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制御装置
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一応に挨拶が終わると、タカ、シダカ、晟雅のほかに年長と思われる貫禄のある男性と、引っ込み思案と思われるうつむき加減の少女が残った。二人は、能力の扱い方にたけているようで、タカの能力をその目で確かめたいということだった。
「私は、制御装置を作らせていただいておりますので、同席させていただきます。装置を使わずとも制御できる方がもちろんいいのですが、何かあったときのために、必要だと思いますので」
そう言われても、タカはここのところ、能力を使うことはない。
「外すよ」
タカの耳にある、カフスに晟雅の手が当たる。タカは、その手を止めた。
「俺が外す」
こくん、と晟雅は頷き、タカの行動を尊重する。
「外して、俺はどうすればいい? 俺は、気にして能力を使うことはなかったが、この『力』を使ってみないことには、どうするか判別できないだろう?」
「それは、気にせずとも構いません。一応、私たちにもわかることはあります。ただ、可能であるのならば…」
男は周囲を見渡して、壁一面にある、銅板を指して言った。
「あれに力を全力でぶつけてください。全力でなくとも構いませんが、その方が、対処方法が分かりやすいので」
タカは、こくん、と頷き、カフスを外す。
「タカ」
シダカが手を差し出せば、タカはその平にカフスを預けた。タカは部屋の中心部から、銅板を狙う。シダカは、カフスを大事に手に取って、タカの後ろ、部屋の一番端に下がった。男は左に、少女は右に。タカの左右両端に壁際にたつ。晟雅は、斜め右後ろに立っている。
タカは、眼を閉じ呼吸を整えた。十秒ほどたっただろうか。不意に、左手を壁に向かって、差し出した。
男と少女は目を細め、彼の様子をうかがう。男はわずかに口角をあげた。少女は、淡々とその様子を含め見守った。
―――――ドォンッ!
地響きも起こす爆音が上がった。
互いを認識できないほどの土煙。
パチパチパチパチ、乾いた音が響いた。
「お見事」
よく響く声だった。男の低く笑う声が聞こえた。
――よく響く声? いや。これは。
「ふふふ、現状、しっかり理解できているようで何よりです。殿下」
男性は、左から斜め右前に立っていた。なぜなら。
タカから見て、左側の建物が崩壊していた。
「もし、私があそこを移動しないままでしたら、粉砕されていたでしょう」
「…………」
「あなたは、よく見えてるのですね」
シダカは、後ろに立ったまま、淡々と男に話しかけた。
「そうですね。殿下の左手から湧き出る力が見えたので。それに応じて動いたのですが、遅かったようです」
「?」
タカは首を傾げた。
「そうですね」
シダカは頷いて、男が立っていたところへ歩を進めた。
「それは…」
あなたの帽子ですね、とシダカが土埃を払い、男へと渡した。
「ありがとう」
にっこり笑って、男は帽子をかぶる。
「見えたかい?」
黙っている少女に、晟雅が問うた。
「はい、王子。あなたより厄介です」
「オレ、やっかいだったけ?」
「はい」
淡々と、少女は頷いた。
「わかっているのに聞くのは、悪趣味です」
「そうだぞぉ」
「うるさい、おっさん」
「おっさんゆうな。そんなに歳食ってる憶えねぇんだけど」
ケタケタ笑いながら、男は、顎で示す。
「少なくとも、そこにいるやつよりはなぁ」
砂埃から現れた影は。
「私と比べてどうするんですか」
ため息交じりに応えた。
「!カミーリャ!」
「あなたへの監視が行き届いていないとさんざん怒られる私の身にもなってほしいものです」
「あの時の………」
「ご無沙汰しております。挨拶が遅れまして、申し訳ありません。タカ・ライスト殿、シダカ・ユルスナール殿。便宜上、カミーリャと呼びください」
軽く会釈をしたオレンジががった赤髪と黒曜石のような黒い瞳を持つ青年は、以前、クレオード国を訪れた際に出会った青年の一人だ。
「こちらこそ。よろしく頼みます」
「私に、そのような物言いは不要です。そもそも、そこいいるバカ王子より無下にしていい存在ですから」
「あ、いや、……えっと、」
どう答えたものか、とタカが言葉を探しているうちに。
「お気になさらず」
ぴしゃり、と言葉をくくった。
「お目付け役が来るたぁ、なんかあったか」
男が聞くと。
「もともと、私も同席する予定でした。ただ、私にも用があったんで、同席するのに遅れた、というだけの話です」
「そうだったか」
男が首を傾げるが、晟雅は承知だったようだ。
「用終わった?」
「ええ」
カミーリャは、晟雅とタカを見て頷いた。
「それにしても、王子に比べ、大きくなったものです」
「………そこ?」
最後にお会いしてから、数年しかたっていませんが、とカミーリャは続けた。
「晟雅もそんなに小さな部類じゃないと思うが」
「………そうですか」
「どれだけでかくなりゃ満足なんだよ」
「別に、どれくらいでも構いませんが」
興味のなさそうに、言葉を紡いでる様子だ。晟雅はため息をついた。
「で、どうだ? つくれそうか」
「ああ、作って見せますよ。王子」
「けど、不完全」
「そうか」
「わかっているんだろう?」
「あの時の力とは違う。空間が開くほどの力じゃない」
「そうだな」
「怖いか」
男が、タカに尋ねた。
「力を使うのが、怖いですか。殿下」
その問いに、タカはしばらく考えて。
「いつも考える前にこの力を使っていたから。何が起こるかわからないから」
――怖いですよ。覚悟はしていても。
タカは、誰にも目を合わせずに、ぽつりと呟いた。
「私は、そんなに力がないんでね。そう言う感情は持ったことがないですが」
男は、考えるように、天を仰いだ。
「力を使って感謝されたときにもっと使いたいと思ったもんです」
まぁ、あくまで俺の感情なんでね。殿下と同じになるとは思いませんが。
「ある程度の力のコントロールは、そこにいるバカ王子に任せますが、いつでもお呼びください。
いままであなたの耳にあったモンより上等なものを用意しておきますんで」
「ワタシも、戻ります。殿下。王子」
少女は頭を軽く下げて、退席した。
「晟雅王子」
ずっと黙っていたシダカが口を開いた。
「何?」
「二人は、制御装置を作るのですか」
「うん」
「コントロールはあなたの指導と、制御装置で行う、ということですか」
「そうだよ」
「……………」
沈黙したシダカに、タカは。
「今までのが、抑止装置だったからか」
「そう。万全な体制でやらないといけないから。タカも、ほかの人も安全じゃなきゃね」
タカは軽く頷いて、自分が破壊した壁を見据えた。
「私は、制御装置を作らせていただいておりますので、同席させていただきます。装置を使わずとも制御できる方がもちろんいいのですが、何かあったときのために、必要だと思いますので」
そう言われても、タカはここのところ、能力を使うことはない。
「外すよ」
タカの耳にある、カフスに晟雅の手が当たる。タカは、その手を止めた。
「俺が外す」
こくん、と晟雅は頷き、タカの行動を尊重する。
「外して、俺はどうすればいい? 俺は、気にして能力を使うことはなかったが、この『力』を使ってみないことには、どうするか判別できないだろう?」
「それは、気にせずとも構いません。一応、私たちにもわかることはあります。ただ、可能であるのならば…」
男は周囲を見渡して、壁一面にある、銅板を指して言った。
「あれに力を全力でぶつけてください。全力でなくとも構いませんが、その方が、対処方法が分かりやすいので」
タカは、こくん、と頷き、カフスを外す。
「タカ」
シダカが手を差し出せば、タカはその平にカフスを預けた。タカは部屋の中心部から、銅板を狙う。シダカは、カフスを大事に手に取って、タカの後ろ、部屋の一番端に下がった。男は左に、少女は右に。タカの左右両端に壁際にたつ。晟雅は、斜め右後ろに立っている。
タカは、眼を閉じ呼吸を整えた。十秒ほどたっただろうか。不意に、左手を壁に向かって、差し出した。
男と少女は目を細め、彼の様子をうかがう。男はわずかに口角をあげた。少女は、淡々とその様子を含め見守った。
―――――ドォンッ!
地響きも起こす爆音が上がった。
互いを認識できないほどの土煙。
パチパチパチパチ、乾いた音が響いた。
「お見事」
よく響く声だった。男の低く笑う声が聞こえた。
――よく響く声? いや。これは。
「ふふふ、現状、しっかり理解できているようで何よりです。殿下」
男性は、左から斜め右前に立っていた。なぜなら。
タカから見て、左側の建物が崩壊していた。
「もし、私があそこを移動しないままでしたら、粉砕されていたでしょう」
「…………」
「あなたは、よく見えてるのですね」
シダカは、後ろに立ったまま、淡々と男に話しかけた。
「そうですね。殿下の左手から湧き出る力が見えたので。それに応じて動いたのですが、遅かったようです」
「?」
タカは首を傾げた。
「そうですね」
シダカは頷いて、男が立っていたところへ歩を進めた。
「それは…」
あなたの帽子ですね、とシダカが土埃を払い、男へと渡した。
「ありがとう」
にっこり笑って、男は帽子をかぶる。
「見えたかい?」
黙っている少女に、晟雅が問うた。
「はい、王子。あなたより厄介です」
「オレ、やっかいだったけ?」
「はい」
淡々と、少女は頷いた。
「わかっているのに聞くのは、悪趣味です」
「そうだぞぉ」
「うるさい、おっさん」
「おっさんゆうな。そんなに歳食ってる憶えねぇんだけど」
ケタケタ笑いながら、男は、顎で示す。
「少なくとも、そこにいるやつよりはなぁ」
砂埃から現れた影は。
「私と比べてどうするんですか」
ため息交じりに応えた。
「!カミーリャ!」
「あなたへの監視が行き届いていないとさんざん怒られる私の身にもなってほしいものです」
「あの時の………」
「ご無沙汰しております。挨拶が遅れまして、申し訳ありません。タカ・ライスト殿、シダカ・ユルスナール殿。便宜上、カミーリャと呼びください」
軽く会釈をしたオレンジががった赤髪と黒曜石のような黒い瞳を持つ青年は、以前、クレオード国を訪れた際に出会った青年の一人だ。
「こちらこそ。よろしく頼みます」
「私に、そのような物言いは不要です。そもそも、そこいいるバカ王子より無下にしていい存在ですから」
「あ、いや、……えっと、」
どう答えたものか、とタカが言葉を探しているうちに。
「お気になさらず」
ぴしゃり、と言葉をくくった。
「お目付け役が来るたぁ、なんかあったか」
男が聞くと。
「もともと、私も同席する予定でした。ただ、私にも用があったんで、同席するのに遅れた、というだけの話です」
「そうだったか」
男が首を傾げるが、晟雅は承知だったようだ。
「用終わった?」
「ええ」
カミーリャは、晟雅とタカを見て頷いた。
「それにしても、王子に比べ、大きくなったものです」
「………そこ?」
最後にお会いしてから、数年しかたっていませんが、とカミーリャは続けた。
「晟雅もそんなに小さな部類じゃないと思うが」
「………そうですか」
「どれだけでかくなりゃ満足なんだよ」
「別に、どれくらいでも構いませんが」
興味のなさそうに、言葉を紡いでる様子だ。晟雅はため息をついた。
「で、どうだ? つくれそうか」
「ああ、作って見せますよ。王子」
「けど、不完全」
「そうか」
「わかっているんだろう?」
「あの時の力とは違う。空間が開くほどの力じゃない」
「そうだな」
「怖いか」
男が、タカに尋ねた。
「力を使うのが、怖いですか。殿下」
その問いに、タカはしばらく考えて。
「いつも考える前にこの力を使っていたから。何が起こるかわからないから」
――怖いですよ。覚悟はしていても。
タカは、誰にも目を合わせずに、ぽつりと呟いた。
「私は、そんなに力がないんでね。そう言う感情は持ったことがないですが」
男は、考えるように、天を仰いだ。
「力を使って感謝されたときにもっと使いたいと思ったもんです」
まぁ、あくまで俺の感情なんでね。殿下と同じになるとは思いませんが。
「ある程度の力のコントロールは、そこにいるバカ王子に任せますが、いつでもお呼びください。
いままであなたの耳にあったモンより上等なものを用意しておきますんで」
「ワタシも、戻ります。殿下。王子」
少女は頭を軽く下げて、退席した。
「晟雅王子」
ずっと黙っていたシダカが口を開いた。
「何?」
「二人は、制御装置を作るのですか」
「うん」
「コントロールはあなたの指導と、制御装置で行う、ということですか」
「そうだよ」
「……………」
沈黙したシダカに、タカは。
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