嫉妬が憧憬に変わる時

ジャメヴ

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ユーチューバー

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翌日、2時間目の休み時間
教室

  刹那は田辺のクラスに来た。田辺を睨み付けると田辺は目を逸らした。刹那は田辺の側まで行き話し掛ける。
「やあ、田辺君だよね?  俺に何か言う事無いか?」
「えっ、いや、あの……」
「言う事が有るか無いかだけ言ってくれ」
「あっ、あっ……ごめんなさい」

  もちろん、刹那は田辺が犯人だと断定出来ていた訳では無い。だが、田辺が刹那の圧にビビって謝った事で犯人だと確信した。
「理由は何だ?  君に何のメリットがある?」
「あの……兄ちゃんに頼まれて……兄ちゃんユーチューバーなんだ」
「なるほどね」

◆現在、小中学生男子の将来なりたい職業ランキング1位はユーチューバーだ。では、親が子供に将来なって欲しくない職業ランキング1位は?  もちろんというか何と言うか、断トツでユーチューバーなのだ。では、逆に親が子供に将来なって欲しい職業ランキング1位は?  断トツで、子供がなりたいと言う職業になって欲しいとの事だ。そうなると、子供がユーチューバーになりたいと言えば、なって欲しくない職業でありながら、なって欲しい職業となる。だが、半分以上の親が反対するだろう。この矛盾は何だろう?  どこかに嘘がある。それは、子供がなりたいと言う職業になって欲しいと言うのが嘘なのだ。
結論:子供になって欲しい職業は、知り合いに自慢出来る職業。◆

  田辺の兄は高校生ながら顔を出さないユーチューバーをしている。顔を出さないから、今回のような犯罪紛いの企画で動画を作ろうとする。下層ユーチューバーになればなる程、ヤバい動画になりがちだ。もちろん、ヤバい動画になればなる程、視聴回数はアップする傾向にあるのだが、やり過ぎると警察に捕まる恐れまである。今回、たまたま刹那がターゲットになっただけで、結局のところ、田辺の兄からすれば誰でも良かったのだ。
  刹那が田辺を説得している様子を聞いていた、周りの1人が話に割って入ってきた。
「田辺!  どうなるか分かってるよな?」
「!!」
そう言って、有無を言わさず田辺に殴り掛かる人物がいる。郷原だ。
ガシッ!
  刹那は殴り掛かる郷原の右腕に自分の右腕を引っ掛け止めた。
「郷原待て!  田辺は反省しているし、兄貴に強要されている。殴るにしても兄貴の方だ」
「……」
「田辺、兄貴にこのような動画をアップするのを止めさせられるか?」
「う、うん。止めさせるよ」
「今回は見逃すけど、次は警察沙汰になるって言っときな」

  こうして、万引き事件は刹那と郷原の威圧によって解決した。
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