47 / 53
睡眠薬
しおりを挟む
秀英は社長時代、世界一働いていたと言っても過言では無いくらい働いていた。睡眠時間をとれない日もあった。その影響なのか、休む時間があっても寝れない事があり疲労が蓄積していった。知り合いの医者に見てもらうと軽い睡眠障害だと言う。その時、2種類の睡眠薬を処方してもらった。睡眠導入剤と睡眠薬だ。睡眠導入剤とは睡眠薬の一部の薬の事で、睡眠効果が早く現れ、薬の血中濃度が早く低下するので副作用も少なく、寝つきが悪い人によく処方される。基本的には睡眠導入剤を使用しなさい、との事だった。その効果は覿面で短時間しか休みがとれない日でもスッと眠りにつけてスッキリ起きれた。
ある日、秀英は丸1日の休みが取れた。急いで寝る必要も無いので、睡眠導入剤は不必要だなと思ったが、ふと、睡眠薬が気になった。起床時にふらつきなどの副作用が出るかも知れないと先生が言っていたので、影響の無いその日、試しに飲んでみた。すると、想像以上の眠気が来て15時間も眠ってしまった。秀英は、この薬は強すぎるとして、その後、1度も使用しなかった。
だが、遂に使う時が来たのかも知れない。使用期限はとっくに過ぎていたが、全く効果が無くなると言う事も無いだろう。秀英はジップ付きの小袋に睡眠薬を2粒入れて粉々にした。
(後は……青い飲み物……いや、確かワインセラーにマルベックがあった筈だ。あれを持っていこう)
秀英の屋敷の地下にはワインセラーがあり、最高級のワインが100本以上ある。マルベックとは、かなり濃い赤ワインだ。世界一ポリフェノールが多い品種と言われている。何故、秀英がマルベックを選択したかと言うと、睡眠薬には犯罪防止の為に青い着色料が入っていて、多少、色付きの飲み物でも睡眠薬が入れば青く分かる様になっている。それをごまかすには、青い飲み物か、濃い色がついている飲み物がベストだ。マルベックは赤ワインながら、見た目はほぼ黒色、青い着色料が入っても分からない。
(後はロープがいるな。いざと言う時は、睡眠薬で眠らせてロープで縛り付けよう。しかし、どうして脅迫文なんて手の込んだ事を……。日曜の0時に殺す……。まさか……脅迫文を送り付けて来た人物が俺を殺したように見せかけようってのか?! これは、兄貴が考えれるような計画じゃない! 恐らく唐沢か他の奴の計画を兄貴にさせようって魂胆だ! いや、まだ分からない……。犯行予告時刻まではたっぷり時間がある)
秀英は執事に細めのロープを20メートル分購入してくるよう告げた。執事と言っても博文の事では無い。秀英の屋敷には、博文以外に斎藤と言う20代の執事がもう1人いて、洗濯や掃除担当の者が2人、料理人が1人いた。博文以外の者同士は交流があるが、博文は、年齢的に離れているせいか、他のお手伝いさんや斎藤との交流は、あまり無く、挨拶をする程度。
(どうする……。危険過ぎる……。俺が行かないと言えば済む話だが……。ただ、今回の件を先送りしたところで恐怖の時間が伸びるだけだ。こっちには犯行予告時間も分かってるんだ。そう簡単に殺されてたまるか!)
秀英は博文に電話を掛けた。
「もしもし、王、お疲れ様です」
「兄貴、別荘に行く事にしたよ」
「ありがとうございます。準備致します。時間は明日の昼食後で宜しいですか?」
「ああ、任せた」
金曜日午後1時
「王、それでは出掛けましょう」
「ああ」
執事斎藤が、後部座席のドアを開け、秀英は助手席に乗り込んだ。チラッと秀英が博文を見ると何か大きめの荷物をトランクに積んでいる。秀英は取り敢えず気付かないフリをした。博文は運転席に乗り込み車を発進させた。
別荘に着くと博文が荷物を運ぶのだが、秀英も自分の荷物は運ぶ。特に大事なのは睡眠薬とワインとロープだ。秀英はワインを自分の部屋の冷蔵庫に入れると、お気に入りのエアチェアーでくつろぎ、いつものように、スマホから伸びたイヤホンを耳につけ、博文の盗聴録音をチェックする。
5分後
コンコンコン
「はい」
ガチャ
「失礼します。少し外で作業をして参ります」
「分かった」
「では、ごゆっくり」
バタン
秀英は盗聴確認の続きをしようと思ったが、もっと大切な事に気がついた。
(兄貴が外に出るなら荷物の確認が出来る。本当に俺を殺そうと考えているなら、睡眠薬とか持ってきているかも知れない)
ガチャ……バタン
秀英は博文が玄関から出たのを確認し、博文の部屋に入った。秀英は博文のカバンを漁って、全ての荷物を調べるつもりだったが、いきなり核となる物を見つけてしまった!
(何だって?! これは……ピアノ線……)
ある日、秀英は丸1日の休みが取れた。急いで寝る必要も無いので、睡眠導入剤は不必要だなと思ったが、ふと、睡眠薬が気になった。起床時にふらつきなどの副作用が出るかも知れないと先生が言っていたので、影響の無いその日、試しに飲んでみた。すると、想像以上の眠気が来て15時間も眠ってしまった。秀英は、この薬は強すぎるとして、その後、1度も使用しなかった。
だが、遂に使う時が来たのかも知れない。使用期限はとっくに過ぎていたが、全く効果が無くなると言う事も無いだろう。秀英はジップ付きの小袋に睡眠薬を2粒入れて粉々にした。
(後は……青い飲み物……いや、確かワインセラーにマルベックがあった筈だ。あれを持っていこう)
秀英の屋敷の地下にはワインセラーがあり、最高級のワインが100本以上ある。マルベックとは、かなり濃い赤ワインだ。世界一ポリフェノールが多い品種と言われている。何故、秀英がマルベックを選択したかと言うと、睡眠薬には犯罪防止の為に青い着色料が入っていて、多少、色付きの飲み物でも睡眠薬が入れば青く分かる様になっている。それをごまかすには、青い飲み物か、濃い色がついている飲み物がベストだ。マルベックは赤ワインながら、見た目はほぼ黒色、青い着色料が入っても分からない。
(後はロープがいるな。いざと言う時は、睡眠薬で眠らせてロープで縛り付けよう。しかし、どうして脅迫文なんて手の込んだ事を……。日曜の0時に殺す……。まさか……脅迫文を送り付けて来た人物が俺を殺したように見せかけようってのか?! これは、兄貴が考えれるような計画じゃない! 恐らく唐沢か他の奴の計画を兄貴にさせようって魂胆だ! いや、まだ分からない……。犯行予告時刻まではたっぷり時間がある)
秀英は執事に細めのロープを20メートル分購入してくるよう告げた。執事と言っても博文の事では無い。秀英の屋敷には、博文以外に斎藤と言う20代の執事がもう1人いて、洗濯や掃除担当の者が2人、料理人が1人いた。博文以外の者同士は交流があるが、博文は、年齢的に離れているせいか、他のお手伝いさんや斎藤との交流は、あまり無く、挨拶をする程度。
(どうする……。危険過ぎる……。俺が行かないと言えば済む話だが……。ただ、今回の件を先送りしたところで恐怖の時間が伸びるだけだ。こっちには犯行予告時間も分かってるんだ。そう簡単に殺されてたまるか!)
秀英は博文に電話を掛けた。
「もしもし、王、お疲れ様です」
「兄貴、別荘に行く事にしたよ」
「ありがとうございます。準備致します。時間は明日の昼食後で宜しいですか?」
「ああ、任せた」
金曜日午後1時
「王、それでは出掛けましょう」
「ああ」
執事斎藤が、後部座席のドアを開け、秀英は助手席に乗り込んだ。チラッと秀英が博文を見ると何か大きめの荷物をトランクに積んでいる。秀英は取り敢えず気付かないフリをした。博文は運転席に乗り込み車を発進させた。
別荘に着くと博文が荷物を運ぶのだが、秀英も自分の荷物は運ぶ。特に大事なのは睡眠薬とワインとロープだ。秀英はワインを自分の部屋の冷蔵庫に入れると、お気に入りのエアチェアーでくつろぎ、いつものように、スマホから伸びたイヤホンを耳につけ、博文の盗聴録音をチェックする。
5分後
コンコンコン
「はい」
ガチャ
「失礼します。少し外で作業をして参ります」
「分かった」
「では、ごゆっくり」
バタン
秀英は盗聴確認の続きをしようと思ったが、もっと大切な事に気がついた。
(兄貴が外に出るなら荷物の確認が出来る。本当に俺を殺そうと考えているなら、睡眠薬とか持ってきているかも知れない)
ガチャ……バタン
秀英は博文が玄関から出たのを確認し、博文の部屋に入った。秀英は博文のカバンを漁って、全ての荷物を調べるつもりだったが、いきなり核となる物を見つけてしまった!
(何だって?! これは……ピアノ線……)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる