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さて、そんなこんなで俺と唯継は最近とっても仲良しである。
「何かいいことありました?」
いつもにこにこ顔の笹山くんもその顔をさらににこにこさせて機嫌が良い。なぜならそっけなかった教授が仕事帰りにおみあげ買ってきたり、向こうからデートにさそってくれたりと求愛行動をしてくれるようになったらしいのだ。
理由は唯継で、三人でバーガーショップに行ったあの日、偶然通りかかった教授が唯継と笹山くんのツーショットを見て『誰だ?あの驚くほどの美形は?』ってなって、心配したり、やきもち焼いたりして、笹山くんに積極的に気持ちを伝えるように変化したらしい。
うへへ、と俺たちは顔を見合わせて笑う。お互い順調というわけだ。
いつも通りの仕事終わり、唯継が迎えに来てくれた。あれ?今日は車がいつもの黒塗りの運転手付きの外車じゃない。唯継の休日用のカジュアルな車で、助手席に俺を座らせると運転席に唯継も乗り込みハンドルを握った。
「珍しいね」
「うん。今日はももに報告があって」
「なになに」
「帰ってからね」
唯継はほほえむと、なめらかな運転で車をマンションまで走らせた。
「え?」
到着した唯継のマンションで突然の発言に俺は引いている。
「だからね、辞めてきたんだ田宮文具」
「なんで?急に‥」
あまりの出来事に驚いてふらりとソファに腰掛ける俺。ネクタイを緩めながら唯継が落ち着いた態度で隣に座る。
「もっと、ももとの時間が欲しいんだ」
「もっとって‥、いつんとこ、かなり時間、融通してくれてただろ」
俺のお見送りにお迎え、一緒に取る休日、ついでに唯継は週2でジムにまで通ってる。ほぼ仕事はしてないボンボンだと思ってたら、唯継はいつのまにか無職のボンボンになってしまった。
「大丈夫。僕、会社は辞めたけど、まだ田宮の主要株主だし、不動産と株投資もしてるから」
働きつつそんなのもしてたのか、もしかして優秀なのか?唯継って。
「でも辞めるのはさすがに妹に止められたけどね」
ああ、前に聞いたできる妹さんか。ゆくゆくは田宮文具を継ぐのは妹さんだって言ってたな。唯継は俺の頬を手のひらで包むと甘く囁く。
「ももも図書館辞めてもいいんだよ?それでずっと一緒に二人で暮らそう?」
唯継の愛がつよい。
「やだよ。俺、何気にあの職場気に入ってるんだから。それに投資だけで生きてくってなったら生活が傾くかもしんないだろ」
そん時は俺が図書館アルバイターの稼ぎで唯継を食わせていくしかない。
「もも‥」
唯継がかわいいって言いたげに俺をきゅう、って抱きしめてきた。
もしそうなったら、俺たちは2Kのボロアパートとかで暮らすことになるな。そんなとこで生活する唯継を想像するとちょっと笑う。
「絶対、ももに苦労はさせないからね」
俺はメガネ越しに唯継を見つめた。唯継、俺のこと好き過ぎんな。でもさ。
「‥‥いつと一緒なら苦労してもいいよ」
「ももっ‥!」
俺だって一生童貞を唯継に捧げたのだ。だからそのでかい愛、しかと受け止めるよ。
「もし、貧乏暮らしになったら俺が毎日、塩おにぎり作ってやるからな」
俺がキメ顔でかっこいいセリフを吐くと唯継はその端正な顔を緩ませて俺を見てくる。
「ももの手料理大好き」
唯継可愛すぎる。見つめあってキスをした。唯継、仕事を辞めてまで俺のそばにいたいなんて、俺にのめり込みすぎてちょっとやばいけど、そんくらい俺のこと好きなんだろ?なら俺も一生ずっと一緒にいる。今、決めた。
「いつ、好き」
「もも、愛してる。もう絶対にももに誰もさわらせないからね。ずっともものそばにいる」
一生一緒にいるのはいいけど、四六時中ずっとそばにいるつもり?唯継、束縛激しすぎない?まさかそのために仕事辞めたわけじゃないよね?ちょっと引く。
ま、いっか。それが唯継の愛なんだろ。とりあえず明日も仕事だけど盛り上がってきたしやるか。
俺が腕を唯継の首に回し、脚を腰に絡めると、唯継もしあわせそうな顔で何度も何度もキスの雨を降らせてきた。
俺、唯継のでっかい愛を受け止められるくらいの漢になるからな。
翌日、へろへろの足腰で職場に向かう俺。唯継は休めと勧めてくれたけど、俺は今後の二人の未来のためにも働く。
「もも、かっこいい」
職場の図書館の近くで止めた車の窓から顔を出し、唯継がでれでれと俺をほめる。朝の光を浴びた唯継の美しい顔がさらにきらきらと目に眩しい。
車から降りた俺は満面の笑みで唯継を振り返った。
「だろ」
これからもずっと一緒にいような、唯継。
おわり
「何かいいことありました?」
いつもにこにこ顔の笹山くんもその顔をさらににこにこさせて機嫌が良い。なぜならそっけなかった教授が仕事帰りにおみあげ買ってきたり、向こうからデートにさそってくれたりと求愛行動をしてくれるようになったらしいのだ。
理由は唯継で、三人でバーガーショップに行ったあの日、偶然通りかかった教授が唯継と笹山くんのツーショットを見て『誰だ?あの驚くほどの美形は?』ってなって、心配したり、やきもち焼いたりして、笹山くんに積極的に気持ちを伝えるように変化したらしい。
うへへ、と俺たちは顔を見合わせて笑う。お互い順調というわけだ。
いつも通りの仕事終わり、唯継が迎えに来てくれた。あれ?今日は車がいつもの黒塗りの運転手付きの外車じゃない。唯継の休日用のカジュアルな車で、助手席に俺を座らせると運転席に唯継も乗り込みハンドルを握った。
「珍しいね」
「うん。今日はももに報告があって」
「なになに」
「帰ってからね」
唯継はほほえむと、なめらかな運転で車をマンションまで走らせた。
「え?」
到着した唯継のマンションで突然の発言に俺は引いている。
「だからね、辞めてきたんだ田宮文具」
「なんで?急に‥」
あまりの出来事に驚いてふらりとソファに腰掛ける俺。ネクタイを緩めながら唯継が落ち着いた態度で隣に座る。
「もっと、ももとの時間が欲しいんだ」
「もっとって‥、いつんとこ、かなり時間、融通してくれてただろ」
俺のお見送りにお迎え、一緒に取る休日、ついでに唯継は週2でジムにまで通ってる。ほぼ仕事はしてないボンボンだと思ってたら、唯継はいつのまにか無職のボンボンになってしまった。
「大丈夫。僕、会社は辞めたけど、まだ田宮の主要株主だし、不動産と株投資もしてるから」
働きつつそんなのもしてたのか、もしかして優秀なのか?唯継って。
「でも辞めるのはさすがに妹に止められたけどね」
ああ、前に聞いたできる妹さんか。ゆくゆくは田宮文具を継ぐのは妹さんだって言ってたな。唯継は俺の頬を手のひらで包むと甘く囁く。
「ももも図書館辞めてもいいんだよ?それでずっと一緒に二人で暮らそう?」
唯継の愛がつよい。
「やだよ。俺、何気にあの職場気に入ってるんだから。それに投資だけで生きてくってなったら生活が傾くかもしんないだろ」
そん時は俺が図書館アルバイターの稼ぎで唯継を食わせていくしかない。
「もも‥」
唯継がかわいいって言いたげに俺をきゅう、って抱きしめてきた。
もしそうなったら、俺たちは2Kのボロアパートとかで暮らすことになるな。そんなとこで生活する唯継を想像するとちょっと笑う。
「絶対、ももに苦労はさせないからね」
俺はメガネ越しに唯継を見つめた。唯継、俺のこと好き過ぎんな。でもさ。
「‥‥いつと一緒なら苦労してもいいよ」
「ももっ‥!」
俺だって一生童貞を唯継に捧げたのだ。だからそのでかい愛、しかと受け止めるよ。
「もし、貧乏暮らしになったら俺が毎日、塩おにぎり作ってやるからな」
俺がキメ顔でかっこいいセリフを吐くと唯継はその端正な顔を緩ませて俺を見てくる。
「ももの手料理大好き」
唯継可愛すぎる。見つめあってキスをした。唯継、仕事を辞めてまで俺のそばにいたいなんて、俺にのめり込みすぎてちょっとやばいけど、そんくらい俺のこと好きなんだろ?なら俺も一生ずっと一緒にいる。今、決めた。
「いつ、好き」
「もも、愛してる。もう絶対にももに誰もさわらせないからね。ずっともものそばにいる」
一生一緒にいるのはいいけど、四六時中ずっとそばにいるつもり?唯継、束縛激しすぎない?まさかそのために仕事辞めたわけじゃないよね?ちょっと引く。
ま、いっか。それが唯継の愛なんだろ。とりあえず明日も仕事だけど盛り上がってきたしやるか。
俺が腕を唯継の首に回し、脚を腰に絡めると、唯継もしあわせそうな顔で何度も何度もキスの雨を降らせてきた。
俺、唯継のでっかい愛を受け止められるくらいの漢になるからな。
翌日、へろへろの足腰で職場に向かう俺。唯継は休めと勧めてくれたけど、俺は今後の二人の未来のためにも働く。
「もも、かっこいい」
職場の図書館の近くで止めた車の窓から顔を出し、唯継がでれでれと俺をほめる。朝の光を浴びた唯継の美しい顔がさらにきらきらと目に眩しい。
車から降りた俺は満面の笑みで唯継を振り返った。
「だろ」
これからもずっと一緒にいような、唯継。
おわり
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