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イケメン学生は……
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◆万引きの冤罪は10パーセントに上るとも言われる。現行犯で捕まえようとすると誤認も多くなるのは避けられない。だが、これは当然の事とも考えられる。何故なら1つの品を万引きされると、店側は5品以上を売らないと元が取れないのだ。しかも、年間の万引き認知件数は10万件を越える。認知されていないものを含めれば100万件に上るとも言われている。少しでも怪しいと思えば捕まえざるを得ない。死活問題なのだから……。
知らない内にカバンに入れられる代表と言えば麻薬だ。特に海外では、空港等でカバンに入れられる事や、「ちょっと預かっていてください」と無理やり荷物を渡される事がある。預けた人物を運び屋として利用し、あわよくば密輸しようとしているのだ。ちょっとした親切心を出したり、呆気にとられていると、警察に調べられて捕まってしまう。知りませんでした等の理由は全く聞いてもらえないし、カタコトの説明なら当然信じてもらえない。では、どれぐらいの罪になってしまうのだろう? 執行猶予はつくのだろうか? それとも、いきなり実刑になってしまうのだろうか? 考えが甘い。
死刑になる!
そんな馬鹿な! と思うだろうが、そういう国は意外とある。中近東と東南アジアの国々に麻薬取り締まりが厳しく、1発死刑があるようだ。しかも、故意犯だろうと冤罪だろうと関係無い。どちらであろうと犯人は知らないと言うのだから、どちらも死刑にするしかないとなる訳だ。◆
笹井はショックだった。
(出勤最後の日にこんな後味の悪い事になるなんて……。いや、私は別に良い……。あの学生に悪い事をした……)
笹井は反省していたが、ふと我にかえると、まだ勤務時間だという事に気がついた。午後7時50分……既に営業時間は終わっており、社員やパートも帰っていた。皆に挨拶も出来なかったなと後悔しながら、ざっと店内を見回り、支店長に挨拶に行く。
「支店長、長い間お世話になりました」
「こちらこそ、お世話になりました。笹井さんが居てくれたお陰で大きな問題も無く助かりました」
「ありがとうございます。でも、最後の日にこんな事になってしまうなんて……」
「長い人生、そんな事もありますよ。気を落とさずに」
「そうですね……。では、失礼します」
笹井は着替えて約4年間使った制服をカバンに入れて事務所を出た。すると、社員やパートが待ち構えている。
「笹井さん! 長い間お疲れさまでした!」
パチパチパチパチパチパチ……
拍手の中、ベテラン女性社員から花束を渡された。
「ありがとうございます。私なんかの為に……」
ただの警備員の為にここまでしてくれるのは稀だろう。笹井の人徳あってのものだ。
(非常にありがたい。でも……)
笹井は今日の事が気になって素直に喜べなかった。折角の感動サプライズだというのに、意識の半分が万引き冤罪による慚愧《ざんき》の念になってしまっていた。
だが、笹井は意外な光景を目の当たりにする。先程のイケメン学生が社員やパートと一緒に拍手をしてくれているではないか。さらに、彼は会釈をして笹井に話し掛ける。
「警備員さん、お疲れ様でした。今日の件は気にしていませんので、お互い水に流しましょう」
「えっ、えっ? どうして?」
笹井は困惑して聞き返す。関係無い学生が何故この場にいるのか意味が分からなかった為だ。
「帰ろうと思ったところ、レジ打ちの方達が花束を準備されていたので、もしかしてと確認したんです。それで、警備員さんが今日、仕事の最終日だと知ったんです。もし、警備員さんが今日の事を気にされていたら、一生後悔されるかもしれないと思ったので……」
「ありがとう……。私の方こそ申し訳無い。不快な思いをさせてしまって……」
笹井は涙ぐんだ。万引き犯に仕立て上げてしまった人物が怒る訳でも無く、笹井の心配をしてくれているのだから。
「警備員さんは悪くないですよ。ちゃんと仕事をした結果です」
「ありがとう……。お名前を伺っても良いかな?」
「時雨刹那って言います」
「時雨君ありがとう。君は将来、きっと立派な人物になるよ」
笹井が自宅に帰ると息子の車が停まっているのに気付いた。土日に息子夫婦が来る事は良くあるが、平日に来る事は稀だ。
「ただいま」
「おじいちゃんお帰り~! お仕事お疲れ様~!」
「お疲れ様でした」
孫の純一が抱きついてきた。家族からも労いの言葉を掛けられる。
「ありがとう。純一も立派な大人になるんだよ」
笹井は純一を抱きしめた。
刹那は笹井と出入り口で話している時に、野次馬が2人居て、スマホで動画を撮っている事に気付いていた。その行動があまりにも早い為、その2人が自分の学生カバンに消しゴムを入れた犯人じゃないかと疑っていたのだ。さらに、刹那は野次馬の1人が同級生の田辺だと気が付いた。だが、田辺は小学校が違うし、中学校でも同じクラスになった事が無い。ほとんど交流の無い田辺から恨まれる覚えは無いし、そもそも、田辺にとってメリットが無い。ただ、関係無いとは言い切れない早さと偶然だった。もう1人の男は知らないが田辺の知り合いのように見えた。
刹那は犯人の目的が分からず困惑していた。
知らない内にカバンに入れられる代表と言えば麻薬だ。特に海外では、空港等でカバンに入れられる事や、「ちょっと預かっていてください」と無理やり荷物を渡される事がある。預けた人物を運び屋として利用し、あわよくば密輸しようとしているのだ。ちょっとした親切心を出したり、呆気にとられていると、警察に調べられて捕まってしまう。知りませんでした等の理由は全く聞いてもらえないし、カタコトの説明なら当然信じてもらえない。では、どれぐらいの罪になってしまうのだろう? 執行猶予はつくのだろうか? それとも、いきなり実刑になってしまうのだろうか? 考えが甘い。
死刑になる!
そんな馬鹿な! と思うだろうが、そういう国は意外とある。中近東と東南アジアの国々に麻薬取り締まりが厳しく、1発死刑があるようだ。しかも、故意犯だろうと冤罪だろうと関係無い。どちらであろうと犯人は知らないと言うのだから、どちらも死刑にするしかないとなる訳だ。◆
笹井はショックだった。
(出勤最後の日にこんな後味の悪い事になるなんて……。いや、私は別に良い……。あの学生に悪い事をした……)
笹井は反省していたが、ふと我にかえると、まだ勤務時間だという事に気がついた。午後7時50分……既に営業時間は終わっており、社員やパートも帰っていた。皆に挨拶も出来なかったなと後悔しながら、ざっと店内を見回り、支店長に挨拶に行く。
「支店長、長い間お世話になりました」
「こちらこそ、お世話になりました。笹井さんが居てくれたお陰で大きな問題も無く助かりました」
「ありがとうございます。でも、最後の日にこんな事になってしまうなんて……」
「長い人生、そんな事もありますよ。気を落とさずに」
「そうですね……。では、失礼します」
笹井は着替えて約4年間使った制服をカバンに入れて事務所を出た。すると、社員やパートが待ち構えている。
「笹井さん! 長い間お疲れさまでした!」
パチパチパチパチパチパチ……
拍手の中、ベテラン女性社員から花束を渡された。
「ありがとうございます。私なんかの為に……」
ただの警備員の為にここまでしてくれるのは稀だろう。笹井の人徳あってのものだ。
(非常にありがたい。でも……)
笹井は今日の事が気になって素直に喜べなかった。折角の感動サプライズだというのに、意識の半分が万引き冤罪による慚愧《ざんき》の念になってしまっていた。
だが、笹井は意外な光景を目の当たりにする。先程のイケメン学生が社員やパートと一緒に拍手をしてくれているではないか。さらに、彼は会釈をして笹井に話し掛ける。
「警備員さん、お疲れ様でした。今日の件は気にしていませんので、お互い水に流しましょう」
「えっ、えっ? どうして?」
笹井は困惑して聞き返す。関係無い学生が何故この場にいるのか意味が分からなかった為だ。
「帰ろうと思ったところ、レジ打ちの方達が花束を準備されていたので、もしかしてと確認したんです。それで、警備員さんが今日、仕事の最終日だと知ったんです。もし、警備員さんが今日の事を気にされていたら、一生後悔されるかもしれないと思ったので……」
「ありがとう……。私の方こそ申し訳無い。不快な思いをさせてしまって……」
笹井は涙ぐんだ。万引き犯に仕立て上げてしまった人物が怒る訳でも無く、笹井の心配をしてくれているのだから。
「警備員さんは悪くないですよ。ちゃんと仕事をした結果です」
「ありがとう……。お名前を伺っても良いかな?」
「時雨刹那って言います」
「時雨君ありがとう。君は将来、きっと立派な人物になるよ」
笹井が自宅に帰ると息子の車が停まっているのに気付いた。土日に息子夫婦が来る事は良くあるが、平日に来る事は稀だ。
「ただいま」
「おじいちゃんお帰り~! お仕事お疲れ様~!」
「お疲れ様でした」
孫の純一が抱きついてきた。家族からも労いの言葉を掛けられる。
「ありがとう。純一も立派な大人になるんだよ」
笹井は純一を抱きしめた。
刹那は笹井と出入り口で話している時に、野次馬が2人居て、スマホで動画を撮っている事に気付いていた。その行動があまりにも早い為、その2人が自分の学生カバンに消しゴムを入れた犯人じゃないかと疑っていたのだ。さらに、刹那は野次馬の1人が同級生の田辺だと気が付いた。だが、田辺は小学校が違うし、中学校でも同じクラスになった事が無い。ほとんど交流の無い田辺から恨まれる覚えは無いし、そもそも、田辺にとってメリットが無い。ただ、関係無いとは言い切れない早さと偶然だった。もう1人の男は知らないが田辺の知り合いのように見えた。
刹那は犯人の目的が分からず困惑していた。
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