
俺は信雄から渡された紙袋の中を覗き込んだ。それぐらいはありそうだ。
「いや、信用する。偽札でもないだろう。偽札だったら通報されて殺人犯確定だからな。あと、俺の事も信用して大丈夫だ。その気になれば、今、お前を絞め殺す事もできるし、4,000万もらった後、通報する事もできる。でもしない。そんな事をしても、メリットが無いからな」
「だが、私はお前を完全には信用できない。この後の通報の心配もあるが、弱味につけこんで、金を何度も集《たか》られる心配もある。だから、次に会う時には、お前を殺す方法を考えておく」
「分かった。心配しなくても、もう会う事は無いだろう」
信雄はウインドウを閉めながら車を急発進させた。

  六角(信孝)が死んだ事は言わなくて正解だったな。俺が殺したんじゃないかとかいう、変な疑念を持たれてややこしくなりそうだからな。
  俺は自転車で駅へ向かい、1時間掛けて五木の実家へ向かった。


「君は確か一ノ瀬君だったね」
「夜分遅くにすみません」
俺は五木の父親に信雄から奪った4,000万円を渡した。
「えっ!  これは?!」
「浩二さんの友人みんなで貯めました。4,000万円あります。娘さんの心臓移植金の不足額が4,000万なんですよね?」
「こんな大金どうやって?」
「浩二さんは交遊関係が広いですから。少しずつ集めました」
「ありがとうございます」
「手術の成功を祈っています」


  五木の父親と別れた後、俺は三橋さんに電話を掛けた。
「もしもし」
「もしもし、一ノ瀬君?」
「今から、会えるかな?」
「大丈夫よ。今どこ?」
「中学校の前なんだけど……」
「分かった、直ぐ行きます」

  10分後、三橋さんが到着し、俺は三橋さんの軽自動車に乗り込んだ。
「どうしたの?」
「これから、この地を離れようと思うんだ」
「えっ!?」
「その前に、三橋さんには『炎のティアラ』窃盗事件の真相を話しておこうと思って……」

  俺は三橋さんに真相を話した。
「そんな、無茶をしていたのね……。そうだったんだ。五木君は一ノ瀬君の身代わりになってくれたんだね」
「ああ……。本当は今、俺はここに居なかったかも知れない」
「……。六角君は五木君を轢き殺した事を知っていたのかな?」
「どうも知っていたようだった。だが、恐らく実際に五木を轢き殺したのは信雄だ!」
「えっ!!  六角君じゃないの?」
「日吉って警察官もミスで言っていたが、俺の推理は少し違う。信雄が五木を轢いて、六角に身代わり出頭させて信忠殺人のアリバイを作ったんだろう」
「……」
「それで、この地を離れるっていうのは、六角信雄が信用できないからなんだ。殺人犯は1人殺すのも2人殺すのも同じだからな。真相を知っている俺を殺そうとするかも知れない」
「そうだね……」
「三橋さんも、この事は誰にも言わないでくれ。三橋さんや伝えた人が危険にさらされる」
「分かった……。あっ!  そう言えば、七瀬さんってコスモコーポレーションの受付しているって言ってなかったっけ?」
「やっぱりそうなのか?」
「確かそうだったような……。危険かな?」
「いや、逆に真相を伝える方が危険になるかも知れない」
「そうね、そうかも……」
「じゃあ、落ち着いたら、また連絡するよ」
「うん……」

  俺は電車に乗り、真っ暗な窓の外を1時間、ボーッと眺めていた。五木との日々を思い出しながら……。
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