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ヘビに睨まれたカエルの様に、身体が全く動かせなくなった。
頭は目の前にある光景の理解を拒み、足はスマートフォンのバイブレーション機能のように震える。
呼吸する事すら難しい状況下、首無し騎士が一歩だけ前に踏み出すと。
最弱狩人の精神は呆気なく限界を迎え、生存本能が動かない身体に強く鞭を打った。
「う、うわあああああああああああああああああああああああああああああ!?」
この上なく情けない叫び声を上げながら、その場から全力で逃走する。
ヤバいヤバいヤバいッ! どうして第一エリアに、第三エリアのモンスターがいるんだ!?
モンスターのエリア移動は、ごくまれにだが起きる事はある。だけどそれは、エリア同士が隣接している境目で起きる現象。
一つのエリアを越えて遠く離れたエリアに大移動するのは、この世界で得た知識では一つしか無い。
でもその特殊なケースも、突然起きるのではなくちゃんと前触れがある。
ソロ活動は危険が多すぎるので、そういった情報は必ず事前に調べるようにしている。
少なくともこんな単体で、大移動が発生する重要な情報は自分の記憶の中に一つもなかった。
有り得ない事態に動揺しながら、それでも冷静に出た答えは一つだけ。
Eランクのモンスターに、最弱の〈スキルゼロ〉である自分は絶対に勝てない。
二次元の主人公とかなら、勇気を振り絞って立ち向かう場面。
だけどステータスは貧弱で肝心のスキルが無い上に、手にしているGランク用の剣ではあの鎧に傷一つ付けられない。
鎧を切らなくても倒す方法はあるが、今のステータスで実行するのは極めて難しい。
現在所有する手札では、何をどう足掻いても勝てるカードは一つもない。
唯一取れる行動は、この場からサンクチュアリ国まで全力で逃げてDランク以上の狩人に助けを求める事。
悔しいけど、それが今の自分にできる最善の選択だった。
幸いにも〈デュラハン〉は、重い甲冑のせいで足が遅い欠点がある。
加えて此処は第一エリア、奴の本来いる第三エリアに比べたら負の魔力はかなり薄い。
人間で例えるなら酸素が極限まで薄い状況下で、ステータスが大幅に弱体化している可能性が高い
例え最底辺のGランクでも、走り慣れた山という舞台をフル活用したらギリギリ追いつかれないはず。
だから気を付けなければいけないのは、絶対に転んだりしてはいけない事。
足を止めたら、その時点で追いつかれてしまうから。
一秒間の遅れが即死に繋がる、命がけの鬼ごっこ。
この半年間で慣れた山道を、足元に気を付けながら迷わずに走り続ける。
すると〈デュラハン〉に関する自分の予想は、どうやら的中したらしい。
追い掛けて来る首無し騎士の足音は、後ろの方で徐々にだが遠ざかっていく。
(このままなら行ける! ヤツから逃げ切れるぞ!)
僅かな希望を見出し、〈デュラハン〉との距離を離す事に全力を注いだ。
ところがやはり物事は、自分の思い通りにならないようにできているらしい。
走っていたら前方に、軽装備のFランクっぽい耳長の妖精族の男女が四人。
更に非武装の新人っぽい仮面を付けた黒髪に白のメッシュの妖精少女が一人、呑気にピクニックみたいなノリで歩いていた。
「マジかよ!」
こんな時に限って、ギルドの初心者指導と鉢会うとは。
頭の中をよぎったのは、半年前に誰のサポートも得られず一人で狩りに出かけた苦々しい思い出。
彼等の会談しながら歩く羨ましい光景に、苦々しいトラウマが大いに刺激される。
けれどモンスターを連れてきてしまった責任がある為、未だに気付いていない彼等に危険を知らせた。
「オマエ等、今すぐ逃げろ! 〈デュラハン〉が来るぞっ!」
大声で叫ぶと、談笑をしていた四人が一斉に此方を見る。一瞬だけ「〈スキルゼロ〉じゃないか」という嫌な顔をされた。
彼らは疑うような目で、後方から迫る首無し騎士の姿を確認するとその目を大きく見張った。
気付いたか、ウソじゃないんだ。さっさとその子を連れて逃げてくれ。
彼等の迅速な行動を心の底から願うのだが、ここでなんと自分にとって想定外の事態が起きた。
「「「「デュ、デュラハンだああああああああああああああああああああああああ!!」」」」
「え? 皆さん、どうしたんですか?」
第三エリアの怪物の圧に四人が慌てて逃げ出すと、何も知らない新人が取り残される形となった。
せめて逃げた四人の内で誰か一人が、彼女を抱えて逃げると思ったのになんて事だ。
困惑した様子で彼女は、逃げ去った四人の背中と此方を交互に見る。
走りながら自分は、この上ない最悪の事態に悪態を吐いた。
残された妖精の少女は右往左往した後に、迫って来る首無し騎士の姿を見る。
彼女は重圧な殺意を纏う〈デュラハン〉見て、恐怖で完全に固まってしまった。
「ちくしょう!」
非常にまずい状況となった。この危機を脱すのにどうしたら良いのか考えなければ。
コイツを連れたまま違う道に進路を変えるか。いや、もしもついてこなかったら、その時点であの少女は確実に死んでしまう。
どうする、どうするどうするどうする!?
タイムリミットは、もう残りわずかしかない。
頭の中で色々と考えるけど、この状況で残された道は一つしかなかった。
しかし自らの命を危険に晒してまで、彼女を助けるメリットは全くないのではないか。
内なる闇の自分が、少女をおとりにして確実に逃げろと囁いて来るが。
──女の子をおとりにするなんて、絶対に論外!
俺は内なる囁きを無視して、彼女を助ける決意をした。
勢いがつき過ぎて反転する間もなく、少女の近くまでやって来る。
背後の〈デュラハン〉は、やはり最も弱い彼女にターゲットを変えていた。
殺気を向ける対象が自分から少女に変更されると、
「おおぉッ!!」
急ブレーキを掛けた後に、最小限の動きで最速の反転をした。
同時に左腰に下げている鞘から抜き放った長剣で、奴が降り下ろした斬撃の側面を狙い全力で打ち抜いた。
耳が痛くなる重圧な金属の衝突音が、山の中で大きく響き渡る。
敵が降り下ろした魔剣が、彼女を切り裂く悲劇は起きなかった。その代わりに、
重たい、両手がもげる。まるで全速力で走る自働車を、正面から受け止めるような大きい衝撃に顔が歪む。
歯を食いしばり諦めずに、両手で握った剣を衝突させ続けると、
「ハァッ!」
気合だけでなんとか斬撃の軌道を、ずらす事に成功した。
首無し騎士の魔剣は、真横の空間を切り裂いて地面に深く突き刺さった。その間に羽毛の様に軽い少女を片手で抱え、この場から大きく跳躍をする。少し離れた位置に着地したら、彼女を離して〈デュラハン〉の前に立ち塞がった。
「こいつは俺が止める、君はその間に来た道を全力で戻れ!」
「で、でも……」
小さな妖精少女は、少しだけ躊躇うように此方を見る。
俺が「早く行け!」と𠮟り飛ばすと、びっくりした彼女は走ってこの場から慌てて離れた。
シチュエーション的には、自分が待ち望んでいた美少女の救出劇。
目の前にいるのは、逆立ちをしても勝ち目のない格上モンスター。
だけど、ここで逃げる選択は許されない。
今逃げている彼女がサンクチュアリ国に入るまで、自分はここで〈デュラハン〉を足止めしなければいけないのだから。
ハハハ、これは死んだかな……。
苦笑いしながら、最近買い換えたばかりの剣を構える。
魔剣と一回だけ刃を交えただけなのに、その剣身には既に亀裂が生じていた。
次の攻撃を受けたら、確実に相棒は折れてしまうだろう。
「でも女の子を助けて死ねるなら、ムダ死によりはマシか」
覚悟を決めて、目の前にいる過去最強の難敵を見据える。
そのタイミングで放れた位置にいた〈デュラハン〉が、地面を蹴って間合いを詰めて来る。
出だしの動きは辛うじて目で追えた。
攻撃するモーションを見極め、冷静に横にステップ回避しようとした俺は、
──いきなり急加速した敵の刃に、あっさり胸を貫かれた。
頭は目の前にある光景の理解を拒み、足はスマートフォンのバイブレーション機能のように震える。
呼吸する事すら難しい状況下、首無し騎士が一歩だけ前に踏み出すと。
最弱狩人の精神は呆気なく限界を迎え、生存本能が動かない身体に強く鞭を打った。
「う、うわあああああああああああああああああああああああああああああ!?」
この上なく情けない叫び声を上げながら、その場から全力で逃走する。
ヤバいヤバいヤバいッ! どうして第一エリアに、第三エリアのモンスターがいるんだ!?
モンスターのエリア移動は、ごくまれにだが起きる事はある。だけどそれは、エリア同士が隣接している境目で起きる現象。
一つのエリアを越えて遠く離れたエリアに大移動するのは、この世界で得た知識では一つしか無い。
でもその特殊なケースも、突然起きるのではなくちゃんと前触れがある。
ソロ活動は危険が多すぎるので、そういった情報は必ず事前に調べるようにしている。
少なくともこんな単体で、大移動が発生する重要な情報は自分の記憶の中に一つもなかった。
有り得ない事態に動揺しながら、それでも冷静に出た答えは一つだけ。
Eランクのモンスターに、最弱の〈スキルゼロ〉である自分は絶対に勝てない。
二次元の主人公とかなら、勇気を振り絞って立ち向かう場面。
だけどステータスは貧弱で肝心のスキルが無い上に、手にしているGランク用の剣ではあの鎧に傷一つ付けられない。
鎧を切らなくても倒す方法はあるが、今のステータスで実行するのは極めて難しい。
現在所有する手札では、何をどう足掻いても勝てるカードは一つもない。
唯一取れる行動は、この場からサンクチュアリ国まで全力で逃げてDランク以上の狩人に助けを求める事。
悔しいけど、それが今の自分にできる最善の選択だった。
幸いにも〈デュラハン〉は、重い甲冑のせいで足が遅い欠点がある。
加えて此処は第一エリア、奴の本来いる第三エリアに比べたら負の魔力はかなり薄い。
人間で例えるなら酸素が極限まで薄い状況下で、ステータスが大幅に弱体化している可能性が高い
例え最底辺のGランクでも、走り慣れた山という舞台をフル活用したらギリギリ追いつかれないはず。
だから気を付けなければいけないのは、絶対に転んだりしてはいけない事。
足を止めたら、その時点で追いつかれてしまうから。
一秒間の遅れが即死に繋がる、命がけの鬼ごっこ。
この半年間で慣れた山道を、足元に気を付けながら迷わずに走り続ける。
すると〈デュラハン〉に関する自分の予想は、どうやら的中したらしい。
追い掛けて来る首無し騎士の足音は、後ろの方で徐々にだが遠ざかっていく。
(このままなら行ける! ヤツから逃げ切れるぞ!)
僅かな希望を見出し、〈デュラハン〉との距離を離す事に全力を注いだ。
ところがやはり物事は、自分の思い通りにならないようにできているらしい。
走っていたら前方に、軽装備のFランクっぽい耳長の妖精族の男女が四人。
更に非武装の新人っぽい仮面を付けた黒髪に白のメッシュの妖精少女が一人、呑気にピクニックみたいなノリで歩いていた。
「マジかよ!」
こんな時に限って、ギルドの初心者指導と鉢会うとは。
頭の中をよぎったのは、半年前に誰のサポートも得られず一人で狩りに出かけた苦々しい思い出。
彼等の会談しながら歩く羨ましい光景に、苦々しいトラウマが大いに刺激される。
けれどモンスターを連れてきてしまった責任がある為、未だに気付いていない彼等に危険を知らせた。
「オマエ等、今すぐ逃げろ! 〈デュラハン〉が来るぞっ!」
大声で叫ぶと、談笑をしていた四人が一斉に此方を見る。一瞬だけ「〈スキルゼロ〉じゃないか」という嫌な顔をされた。
彼らは疑うような目で、後方から迫る首無し騎士の姿を確認するとその目を大きく見張った。
気付いたか、ウソじゃないんだ。さっさとその子を連れて逃げてくれ。
彼等の迅速な行動を心の底から願うのだが、ここでなんと自分にとって想定外の事態が起きた。
「「「「デュ、デュラハンだああああああああああああああああああああああああ!!」」」」
「え? 皆さん、どうしたんですか?」
第三エリアの怪物の圧に四人が慌てて逃げ出すと、何も知らない新人が取り残される形となった。
せめて逃げた四人の内で誰か一人が、彼女を抱えて逃げると思ったのになんて事だ。
困惑した様子で彼女は、逃げ去った四人の背中と此方を交互に見る。
走りながら自分は、この上ない最悪の事態に悪態を吐いた。
残された妖精の少女は右往左往した後に、迫って来る首無し騎士の姿を見る。
彼女は重圧な殺意を纏う〈デュラハン〉見て、恐怖で完全に固まってしまった。
「ちくしょう!」
非常にまずい状況となった。この危機を脱すのにどうしたら良いのか考えなければ。
コイツを連れたまま違う道に進路を変えるか。いや、もしもついてこなかったら、その時点であの少女は確実に死んでしまう。
どうする、どうするどうするどうする!?
タイムリミットは、もう残りわずかしかない。
頭の中で色々と考えるけど、この状況で残された道は一つしかなかった。
しかし自らの命を危険に晒してまで、彼女を助けるメリットは全くないのではないか。
内なる闇の自分が、少女をおとりにして確実に逃げろと囁いて来るが。
──女の子をおとりにするなんて、絶対に論外!
俺は内なる囁きを無視して、彼女を助ける決意をした。
勢いがつき過ぎて反転する間もなく、少女の近くまでやって来る。
背後の〈デュラハン〉は、やはり最も弱い彼女にターゲットを変えていた。
殺気を向ける対象が自分から少女に変更されると、
「おおぉッ!!」
急ブレーキを掛けた後に、最小限の動きで最速の反転をした。
同時に左腰に下げている鞘から抜き放った長剣で、奴が降り下ろした斬撃の側面を狙い全力で打ち抜いた。
耳が痛くなる重圧な金属の衝突音が、山の中で大きく響き渡る。
敵が降り下ろした魔剣が、彼女を切り裂く悲劇は起きなかった。その代わりに、
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歯を食いしばり諦めずに、両手で握った剣を衝突させ続けると、
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気合だけでなんとか斬撃の軌道を、ずらす事に成功した。
首無し騎士の魔剣は、真横の空間を切り裂いて地面に深く突き刺さった。その間に羽毛の様に軽い少女を片手で抱え、この場から大きく跳躍をする。少し離れた位置に着地したら、彼女を離して〈デュラハン〉の前に立ち塞がった。
「こいつは俺が止める、君はその間に来た道を全力で戻れ!」
「で、でも……」
小さな妖精少女は、少しだけ躊躇うように此方を見る。
俺が「早く行け!」と𠮟り飛ばすと、びっくりした彼女は走ってこの場から慌てて離れた。
シチュエーション的には、自分が待ち望んでいた美少女の救出劇。
目の前にいるのは、逆立ちをしても勝ち目のない格上モンスター。
だけど、ここで逃げる選択は許されない。
今逃げている彼女がサンクチュアリ国に入るまで、自分はここで〈デュラハン〉を足止めしなければいけないのだから。
ハハハ、これは死んだかな……。
苦笑いしながら、最近買い換えたばかりの剣を構える。
魔剣と一回だけ刃を交えただけなのに、その剣身には既に亀裂が生じていた。
次の攻撃を受けたら、確実に相棒は折れてしまうだろう。
「でも女の子を助けて死ねるなら、ムダ死によりはマシか」
覚悟を決めて、目の前にいる過去最強の難敵を見据える。
そのタイミングで放れた位置にいた〈デュラハン〉が、地面を蹴って間合いを詰めて来る。
出だしの動きは辛うじて目で追えた。
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