嫉妬が憧憬に変わる時

ジャメヴ

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ロマンスグレーの髪の男

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土曜日12時半……
  俺は少し大きめのカバンに1日分の着替えと、その他必要な物を入れて玄関に置き、母さんへ出発の挨拶をした後、家を出た。母さんには、昨日のうちに泊まりのバイトに出掛ける事は告げてある。
  3月になったというのに今日はかなり寒い。明日はもっと寒くなり、季節外れの雪が降るかも知れないとの事だ。
  駅に着き、金宮までの切符を買う。電車賃はピッタリ1,000円。電車に乗り、金宮駅までは約1時間。
  少し気になるのは睡眠時間だろう。山田さんも詳しくは知らないと言っていた。今日は9時に起きたから睡眠無しだとすると、24時間起きていないといけない。危ない仕事ならウトウトは出来ないからな。ボディーガードが5人程度居るなら睡眠時間もあると思う。
  金宮駅で電車を降り改札を出ると、高級そうな漆黒のスーツにサングラスでマスクをした、いかにもという男性が待っていた。ロマンスグレーの髪に似合うのはこれだ!  と言わんばかりに、年齢の割には長めの髪を後ろで束ねている。サングラスにマスク越しではあるけど、中々ダンディーだ。身長は170センチ弱か?  60過ぎぐらいの歳に見えるけど、実際はもっと上かも知れない。

「坂井直樹さんですね」
「えっと……そうです」
そうだった。俺は坂井直樹役だった。忘れないようにしないと……。
「では、こちらを……」
ロマンスグレーの髪の男はそう言うとサングラスとマスクを渡してきた。
「就寝時以外は基本、そちらをお付けください」
「分かりました」
「あと、個人情報が特定されるような話は避けてください。トラブルの元になります」
「なるほど、分かりました」

  ロマンスグレーの髪の男は俺を漆黒の高級車に誘導し、俺が後部座席に乗り込むと、彼は運転席に座った。ロマンスグレーの髪の男は何も言わずに車を発進させる。俺はサングラスとマスクをした。外からは黒のサングラスだけど、内側からはそこまで暗くは無い。むしろ良く見えるような感覚もある。高級なサングラスなのだろう。

「どちらに行くか聞いても良いんですか?」
「王の別荘です」
「王?」
「某有名会社の元会長ですよ」
「へ~」

  どうせ金持ち過ぎて自分には関係無いな、と思って俺は適当な相槌をしたんだけど、よくよく考えると知っていた事に気付く。王っていうのは携帯会社会長の王秀英だろう。王秀英は個人資産1兆円とも言われる大富豪。だから、高額なボディーガード料なんだと納得した。そう言われてみると、サングラスとマスク越しではあるけど、ロマンスグレーの髪の男は王に似ている。もしかすると、親戚か何かかも知れない。
  そんな事を考えながら、車の中から窓の外を見ると、いつの間にか森の中を走っていた。そう言えば、登り坂ばかりの気がする。山を登っているのだろう。
  40分ぐらい走ったのだろうか、窓の外は雪が降りだした。もう3月なのでスタッドレスタイヤなのか心配になったけど、スリップする様子もないので、そのあたりは大丈夫そうだ。
  その後、ようやく車が停車し、後部座席のドアが開いた。フロントガラス越しには、雪景色の中、洋館のような佇まいの豪邸が見えている。洋館というと古びて暗く、コウモリが飛び交っている様なイメージが湧くけど、王の別荘は雪が降っている事も影響してか、とても綺麗だ。

「山奥ですが、太陽光による自家発電で電気は使えます」
「へ~、凄いですね」
お金って有るところには有るんだな、と俺は感心した。
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