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花見
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「来る時も思ってたけど、この辺り桜が綺麗だね」
「あそこに見える山の桜って見に行けないかな?」
「ちょっと行ってみる?」
「駐車場とかあれば良いんだけどなぁ」
三橋さんは少し高台に見える桜の方へ車を走らせた。遠いように見えたが車だと意外と近い。
「あっ! 駐車場がある!」
「入ってみよう、田舎だし多分タダじゃないかな?」
20台程度停められる駐車場が半分ほど埋まっていたが停められそうだ。
「良かった」
「あの階段上れば桜見えるんじゃない? 行こうか」
「散歩する?」
「折角だし花見しよう。サンドイッチもあるしね」
「そうだね。行こう」
俺と三橋さんが階段を上ると大きな桜が見えた。10本ぐらいある。既に3組ぐらいが花見をしている。
「綺麗だね~」
「もう少し上へ行ってみよう」
階段は20段ぐらいで1つ上のスペースに上がれるようになっており、全部で100段ぐらいあった。
「1番上まで上ってみようか」
俺は三橋さんの荷物を持つとダッシュで一気に駆け上がった。後ろを振り向くと、三橋さんもスポーツ万能の筈だが全くついてきていない。
「おお~、良い眺め~」
1番上まで上がると全体が見渡せる。三橋さんも追い付いたようだ。
「凄~い。桜も綺麗!」
「そこの大きな桜の下の芝生にでも座る? でも、ちょっと汚れるかな?」
「ジャジャーン!」
三橋さんはレジャーシートを見せた。
「おお、気が利きますね」
「任せて! 女子力高いんだから!」
三橋さんはそう言うとレジャーシートを広げて荷物を置いた。
「どうぞ」
「いや~、ボクシングをタダで見られて、桜をタダで見られて、幸せだねぇ」
「サンドイッチもタダで食べられて」
三橋さんはそう言うとサンドイッチを広げた。
「おお~!」
「はい、ミルクティー」
「至れり尽くせりというのは、これか!」
「ごゆるりとおくつろぎください」
俺達は会話と食事を楽しんだ。中学生当時、誰が誰を好きだったという恋バナや、学校内での友達の色々な失敗談、面白かった先生の話等で盛り上がったのだが、10人しかいない同級生の内、3人も亡くなってしまった事が悔やまれる。唯一、嬉しいニュースと言えば、自殺したと噂されていた十文字が生きていた事ぐらいだろう。十文字は可愛い見た目だったせいか皆から好かれていたので誰もが喜ぶ話だろう。そして、最近の話へ戻って三橋さんが質問する。
「そういえば昨日、野々村さん達来た?」
「ああ、来たよ。目隠し殺人の聞き取りで」
「変なアンケート無かった?」
「ああ、あったね。俺はああいうの好きだけどね」
「どんな順番で答えたの?」
「ええっと……三橋さん、八重樫、四天王寺の順だったかな?」
「あっ! 私の事信用してくれてるのね」
三橋さんは嬉しそうだ。
「三橋さんは何て答えた?」
「私は九十九さん、一ノ瀬君、八重樫君だったかな?」
「俺、1番じゃないのか~」
「あはは、だって、普通に考えたら九十九さんでしょ。逆に一ノ瀬君は何で九十九さん入ってないの?」
「!!」
俺は楽しい雰囲気から一変し、脳に氷水をぶっ掛けられた感覚になった。
「ん? どうかした?」
「このアンケートってクラス全員にしたんだろうか?」
「多分そうじゃない? だって私達二人だけに聞くのも変でしょう?」
「まあ、そうだね」
しまった! 全員にアンケートをとれば、全員九十九さんが上位にくるのに俺は九十九さんを入れていない。俺の答えが変だというのが浮き彫りになる。そうか、このアンケートはその為のものか!
俺は、アンケートの意味を深く考えずに、ただ、楽しんで回答してしまった事を悔いたが、もう遅い。
「何か問題あった?」
「いやいや、このサンドイッチ美味しいな。俺、しゃきしゃきのレタス好きなんだ」
「でしょでしょ~。玉子サンドも美味しいよ」
適当にその場をごまかしたお陰で三橋さんはノリノリだが、俺はそんな余裕が全く無くなった。
明日にでも九十九さんと話をした方が良いかも知れない……。
「あそこに見える山の桜って見に行けないかな?」
「ちょっと行ってみる?」
「駐車場とかあれば良いんだけどなぁ」
三橋さんは少し高台に見える桜の方へ車を走らせた。遠いように見えたが車だと意外と近い。
「あっ! 駐車場がある!」
「入ってみよう、田舎だし多分タダじゃないかな?」
20台程度停められる駐車場が半分ほど埋まっていたが停められそうだ。
「良かった」
「あの階段上れば桜見えるんじゃない? 行こうか」
「散歩する?」
「折角だし花見しよう。サンドイッチもあるしね」
「そうだね。行こう」
俺と三橋さんが階段を上ると大きな桜が見えた。10本ぐらいある。既に3組ぐらいが花見をしている。
「綺麗だね~」
「もう少し上へ行ってみよう」
階段は20段ぐらいで1つ上のスペースに上がれるようになっており、全部で100段ぐらいあった。
「1番上まで上ってみようか」
俺は三橋さんの荷物を持つとダッシュで一気に駆け上がった。後ろを振り向くと、三橋さんもスポーツ万能の筈だが全くついてきていない。
「おお~、良い眺め~」
1番上まで上がると全体が見渡せる。三橋さんも追い付いたようだ。
「凄~い。桜も綺麗!」
「そこの大きな桜の下の芝生にでも座る? でも、ちょっと汚れるかな?」
「ジャジャーン!」
三橋さんはレジャーシートを見せた。
「おお、気が利きますね」
「任せて! 女子力高いんだから!」
三橋さんはそう言うとレジャーシートを広げて荷物を置いた。
「どうぞ」
「いや~、ボクシングをタダで見られて、桜をタダで見られて、幸せだねぇ」
「サンドイッチもタダで食べられて」
三橋さんはそう言うとサンドイッチを広げた。
「おお~!」
「はい、ミルクティー」
「至れり尽くせりというのは、これか!」
「ごゆるりとおくつろぎください」
俺達は会話と食事を楽しんだ。中学生当時、誰が誰を好きだったという恋バナや、学校内での友達の色々な失敗談、面白かった先生の話等で盛り上がったのだが、10人しかいない同級生の内、3人も亡くなってしまった事が悔やまれる。唯一、嬉しいニュースと言えば、自殺したと噂されていた十文字が生きていた事ぐらいだろう。十文字は可愛い見た目だったせいか皆から好かれていたので誰もが喜ぶ話だろう。そして、最近の話へ戻って三橋さんが質問する。
「そういえば昨日、野々村さん達来た?」
「ああ、来たよ。目隠し殺人の聞き取りで」
「変なアンケート無かった?」
「ああ、あったね。俺はああいうの好きだけどね」
「どんな順番で答えたの?」
「ええっと……三橋さん、八重樫、四天王寺の順だったかな?」
「あっ! 私の事信用してくれてるのね」
三橋さんは嬉しそうだ。
「三橋さんは何て答えた?」
「私は九十九さん、一ノ瀬君、八重樫君だったかな?」
「俺、1番じゃないのか~」
「あはは、だって、普通に考えたら九十九さんでしょ。逆に一ノ瀬君は何で九十九さん入ってないの?」
「!!」
俺は楽しい雰囲気から一変し、脳に氷水をぶっ掛けられた感覚になった。
「ん? どうかした?」
「このアンケートってクラス全員にしたんだろうか?」
「多分そうじゃない? だって私達二人だけに聞くのも変でしょう?」
「まあ、そうだね」
しまった! 全員にアンケートをとれば、全員九十九さんが上位にくるのに俺は九十九さんを入れていない。俺の答えが変だというのが浮き彫りになる。そうか、このアンケートはその為のものか!
俺は、アンケートの意味を深く考えずに、ただ、楽しんで回答してしまった事を悔いたが、もう遅い。
「何か問題あった?」
「いやいや、このサンドイッチ美味しいな。俺、しゃきしゃきのレタス好きなんだ」
「でしょでしょ~。玉子サンドも美味しいよ」
適当にその場をごまかしたお陰で三橋さんはノリノリだが、俺はそんな余裕が全く無くなった。
明日にでも九十九さんと話をした方が良いかも知れない……。
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