嫉妬が憧憬に変わる時

ジャメヴ

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カインコンプレックス

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午後2時半
永遠の自宅

  そういえば、塩見の占いって凄かったな。結果論かも知れないけど全て当たっていた。今後を占ってもらった方が良いかもな。

◆永遠は占いなんて信じないのだが、これだけ当たっていると興味も出る。だからと言って、今から占ってもらって言われた通りにするかというとそんな事は無い。ただ単に、当たった!  外れた!  と一喜一憂してみたかったのだ。占いの楽しみ方というのは、本来そういうものだろう。当たるも八卦当たらぬも八卦◆
  
  俺は塩見に電話を掛けた。
「もしもし。時雨か、どうした?」
「やあ、塩見に俺の今後を占ってもらおうと思ってな」
「占う?  何で俺が?!  あっ!  そうか、忘れてた」
「ん?  何を?」
「ネタバラシを忘れていたよ。あの占いはドッキリだ。ビックリしたか?」
「はあ?!  ドッキリになってないだろ?  どこでどうビックリするんだよ!」
「山田さんからボディーガードのバイトの依頼があって高級寿司を食べた事を当てたじゃないか」
「まあ、ある程度当たっていたな。ん?  俺、山田さんからの依頼って言ったか?」
「俺は山田さんから時雨の話を予め聞いていたんだよ。それでビックリさせる為にタロット占いとかいう、やった事も無い物を付け焼き刃で調べて、それっぽいカードをめくったかのように時雨に説明したんだ。全部ドッキリだったんだよ。不吉な事なんて起こらなかっただろ?」
「それが起こってるんだよ!  ボディーガードのバイトで殺人事件があったんだ!」
「何だって?!  時雨は大丈夫だったのか?」
「いやいや、ホント大変だったんだ。犯人扱いされてリンチされそうになるし……」
「そうか……それは悪い事をしたな。……いや、別に俺は悪くないか。実は、俺には占いの能力が備わっていたりして?」
「やるだけやってみろよ。来年には有名人かもしれないぞ」
「ほほ~い。やる気が出てきた!  早速タロットカードを買ってくるわ」
「ああ、頑張れよ。じゃあな」
「じゃあ」
俺は電話を切った。塩見は元々、永遠を脅かそうとして不吉な事が起こると言っただけで、別に予言した訳でも何でも無い。結果、そうなっただけだ。俺ももちろん分かっている。塩見への小さな仕返しだった。


警察署

  後輩警察官が先輩警察官に話す。
「王兄弟は2人とも結婚していないから、子供もいないし両親も既に亡くなっていますね」
「加害者の執事、兄博文に動機を聞くと、弟にこき使われて、道具のような扱いを受けた事が1番だと言っていたな。もちろん、遺産は全て博文に行くのだから、それも動機の大部分を占めるだろうけどな」
「まあ、弟が凄すぎますよ。出来の悪い兄と優秀な弟の典型的なパターンですもんね。嫉妬もしますよ」
「カインコンプレックスだな」
「カインコンプレックス?  何ですかそれ?」
「知らないか?  旧約聖書の話で、農夫の兄カインと羊飼いの弟アベルが神様に供え物をするんだが、神様は兄カインの穀物には目もくれずに弟アベルの羊を気に入ってしまったから、兄カインは嫉妬で弟アベルを殺してしまうって話だ」
「なるほど、兄が嫉妬で弟を殺す……。今回の事件に似ていますね」
「その後、神様がカインにアベルの行方を聞くとカインは知らないと答えるんだ。これが人間初の嘘とされている」
「先輩博学ですね。俺も明日、皆に偉そうに話してみます」
「いやいや、結構有名な話だから、どや顔で話すと恥をかくかも知れないぞ」
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