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六角信孝
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六角信孝編
五木を偲ぶ会の日、4月2日午前10時過ぎ
六角は今朝になり、警察からようやくスマホを返してもらった。スマホを見ると、昨夜より二岡から10回近く着信履歴があった。急いで二岡へ電話する。
「もしもし! お前何やってんだよ!」
「悪い、色々あって出れなかった」
「ちっ! まあ良いか、なあ六角」
「何だ?」
「今日の同窓会、乾杯のお茶に睡眠薬入れておくから、飲むなよ」
「えっ! どう言う事だ?」
「十文字の自殺の件を皆どう思ってるのか、本音が知りたいんだよ。ちょっと考えがあるから。明日は面白くなるぞ」
(二岡のやつ、また変な事考えているな。アイツに絡むと今までろくな事が無い。貸した金も返す気が無いみたいだしな)
中学時代、二岡は六角の指示通りに動いていた。六角の方が頭が切れるし、ミスも無かった。悪さをするスリルを楽しんでいたが失敗するかもと思いながら、成功するのが好きだった。ただ今回は、自分の作戦で動く。
六角は二岡の事を馬鹿にしたりしなかったし、そんな素振りも見せていなかったが、二岡は下に見られていると感じていた。そんな思いもあり、今回の行動に出たのだった。
昨日、三橋から二岡に電話があったのだが、その時は、今更中学の同級生に会ってもメリットが無いと思い一旦断ったのだが、今回の作戦を思い付き、二岡は折り返しの電話を掛けた。
「もしもし、二岡君?」
「ああ」
「どうしたの? 行く気になった?」
「ああ、皆に会うのも久々だしな。1度ぐらい顔を見せておこうと思って」
「ありがとう」
「それで、食事の段取りとかも大変だろ? 暇だし手伝うよ」
「え~、良いよ良いよ。気持ちだけで」
「いやいや、重いものもあるだろ? 『緑雲』とか。それぐらいは運ぶよ」
「ありがとう。じゃあ、お願いしようかな。五木君のお葬式早めに抜けるから、私達と一緒に来てくれるかな?」
「分かった」
「じゃあよろしくね。また、後で」
「ああ」
二岡は電話を切った。
11時過ぎに、五木の葬式を三橋と九十九が抜け出すのを見て二岡もついていく。
三橋はカラオケ店のキッチンで冷凍のピザを温めている。寿司は予め部屋に持っていってあり、ラップが掛けられている。九十九は唐揚げを作っていた。オーブンで焼くだけのようだ。
「じゃあ、二岡君はお茶をピッチャーに入れて運んでくれる? そこにお盆があるから。ピッチャーは3つあるから、そこにお茶を入れて持っていって。グラスも10個あれば足りるかな?」
「分かった」
二岡はピッチャーに氷を10個ずつ入れ、ペットボトルのお茶をピッチャー3つに注いでいく。
『緑雲』はちょっと前まで、お茶っ葉だけの販売だったが、この地方での売れ行きが良く、大手企業と提携してペットボトルでの販売が開始されている。
お茶を注ぎ終わった二岡は、ピッチャー3つを乗せ、お盆ごと部屋に運ぶ。
「二岡君、重いから気を付けてね」
「了解」
二岡はお茶を運びながら、今回の計画の肝が成功した事で笑いが込み上げてきたようだが、なんとか噛み殺した。
通路を曲がったところでお盆を一旦床に置き、ピッチャーの中へ、錠剤の睡眠導入剤を予め砕いて粉にしたものを入れていき、ストローで混ぜた。睡眠薬系の薬はレイプ等の犯罪防止の為、飲み物に混ぜると青く変色するようになっている。少し見た目の色が変わっていくが、『緑雲』は濃く暗い緑色の為、注視しないと気付かないだろう。
五木を偲ぶ会の日、4月2日午前10時過ぎ
六角は今朝になり、警察からようやくスマホを返してもらった。スマホを見ると、昨夜より二岡から10回近く着信履歴があった。急いで二岡へ電話する。
「もしもし! お前何やってんだよ!」
「悪い、色々あって出れなかった」
「ちっ! まあ良いか、なあ六角」
「何だ?」
「今日の同窓会、乾杯のお茶に睡眠薬入れておくから、飲むなよ」
「えっ! どう言う事だ?」
「十文字の自殺の件を皆どう思ってるのか、本音が知りたいんだよ。ちょっと考えがあるから。明日は面白くなるぞ」
(二岡のやつ、また変な事考えているな。アイツに絡むと今までろくな事が無い。貸した金も返す気が無いみたいだしな)
中学時代、二岡は六角の指示通りに動いていた。六角の方が頭が切れるし、ミスも無かった。悪さをするスリルを楽しんでいたが失敗するかもと思いながら、成功するのが好きだった。ただ今回は、自分の作戦で動く。
六角は二岡の事を馬鹿にしたりしなかったし、そんな素振りも見せていなかったが、二岡は下に見られていると感じていた。そんな思いもあり、今回の行動に出たのだった。
昨日、三橋から二岡に電話があったのだが、その時は、今更中学の同級生に会ってもメリットが無いと思い一旦断ったのだが、今回の作戦を思い付き、二岡は折り返しの電話を掛けた。
「もしもし、二岡君?」
「ああ」
「どうしたの? 行く気になった?」
「ああ、皆に会うのも久々だしな。1度ぐらい顔を見せておこうと思って」
「ありがとう」
「それで、食事の段取りとかも大変だろ? 暇だし手伝うよ」
「え~、良いよ良いよ。気持ちだけで」
「いやいや、重いものもあるだろ? 『緑雲』とか。それぐらいは運ぶよ」
「ありがとう。じゃあ、お願いしようかな。五木君のお葬式早めに抜けるから、私達と一緒に来てくれるかな?」
「分かった」
「じゃあよろしくね。また、後で」
「ああ」
二岡は電話を切った。
11時過ぎに、五木の葬式を三橋と九十九が抜け出すのを見て二岡もついていく。
三橋はカラオケ店のキッチンで冷凍のピザを温めている。寿司は予め部屋に持っていってあり、ラップが掛けられている。九十九は唐揚げを作っていた。オーブンで焼くだけのようだ。
「じゃあ、二岡君はお茶をピッチャーに入れて運んでくれる? そこにお盆があるから。ピッチャーは3つあるから、そこにお茶を入れて持っていって。グラスも10個あれば足りるかな?」
「分かった」
二岡はピッチャーに氷を10個ずつ入れ、ペットボトルのお茶をピッチャー3つに注いでいく。
『緑雲』はちょっと前まで、お茶っ葉だけの販売だったが、この地方での売れ行きが良く、大手企業と提携してペットボトルでの販売が開始されている。
お茶を注ぎ終わった二岡は、ピッチャー3つを乗せ、お盆ごと部屋に運ぶ。
「二岡君、重いから気を付けてね」
「了解」
二岡はお茶を運びながら、今回の計画の肝が成功した事で笑いが込み上げてきたようだが、なんとか噛み殺した。
通路を曲がったところでお盆を一旦床に置き、ピッチャーの中へ、錠剤の睡眠導入剤を予め砕いて粉にしたものを入れていき、ストローで混ぜた。睡眠薬系の薬はレイプ等の犯罪防止の為、飲み物に混ぜると青く変色するようになっている。少し見た目の色が変わっていくが、『緑雲』は濃く暗い緑色の為、注視しないと気付かないだろう。
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