嫉妬が憧憬に変わる時

ジャメヴ

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小山と大曲

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「ちょうど良い感じのヤンキーが来たな」
「おっ、あの4人組やるか?」
「よし、4,000円だな」
「じゃあ、向かって1番右の奴な」
「了解」

  小山は徐に近付き、ヤンキー風4人組の1番右の男の左手を自分の左手で掴む。
「ん?」
それを見た大曲がその男の右手を自分の右手で掴むと、近くの細い路地に引きずり込んだ。
「何だお前ら!!」
2人の力で抑えられた男は抵抗する事が出来ず、ズルズルと引っ張られる。
「おいっ!  こらっ!  待てっ!」
その状況に気付いた仲間の3人が追いかける。
「何の真似だ?  喧嘩売ってるのか?」
「1人1,000円で勘弁してやるわ」
「はあ?  4対2だぞ?  馬鹿なのか?」
「1,000円出すのか?  出さないのか?」
「出す訳無いだろ!」
「そうか、じゃあ、遠慮無く……」
ガスッ……ゴッ……ゴッ……ゴッ……
  小山は大曲と引っ張ってきた1人の男をボコボコにする。
「きたねぇぞ!」
助けようと殴りかかってくる男のパンチをかわした小山は顎にカウンターを入れた。
ゴッ……バタッ

  小山と大曲は小学生の頃から空手をしている。だが、中学2年の時、他校との喧嘩が師匠にバレ、破門になっていた。2人とも勉強は、ほとんどして来なかったが、中学の授業ぐらいならある程度ついていけた様で、可もなく不可もない県立高校に2人揃って入学が決まっていた。入学式もまだの春休み、小遣い稼ぎにカツアゲをしている。
  普通、カツアゲと言えば、気の弱そうな人物を脅してお金を巻き上げるのだが、2人のやり方は違う。むしろ、カツアゲをする側に見える人物を狙う。何故か?  
  悪人を裁く為?  弱いものイジメが嫌い?  そういう美談では無い。殴って金を巻き上げた後、警察へ行かない人物を狙っているのだ。一方的なカツアゲだと、その後、警察へ行く可能性も高いが、相手が了承の上の喧嘩だと警察へ行く訳が無い。2人はそこまで空手が強い訳でも無かったが、素人相手であれば負ける筈が無い。素人は基本、大振りパンチしかして来ない。それをかわしてカウンターで直ぐ勝負ありだ。

「じゃあ、1,000円ずつな」
4人は殴られた上に1,000円を取られるという踏んだり蹴ったり……。とは言うものの、これだけの手間を掛けて、戦果が4,000円だけというのはどうなんだ?  とも思うが、所詮、高校生の小遣いと暇潰しと考えれば問題無いのだろう。それに、これ以上額を上げるとヤンキーと言えども警察へ行く奴も出てくるかも知れない。2人はこの程度が妥当と考えていた。
  その日は巻き上げた金で軽いショッピングをして帰った。
  しかし、翌週、予想していなかった事が起こる。
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