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奇妙な参加者
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1875?
俺は問題を理解出来ないと判断し、直ぐに鍵を持って部屋を出、鍵を閉めた。1875だけでは全く意味が分からない。1875年に起こった出来事が関係あるとしても、歴史に疎いので、どうせ分からない。そうなると、問題を解くのは頭の良いヨツバに任せて、真っ先に、別荘の間取りを確認しようと考えたのだ。何かヒントになるようなものがあったりするかもしれない。
俺は直ぐに階段を下りた。二階は客室がほとんどだと推測したからだ。階段を下り、右から反時計回りに確認していく。
コンコンコン
・・・反応が無い。
ガチャ
トイレだ。何の変哲も無い洋式トイレ。
次の部屋は「F」と貼り紙されているので、司会者の部屋だろう。エフって何の頭文字だろうか? 飛ばして次の部屋をノックする。
コンコンコン
・・・反応が無い。
ガチャガッ・・・ガチャガチャ
開かない。鍵が閉まっているようだ。客室なのか、空室なのか・・・。
次の部屋をノックする。
コンコンコン
・・・反応が無い。
ガチャ
キッチンだ。業務用の冷蔵庫がある。開けると飲料とレトルト食品が大量に入っている。台風で帰れなくなっても飢え死にする事は無さそうだ。
次は業務用の冷凍庫を開けた。こちらにもレトルト食品が大量に入っている。100食以上ありそうだ。アイスもある。特にヒントになるようなものは見つからない。次の部屋へ移動する。
コンコンコン
・・・反応が無い。
ガチャ
洗面台だ。更衣室と繋がっている。その奥は風呂場のようだ。男女共用か・・・。女性が何人居るのか分からないけど、嫌がるのは必至だろう。風呂場にも特にヒントになるようなものは無かった。
再度、大広間に出ると後は玄関しか残っていない。他の皆も部屋を物色している。男性が1階に3人見える。ヨツバは?
「!」
2階を見上げると、ヨツバが手招きをしている。俺は速くもなく、遅くもないスピードで階段を上った。ヨツバと目が合うと、ヨツバは右手人差し指で、大広間を指差し言う。
「ここで見学してて」
俺は何も言わず、ヨツバを見て頷く。ヨツバは2階の玄関側へ向かった。全員の動向を知ろうと言うのだろう。先程も見た男性3人が忙《せわ》しなく部屋を物色している。背格好が、よく似ていて区別がつき難い。3人共、短めの黒髪でやや背が高く見え、やや細め。
1人は薄く青色がかったサングラスを掛け、黒のマスクに、襟付き半袖の白っぽいポロシャツにタイトな紺のジーンズ。
もう1人は、髪の毛を整髪料で少し逆立て、黒地に白で英語が書かれたティーシャツに7分丈の黒いズボンを穿いている。
残りの1人は、7分丈の黒いティーシャツの上から白のシャツを着、ベージュのチノパンの裾を捲っている。風呂にでも入って着替えられると、もう誰が誰だか分からないだろう。
これで全員か、女性はヨツバだけなのかと思った時、キッチンから男性がゆっくりと出てきた。細身ながら筋肉質なのがタイトな服を着ている為、良く分かる。真っ黒な無地のティーシャツに、シルバーのネックレスを付け、少しダボッとした紺のダメージジーンズを穿いている。1人だけ余裕が感じられる。
ふとヨツバを見るとこちらへ向かって来ている。ヨツバは右手人差し指で俺の部屋を指差し言う。
「窓」
窓? よく分からない。俺が理解していない感じを出しているのに、ヨツバは気にする事なく、自分の部屋に入り、鍵を閉めたような音が聞こえた。仕方なく俺も自分の部屋に入り、鍵を閉め、窓へ向かう。窓を開け、外を覗き、左を見るとヨツバが笑顔で左手を振っていた。
「ここなら誰にも気付かれずに話せるでしょ」
「確かに、良い場所だ」
ヨツバとの距離は1メートルも無い。小声でも話が出来そうだ。
「外を確認しにくる人には気をつけてね」
「了解」
ヨツバは常に俺より1歩先を進んでいる。気付くのがとにかく早い。
「1875について何か分かったかい?」
「私、結構歴史に強いのよ。歴女ってやつ」
「マジか!」
「でも駄目。1875年に起こった大きな出来事は無いわ。もちろん、毎年、何らかの事件は起こってるけど・・・。明治の中頃の詳細までは分からないし、詳細が分かっても、小さな事件だったら絞り込めないわ。せめて何月か分からないと」
「そうか・・・。例えば、2月だったら何か事件あるかな?」
「2月? 2月だったら板垣退助が愛国社っていう、自由民権運動の政治団体を作ってるけど・・・。どうして2月?」
「いや、ヒントになりそうなものが『F』しかなかったから。フェブラリーの『F』かなって」
「『F』はファシリテーターの頭文字じゃないかしら?」
「ファシリテーター?」
「進行役って意味よ」
「なるほど」
「あの人がお金持ちとは思えないし。進行役として雇われたのかなって」
確かに彼は金持ちには見えない。だけど、金持ちがあんなチャラい男を進行役として雇うだろうか? 偽物っぽい感じを出した本物かもしれない。
ヨツバは続けて話す。
「まあ、分からないけどね。何か別のヒントかもしれないし・・・。1階には他に何かヒントになるようなものあった?」
「いや、特には・・・」
「それと・・・双六君って彼等と知り合いじゃない?」
「彼等?」
「他の参加者よ」
「ん? 顔はハッキリ見てないけど・・・。何で?」
「共通点がありそうだから。3人共、双六君によく似ているのよ。親戚とかかもしれないわ」
「親戚? いや俺、同年代の従兄弟は居ないから」
「再従兄弟とか、もう少し遠い親戚かもしれないけど・・・。背格好を含めて、顔の雰囲気が似ているわ」
「そうなんだ。後で見てくるよ。話が出来る仲になれば、何かヒントを得られるかもしれないしね」
「そうね。じゃあ、私も少し落ち着いてから、自分の目で1階を確認してくるわ」
「了解」
ヨツバは笑顔で左手を振った後、窓を閉めた。
俺は問題を理解出来ないと判断し、直ぐに鍵を持って部屋を出、鍵を閉めた。1875だけでは全く意味が分からない。1875年に起こった出来事が関係あるとしても、歴史に疎いので、どうせ分からない。そうなると、問題を解くのは頭の良いヨツバに任せて、真っ先に、別荘の間取りを確認しようと考えたのだ。何かヒントになるようなものがあったりするかもしれない。
俺は直ぐに階段を下りた。二階は客室がほとんどだと推測したからだ。階段を下り、右から反時計回りに確認していく。
コンコンコン
・・・反応が無い。
ガチャ
トイレだ。何の変哲も無い洋式トイレ。
次の部屋は「F」と貼り紙されているので、司会者の部屋だろう。エフって何の頭文字だろうか? 飛ばして次の部屋をノックする。
コンコンコン
・・・反応が無い。
ガチャガッ・・・ガチャガチャ
開かない。鍵が閉まっているようだ。客室なのか、空室なのか・・・。
次の部屋をノックする。
コンコンコン
・・・反応が無い。
ガチャ
キッチンだ。業務用の冷蔵庫がある。開けると飲料とレトルト食品が大量に入っている。台風で帰れなくなっても飢え死にする事は無さそうだ。
次は業務用の冷凍庫を開けた。こちらにもレトルト食品が大量に入っている。100食以上ありそうだ。アイスもある。特にヒントになるようなものは見つからない。次の部屋へ移動する。
コンコンコン
・・・反応が無い。
ガチャ
洗面台だ。更衣室と繋がっている。その奥は風呂場のようだ。男女共用か・・・。女性が何人居るのか分からないけど、嫌がるのは必至だろう。風呂場にも特にヒントになるようなものは無かった。
再度、大広間に出ると後は玄関しか残っていない。他の皆も部屋を物色している。男性が1階に3人見える。ヨツバは?
「!」
2階を見上げると、ヨツバが手招きをしている。俺は速くもなく、遅くもないスピードで階段を上った。ヨツバと目が合うと、ヨツバは右手人差し指で、大広間を指差し言う。
「ここで見学してて」
俺は何も言わず、ヨツバを見て頷く。ヨツバは2階の玄関側へ向かった。全員の動向を知ろうと言うのだろう。先程も見た男性3人が忙《せわ》しなく部屋を物色している。背格好が、よく似ていて区別がつき難い。3人共、短めの黒髪でやや背が高く見え、やや細め。
1人は薄く青色がかったサングラスを掛け、黒のマスクに、襟付き半袖の白っぽいポロシャツにタイトな紺のジーンズ。
もう1人は、髪の毛を整髪料で少し逆立て、黒地に白で英語が書かれたティーシャツに7分丈の黒いズボンを穿いている。
残りの1人は、7分丈の黒いティーシャツの上から白のシャツを着、ベージュのチノパンの裾を捲っている。風呂にでも入って着替えられると、もう誰が誰だか分からないだろう。
これで全員か、女性はヨツバだけなのかと思った時、キッチンから男性がゆっくりと出てきた。細身ながら筋肉質なのがタイトな服を着ている為、良く分かる。真っ黒な無地のティーシャツに、シルバーのネックレスを付け、少しダボッとした紺のダメージジーンズを穿いている。1人だけ余裕が感じられる。
ふとヨツバを見るとこちらへ向かって来ている。ヨツバは右手人差し指で俺の部屋を指差し言う。
「窓」
窓? よく分からない。俺が理解していない感じを出しているのに、ヨツバは気にする事なく、自分の部屋に入り、鍵を閉めたような音が聞こえた。仕方なく俺も自分の部屋に入り、鍵を閉め、窓へ向かう。窓を開け、外を覗き、左を見るとヨツバが笑顔で左手を振っていた。
「ここなら誰にも気付かれずに話せるでしょ」
「確かに、良い場所だ」
ヨツバとの距離は1メートルも無い。小声でも話が出来そうだ。
「外を確認しにくる人には気をつけてね」
「了解」
ヨツバは常に俺より1歩先を進んでいる。気付くのがとにかく早い。
「1875について何か分かったかい?」
「私、結構歴史に強いのよ。歴女ってやつ」
「マジか!」
「でも駄目。1875年に起こった大きな出来事は無いわ。もちろん、毎年、何らかの事件は起こってるけど・・・。明治の中頃の詳細までは分からないし、詳細が分かっても、小さな事件だったら絞り込めないわ。せめて何月か分からないと」
「そうか・・・。例えば、2月だったら何か事件あるかな?」
「2月? 2月だったら板垣退助が愛国社っていう、自由民権運動の政治団体を作ってるけど・・・。どうして2月?」
「いや、ヒントになりそうなものが『F』しかなかったから。フェブラリーの『F』かなって」
「『F』はファシリテーターの頭文字じゃないかしら?」
「ファシリテーター?」
「進行役って意味よ」
「なるほど」
「あの人がお金持ちとは思えないし。進行役として雇われたのかなって」
確かに彼は金持ちには見えない。だけど、金持ちがあんなチャラい男を進行役として雇うだろうか? 偽物っぽい感じを出した本物かもしれない。
ヨツバは続けて話す。
「まあ、分からないけどね。何か別のヒントかもしれないし・・・。1階には他に何かヒントになるようなものあった?」
「いや、特には・・・」
「それと・・・双六君って彼等と知り合いじゃない?」
「彼等?」
「他の参加者よ」
「ん? 顔はハッキリ見てないけど・・・。何で?」
「共通点がありそうだから。3人共、双六君によく似ているのよ。親戚とかかもしれないわ」
「親戚? いや俺、同年代の従兄弟は居ないから」
「再従兄弟とか、もう少し遠い親戚かもしれないけど・・・。背格好を含めて、顔の雰囲気が似ているわ」
「そうなんだ。後で見てくるよ。話が出来る仲になれば、何かヒントを得られるかもしれないしね」
「そうね。じゃあ、私も少し落ち着いてから、自分の目で1階を確認してくるわ」
「了解」
ヨツバは笑顔で左手を振った後、窓を閉めた。
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