嫉妬が憧憬に変わる時

ジャメヴ

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入学式

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高校入学式

  小山と大曲は体育館へ入り、自分の席に着いた。式開始5分前、小山は先生に声を掛けられる。
「君、小山佑介君だね?」
「あ、はい」
「ちょっと来てくれるかな」
  小山はよく分からないまま、落とし物でもしたのかと教師についていく。すると、大曲も連れ出されていた。

(ま、まさか……。嘘だろ?)

  小山は大曲が連れ出されていくのを見て察した。先週のカツアゲの件だと……。カツアゲはこれからも続けていくつもりだったが、まだ1度しか行なっていない。

(あいつら、あのナリで恥も知らずに警察へ行ったと言うのか?  2対4だぞ?  信じられない…?。いや、そもそも、そうだとしても、俺達に絞りこめない筈だ)

  小山が体育館を出ると、いかにも体育教師ですという風体の、短髪の大男が睨み付けて来た。
「何で呼び出されたか分かるな」
「いえ、皆目……」
「とぼけるなよ。自白すれば処分は軽くなるぞ」
「スマホ持ってきてるとかですか?」

  小山は9割方カツアゲだと思っていたが、とりあえず1割に賭けた。大曲は何も言わず成り行きに任せていた。
「しらばっくれるなよ!!」
体育教師は恫喝した。だが、小山も大曲も表情を変えない。
「残念だな、カツアゲの件だよ」
「!!」
「身に覚えがあるな」
「……はい……」
小山は仕方なく認めた。
「そうか……お前達は1週間の停学処分だ!」
入学式に出る事も許されず、高校生として1秒も過ごす事無く停学処分……。
「お前ら中学ではソコソコ強かったらしいな。噂は聞いているぞ。ただ、喧嘩が強くても将来何の役にも立たんぞ。ボクシングとかで勝てるなら別だけどな」
「勝てるわ」
「よし、俺を殴り倒したら停学は無しにしてやろう」
「?!  本気なのか?」
「ああ、お前達がいかに井の中の蛙かってのを教えてやろう」
「俺は空手をやっていたぞ?」
「素人に毛が生えた程度だろ?  上には上がいるってのを教えてやるから早くかかってこいよ」
小山はそう言ったものの、190センチぐらいあるムキムキの体育教師を殴り倒せるとも思わなかった。
  実は、この体育教師は昔、レスリングのオリンピック強化選手だったのだ。
「やめとくわ。あんたに勝てそうに無いわ」
「何だったら勝てるんだ?  喧嘩は弱い、勉強も出来ない、学校は停学。将来どうするつもりなんだ?  金は欲しくないのか?」
「クズでも金持ちはいるわ。振り込め詐欺犯とかな」
「確かにクズには違いないが馬鹿では詐欺師にはなれない。あいつらは勉強をしている。警察のエリートの裏をかいた作戦を常に考えているんだ。お前らはそのクズ以下って事だよ。一生そのままなのか?  1週間勉強をしながら考えな」
そう告げると体育教師は去っていった。代わりに担任であろう教師が来て話す。
「とりあえず帰宅してください。直ぐに副担任が自宅へ行きますから」

(恐喝が警察沙汰になっているなら普通は少年院か……。そうなると停学は緩めの処分だわ。2対4なら警察に行く筈が無いと考えたのが甘かったか……。4人でつるんでいるなら、1人ぐらい何と無く一緒にヤンキーを装っているだけの奴が居たのかも知れない。失敗したわ……)

  実を言うと、小山の予想は全く当たっていない。先週のカツアゲをたまたま同じ中学出身の同級生の女生徒が見ていたのだ。大曲はともかくとして、その女生徒は小山の事を嫌っていた。同じクラスになった事も無いし、特に直接嫌な思いをした訳でも無かったが、素行の悪さだけで毛嫌いしていた。そして、中学3年当時の担任へ連絡した。女生徒の担任教師は、連絡を受けたからには対処しない訳にもいかず、高校へ連絡し、退学処分や警察への連絡はしないよう根回ししていたのだった。
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