10番目の同級生

ジャメヴ

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視聴覚室

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  熊谷は守衛に会釈をして、2階中央のボタンを押した。このスイッチを押すとライトが点く訳ではないが、このスイッチをオンにしておかないと部屋のスイッチを入れても灯りが点かない仕組みだ。
(2階か、まさか視聴覚室じゃないだろうな?)
狩野は身の危険を感じた。視聴覚室は遮光カーテンと防音装備の為、周りから見えないし音も聞こえない。殺人犯かも知れない男と2人っきりで話すには最悪の場所だが……。
「念の為、こちらの防音の部屋で話しましょう。中西主任にも出来れば知られたくないので」
「……え、ええ……」
狩野にとって最悪の状況になったが、頭をフル回転させて回避策を考える。
「では、どうぞ」
熊谷はドアを開けて狩野を部屋に誘導する。
(部屋の中は真っ暗じゃないか。そうだ!  せめて出口に近い場所に座ろう)
「熊谷常務からお話しをいただいたので、上座へどうぞ」
無理やりな理屈だったが……。
「いえいえ、そんな、どうぞどうぞ」
熊谷にとって、狩野は上司にあたるし、年齢も20歳ぐらい上だ。上座に座る訳にもいかない。
「いやいや、お気になさらず、どうぞ」
  狩野の大嫌いな、おばちゃんコントをまさか自分がする事になるとは、夢にも思わなかっただろう。しかし、今は命が掛かっている!  狩野は必死の抵抗をしていた。しかし、実際のところ、熊谷は別にどちらでも問題無いので渋々感を出しながら先に入った。
「では、失礼します」
(出口近くを取るのも大事だが、出来れば背中も見せたくない)
熊谷は電灯のスイッチを入れた。真っ暗な部屋が明るくなる。入って右側に向かってスクリーンがあり、それを見るように机が並んでいる。
(これは……どこに座るのがベストだ?)
熊谷を先に入れたので、出口側のポジションを取る事は出来るが、近いと出口までの距離が二人とも同じぐらいになり意味が無い。だが、奥に行くと、狩野の方が出口は近くなるが、距離がある分逃げにくい。
「どこでも良いんですが……」
そう言って、熊谷は少し右へ進み、スクリーンに背を向けて、通路直ぐの席に座った。仕方ないと思いながら、狩野は熊谷の正面に座る。机の幅は1メートル弱。鈍器で殴るのは難しそうだ。だが、ナイフなら……。
「それでは、今後の事について、私なりに考えてきましたので、お聞きください」
熊谷はそう言うと、持ってきた鞄から何かを取り出す。狩野は何を出すかを凝視する。すると、銀色の物が光に反射した!
(まさか、ナイフ……)
狩野は身構えた。その時!  電気が急に消え、部屋が真っ暗になった!
「うわああ~!!」
狩野は叫び、椅子と机を蹴飛ばして出口へ向かう。壁をつたうがノブが見つからない。
(無い!  無い!)
焦っている為か見つけられない。
(無い!  無い!)
やはり見つからない!  狩野は振り返り、熊谷の方を見る。その時、雷が遮光カーテンのわずかな隙間を少しだけ照らした。熊谷は仁王立ちになっている!  狩野の恐怖心からか、ただでさえ大きい熊谷は2メートル近くにも見え、逆光により、痩けた顔と飛び出た目は、麻薬常習者を想像させた。
(こ、殺される)
「うわああああ~!!!」
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