嫉妬が憧憬に変わる時

ジャメヴ

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志望校

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  5月末、1学期中間テストの結果に小山は驚いた。

(学年9位!  いきなり?!  これはまた、やる気が出たわ)

  休み時間、大曲へ報告に行く。
「大曲!  どうだった?」
大曲は小山に成績を見せた。
「学年2位?!  いきなり?!  流石だわ」
「いや、これだけやって1位じゃないのかというショックの方が大きいよ。やっぱり上には上がいる」
「そ、そうか……。まあ、俺達は中間テスト狙いで勉強している訳じゃないからな」
「まあ、数学も英語も中学の遅れは取り戻せているから、これからは伸びるだけだ」
「そうだな……。次こそお前に勝つわ」
「ああ、負ける気は無いけどな」
小山は大曲と別れて思った。

(流石は大曲といったところだけど、俺に勝つチャンスは回ってくるのか?  全教科負けていたわ。そもそも、どの大学を狙うんだ?  今の実力じゃ無理だけど、最低常大は狙いたい)

  2人は高校3年生になり、大曲は常に学年トップを維持していた。小山の成績も上がり続け、2年最後の実力テストでは、学年3位になっていた。

『Where is your desired school ?』
  (志望校はどこにするんだ?)
『Saikyo university !』
  (西京大学だ!)
『really ?  Are you kidding ?』
  (嘘だろ?  冗談だよな?)
『I'm serious !  I want to go there with you.』
  (本気だ!  お前と一緒に通いたい)

  2人は連絡手段を英語にしていた。話したり聞いたりは無理だが、書いたり読んだりは出来る。

(うちの高校から西京大学に行った奴なんていないだろ……。そもそも、大曲だって、うちの高校じゃ断トツだが西京大学に行くには、まだ全然無理な筈だ……。結構勉強に時間を割いているが、大曲には1度も勝てていない。1教科も……。仕方無い、勉強時間を倍にするか。その代わり、大学に入ったら勉強なんか2度とするかよ)

小山は1日の勉強時間を最低2時間としていた。もちろん、それ以上の日がほとんどだったが最低でも2時間はするようにしていた。それは、大曲の兄から言われた、授業優先を実行していたからだった。これからは最低4時間になる。もう後に引けない。

◆心理学用語に『コンコルド効果』というものがある。基本的に、コンコルド効果という言葉はネガティブな意味で使われる。これ以上続けても無駄になる可能性が高いと思っていても、投資したからには取り返さないと、という心理状態の事を言うのだが、今回、小山が投資したのは勉強時間。決して無駄にはならない。だが、その心理状態になっていた。◆
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