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盗聴
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秀英は様々な人々の盗聴をしてきたが、博文のように何1つ秘密の無い人物は初めてだった。それが逆に興味をそそった。だが、何も起こらないことが面白い訳では無い。今日こそ何か起こるかもしれないと思うから面白いのだ。だが、初めての変わった出来事が殺人予告の脅迫状だなんて急展開過ぎる。秀英は疑問を抱いた。
(まさか、これは兄貴の自作自演か? いや、兄貴はそんな事をする奴じゃない。そもそも、そんなに頭が回るタイプでもない。兄貴は俺より物欲が無いから、俺を殺す動機と言えば……扱いか?)
秀英には思い当たる節があった。博文が兄であるにもかかわらず、納得がいかないと説教をするのだ。だが、博文は嫌そうな顔もせず、反抗をしてきた事も無い。盗聴した録音記録に1度たりとも、不満を呟いた事は無かった。秀英は会長職を辞任した頃に博文を執事として呼びつけた。博文は独身で、既に秀英の会社を定年退職しており、身の回りの事を全て1人で行なう。元々、若い頃に2流ホテルのコンシェルジュをしていて、特に苦にならなかった。手先が器用なので料理も得意。接客業の元プロなので秀英も心地よかったのだが、自分の生活スタイルを変えられたりすると説教をする事もあった。
秀英は動機から金銭面を外したのだが、実際はどうなのか分からない。秀英は博文に執事としての給料を渡していなかった。タダ働きさせていたという意味では無い。金が必要だと言えば、毎回100万円を渡していた。要するに、小遣い制みたいなものだった。秀英には腐る程お金があり、博文に渡すのを渋ったりはしない。
(もしかして、誰かに唆されたか? 怪しいのは唐沢か? 兄貴は最近、他に友人と連絡をとっていない。そもそも、俺がゴルフをしなくなって随分経つのに、唐沢はどうして兄貴に電話したんだ? 怪しい……)
博文に金銭目的の動機が無いとすると、周りの人物が怪しくなるのは当然だ。
(それに、このシグレって奴も怪しいな。だが、今までの内容からすると、シグレって奴は俺が目的ではなく、仕返しが目的のようだ。そうなると、やはり唐沢が俺の金銭目当てで……ん? シグレセツナ? どこかで聞いたような名前だな。俳優か何かで居たか?)
秀英は5年前に刹那と会っている。記憶の片隅には残っていたようだが、ハッキリとは思い出せなかった。無理もない、秀英が社長時代は毎日のように来客対応があり、中高生との対話企画の取材も数え切れないぐらいにあったのだから。
(まあ、兄貴が俺に脅迫文の話をすれば、解決するんだが、しなかった場合にどうするか……)
その時、秀英の電話が鳴った。博文からだ。
「もしもし、お疲れ様です」
「ああ、どうした?」
「今週末、別荘で過ごそうと思うのですが、いかがでしょうか?」
「急にどうした?」
「たまには2人で、別荘で過ごすのも良いのでは、と考えまして……」
「……」
「いかがでしょう?」
「待ってくれ、後で返事する」
「承知致しました。では、失礼します」
秀英は電話を切った。
(考えられない……。兄貴が俺を裏切るなんて……。いや、まだ確定した訳では無い。だが、脅迫状が届いた事を言わない理由なんてあるか? 俺を殺そうとしているなら、対策を練らないといけない。取り敢えず……)
(まさか、これは兄貴の自作自演か? いや、兄貴はそんな事をする奴じゃない。そもそも、そんなに頭が回るタイプでもない。兄貴は俺より物欲が無いから、俺を殺す動機と言えば……扱いか?)
秀英には思い当たる節があった。博文が兄であるにもかかわらず、納得がいかないと説教をするのだ。だが、博文は嫌そうな顔もせず、反抗をしてきた事も無い。盗聴した録音記録に1度たりとも、不満を呟いた事は無かった。秀英は会長職を辞任した頃に博文を執事として呼びつけた。博文は独身で、既に秀英の会社を定年退職しており、身の回りの事を全て1人で行なう。元々、若い頃に2流ホテルのコンシェルジュをしていて、特に苦にならなかった。手先が器用なので料理も得意。接客業の元プロなので秀英も心地よかったのだが、自分の生活スタイルを変えられたりすると説教をする事もあった。
秀英は動機から金銭面を外したのだが、実際はどうなのか分からない。秀英は博文に執事としての給料を渡していなかった。タダ働きさせていたという意味では無い。金が必要だと言えば、毎回100万円を渡していた。要するに、小遣い制みたいなものだった。秀英には腐る程お金があり、博文に渡すのを渋ったりはしない。
(もしかして、誰かに唆されたか? 怪しいのは唐沢か? 兄貴は最近、他に友人と連絡をとっていない。そもそも、俺がゴルフをしなくなって随分経つのに、唐沢はどうして兄貴に電話したんだ? 怪しい……)
博文に金銭目的の動機が無いとすると、周りの人物が怪しくなるのは当然だ。
(それに、このシグレって奴も怪しいな。だが、今までの内容からすると、シグレって奴は俺が目的ではなく、仕返しが目的のようだ。そうなると、やはり唐沢が俺の金銭目当てで……ん? シグレセツナ? どこかで聞いたような名前だな。俳優か何かで居たか?)
秀英は5年前に刹那と会っている。記憶の片隅には残っていたようだが、ハッキリとは思い出せなかった。無理もない、秀英が社長時代は毎日のように来客対応があり、中高生との対話企画の取材も数え切れないぐらいにあったのだから。
(まあ、兄貴が俺に脅迫文の話をすれば、解決するんだが、しなかった場合にどうするか……)
その時、秀英の電話が鳴った。博文からだ。
「もしもし、お疲れ様です」
「ああ、どうした?」
「今週末、別荘で過ごそうと思うのですが、いかがでしょうか?」
「急にどうした?」
「たまには2人で、別荘で過ごすのも良いのでは、と考えまして……」
「……」
「いかがでしょう?」
「待ってくれ、後で返事する」
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秀英は電話を切った。
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