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第二章 闘技大会編 前編

第三十一話 メルザの真価

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 メルザは怒っていた。情けない主人である姿を見せた自分に。

 メルザは悲しんでいた。ルインが一生懸命引き付けて
いるのに何もできない自分に。

 メルザは呆れていた。動かない自分の身体に。

 そしてメルザは今叫んでいた。お腹の奥底からルインを助けるために! 

 今自分ができることをやろう。
 絶対にルインは死なせない。
 もうあの時みたいに何もできない自分じゃない。

 ライラロ師匠に教わったことを全部出そうと。 
 悲しみを乗り越え、恐怖を乗り越えメルザは二本の足を地につけて。

「主として権限を行使。
火、氷、風、土の斗。改元せし4つの理。
燃流出乃モルディナ氷流出乃コルディナ風流出乃フルディナ土流出乃ドルディナを我が元に」

 メルザは右手で円を描きながら詠唱を始める。
 本来詠唱が不要な幻術だが、招来術といういわば召喚術は
イメージだけでこなせない。
 幻術と魔術双方の織り成す秘術である。

 
四元素のエレメンタルが出現してメルザを囲うように現れた。
 ライラロ師匠が言っていたのをふと思い出す


「いい? 私が教えるのを習得するのは資質もいるし容易じゃないわ。
それにあんたは片腕がない。今のあんたは四元どころか三元扱いがいいところ
じゃない? 違う? 義手は力をそっちに使わないといけないから疲れるでしょ」 
「確かに俺様は氷を扱うのがちょっと苦手だ。けどできないわけ
じゃねーしよ」
「あんた、そういっても基本の幻術しか使えないでしょ! 
しばらく義手無しで戦いなさい!」

 そういうとライラロはメルザのおでこを連打してつつく。
 彼女もつんつんするのが好きなようだ。

「あう、で、でもよ……あれがないと杖もったらなんもできねーしよ」
「だったらできる奴を呼べばいいじゃない。
資質があるのに自分で攻撃することばかり考えるから悪いのよ、全く」
「そんなこと言われても俺様よくしらねーしよー……」
「あぁん!? 口応えしたら片腕立て百回って言ったわよね? はい、やる!」
「えぇーーーー……」

 メルザは地獄の特訓を乗り切り、幻術招来を会得していた。

「グッ……駄目だメルザ。そいつには幻術は効かない……」
「ルイン、待ってろ今助けるからよ。直接攻撃はしねぇ!」

 そういうと指示をだしたエレメンタルが動く。
 氷流出乃と土流出乃が次々と氷塊、土塊をサイクロプスを囲うようにしていく。





 おかげで隙が出来たので幻薬(中)で傷の手当をする。
 すーっと痛みが引き、骨折した場所も痛みはほとんどない。

 燃流出乃と風流出乃はメルザの横に立ち指示待ちしている。
 土と氷でいくつもの土氷が発生した。その氷に剛球と風を
一斉に放たたせた。
 狭くなった空間へ、さらにメルザも火球で一気に過熱した。

 大量の水が奴を襲う。

「ぐぉおおおおおおおお!」

 だがあれでは奴を倒すことはできない。
 俺も近寄ろうとしたがメルザに止められる。
 まだ何かあるのか? 

 メルザは先ほど手に入れた矛をもっている。
 燃流出乃はそれを高温で熱している。
 まさか……俺は急いでその場から距離をとる。

「こんくらいなら大丈夫だろ。それ!」

 メルザが投げるととんでもない爆発が起こり、あたり一面を吹き飛ばす。
 俺も少しふきとんだが、大丈夫そうだ。
 
 水蒸気爆発……とんでもないことをするな。
 ライラロさんに聞いたのか。
 ずずーんという音とともに奴は倒れた。

 間髪入れずに俺は近づき奴の首元へ一撃入れておく。
 動く気配はない。

 どうにか倒せたようだ。一人なら確実に死んでいた。
 まさか当たりの洞窟にこんな強いやつがいるとは。

 ねんのため倒れたサイクロプスをアナライズしてみる。

 サイクロプス(小型)

 巨体で好戦的 非常に高い戦闘能力を有する
 剛力な上速度も速く身体も非常に硬い
 得物は棍棒などで強い個体ほどいい武器を携えている


 やはりサイクロプスで間違いないようだ。
 メルザの過去の話にでてきたのはもっとでかいやつなのだろう。

 小でこのサイズか。
 メルザにとっては相当恐怖なのだろう。
 メルザの元へと戻り礼を言う。

「ありがとなメルザ。また助けられた。借りが増える一方だ」
「当たり前だ。俺様はルインの親分だからな! その……
さっきは情けないところを見せてごめん……なさい」
「何言ってんだ。そりゃこっちのセリフだ。
オペラモーヴ一発で仕留められない相手といきなり出くわすとは
思ってなかった。もっと気を付けないとな」

「オペラモーヴ? それって食い物か?」

 ……我が主は本当に食い意地が張っていらっしゃる。
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