10番目の同級生

ジャメヴ

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信雄死亡

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午後8時半
  野々村は自宅で食事をとった後、DVDを見ながらインスタントコーヒーを飲んでいた。テレビには日吉の2戦目の試合が流れている。何度も見ているので、今更興奮したりはしない。試合が終わったところでテレビを切り、目を瞑って今日の日吉の試合を思い出す。皆の前では、あまり感情を表に出す事は無いが、個人的には最も楽しみにしていたイベント。何しろ、可愛がっている後輩と日本チャンピオンを狙えるかも知れないという、自分が更正に少し関わった元ヤンキーとの試合だったのだから。警察官の為、いつ緊急出動があるか分からないので今日も酒を飲んだりはしないが、日吉のボクシングの試合をアテに寛いでいた。
  そんな中、机に置いていたスマホがブブブと大きな音を立てて震えたので左手で掴む。ディスプレイには小牧と表示されていた。
「お疲れ、どうした?」
「野々村さん!  六角信雄が……死んでいます!!」
「何だって!!」
「車内で亡くなっていて、練炭の燃えかすがあります。恐らく一酸化炭素中毒でしょう」
「現金はあるか?」
「ええっと……結構あります。100万近くあるかも知れません。強盗目的では無いですね」
「自責の念による自殺の可能性がゼロって訳でもないが……」
「一ノ瀬を尾行しますか?」
「いや……もう、犯行は無いだろう。それに怪しいのは一ノ瀬では無く九十九だ」
「野々村さん、私には一ノ瀬の方が怪しく思えるんですが……」
「確かに、アンケート結果から一ノ瀬が本命だと考えるのが普通だが、目隠し殺人と信雄練炭殺人について、九十九にはハッキリとした動機がある」
「何ですか?」
「五木の敵討ちだよ」
「五木の敵討ちだったら一ノ瀬もあり得るじゃないですか」
「あり得るな。だが、一ノ瀬は信孝が死んだ時に五木を轢き殺したのが信孝だと知らなかった訳だろう?  知らなかったら信孝を殺す意味が無い。恐らく九十九はネットで見て知っていたんだよ」
「五木と九十九は恋人だったんですか?」
「もちろん推測だが、ここまで来ると間違い無いだろう。一ノ瀬に聞いても答えないかも知れないから、三橋に聞くのが良いかも知れない」
「明日、三橋に確認します」

  電話を切り、野々村は少し冷えたコーヒーをゆっくりと飲み干し、風呂場へ向かった。今からとは言わないが、殺人事件かも知れない状況なので、明日には出勤するのが刑事というものなのだが、野々村は土日に仕事をする事は無い。そういうポリシーなのだ。もちろん、土日に殺人が起こるという事が分かっているという状況であれば、ポリシーを無視して出勤するのだが、 野々村は、もう殺人は起こらないと予想している。明日も休日をゆっくりと過ごす予定だ。 
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