嫉妬が憧憬に変わる時

ジャメヴ

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大学へ行くのに必要な能力

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午後6時
大曲邸

「いらっしゃい」「こんばんは」
大曲の兄が出迎えてくれた。
「リビングで話そうか」
大曲の両親は6年程前に離婚している。それから、母親1人で兄弟を育ててくれたのだが、元夫は1流企業に勤めており、養育費もしっかり払ってくれている為、金銭面では苦労していない。
  小山の家庭もほぼ同じ環境だった。7年程前に両親が離婚し、母親1人で1人っ子の小山を育ててきた。小山の父親はトラックドライバーで、大曲の父親程では無いが、養育費をしっかり払ってくれている。

「小山君だったね?」
「はい」
「今日のプリントはやったかい?」
「はい、一応全部」
「全部?  凄いな。それで、分からないところは無かった?」
「基本、教科書を見れば分かったんだけど英語は自信無いわ」
「数学は?」
「数学?  ああ、出来たと思う」
「なるほど……。君達大学行けるよ」
「えっ?!」
小山は驚きというか、拍子抜けというか、変な感情を抱いた。
「大学へ行くのに必要なものは何だと思う?」
「そりゃあ、頭の良さかな?」
「外れだな」
「えっ?!」
「頭の良さは必要無い」
「いやいや、必要でしょう?」
「もちろん、頭が良いに越した事は無いんだけど、悪くても問題無い。1流大学という条件なら頭が良くないと駄目だが、どこの大学でも良いならもっと必要な事がある」
「と言う事は、勉強時間?」
「おっ!  1つ正解。」
「1つ?」
「ああ。まあ、俺が考えていた正解は、やる気だ。やる気が無いと勉強時間を多く取れないからな。勉強時間が多ければ大抵の事は解決する。大学入試なんて、ほぼ暗記力の世界だ。君達は今日もらったプリントを全て終わらせている。恐らく6時間は掛かっただろう。やる気があるのは分かった」
「後は集中力?」
「集中力も、もちろん大事だけど、それはやる気に含まれている。集中力が無いと勉強時間が多くならないからな」
「じゃあ何だ?」
「数学力だよ」
「数学力?」
小山は意外な答えでピンとこない。
「ああ、数学以外は勉強時間が長ければ解決するんだけど、数学だけはそうもいかない。何10時間やっても出来ない奴は出来ないんだ。例えば、頭は良くないけど、暗記力と勉強時間が凄い人物が居たとする。仮にその人物が教科書全てを丸暗記出来たとしよう。すると、当然ほとんどのテストは満点に近い点数を取る事が出来るんだけど、数学だけは良い点にならない。極端な話をすると0点もありえる。暗記力でカバー出来るのは公式だけで、それをどう応用するかというのはセンスが必要になってくると言うことさ」
「なるほど」
「だけど、君達は勉強をしてこなかったくせに数学で遅れをとっていない。これは大きい。要するに、大学入試に必要な、やる気と数学力を君達は備えているんだよ」
「なるほど、さらにやる気が出てきたわ」
「じゃあ、やる気が出てきたところで、何をすれば良いかと言うと……」
「数学だな」
「いや、もちろん数学は大事で、絶対に遅れてはならない教科だ。だけど、そう言う意味じゃなく、大事なのは授業をちゃんと聞くことだ」
「授業?」
「ああ、高校生なら家の勉強時間よりも学校での授業時間の方が明らかに長くなる。その時間を有効に使えるかが重要だ」
「なるほど」
「だから、家ではしっかり睡眠時間を取る事。授業中に眠くなるとかは最低だ。そもそも、睡眠は脳の記憶の整理をしてくれるから、徹夜で勉強するなんかより効率が良い」
「分かった。じゃあ、授業中はセンコーの話をちゃんと聞いて、しっかりノートをとる事が大事なんだな」
「いや、ノートをとるのは駄目だ」
「は?」
「ノートをとっている時、君は先生の話を聞けているのか?  ダメな奴程しっかりノートをとる。あれは無意味な行為だ」
「そうか、聞く事に徹した方が良いんだな」
「それと、基本的に書く事は時間の無駄だ。そんな時間があったら10倍の情報を読める。書くのは提出用のプリントやテスト、あとは数学の計算ぐらいだ。何度も読む事が大事だ」
「分かった」
「直ぐにやるべき事は中学の数学と英語をしっかり理解する事。他の教科は後々何とでもなる」
「なるほど」
「とにかく、やる気を持続出来れば間違い無く大学に行けるよ」
「分かった」
その時、小山のスマホが鳴った。
「ああ、終わったからすぐ帰るわ。ああ、ああ、じゃあ」
小山は電話を切った。
「親がご飯だから帰って来いだとさ。兄さんありがとう。絶対合格してやるわ」
「ああ、頑張れ、楽しみにしているよ」
「大曲、当面の目標はお前に勝つ事だわ」
「ああ、俺も負ける気は無いよ」
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