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第四章 諦めない者たち 妖魔の国編

第八十六話 全ては我が主のために

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 一通り泣き叫んだルインは泉から元の場所へと戻った。


 固い決意を決めて。

「やぁ、無事領域はできたかい?」
「早く行こうよ! ね?」
「その前に二人に話がある」
「なんだい?」
「なにかしら?」
「俺は、俺の主に会いたい。今すぐにでもだ」
「……領域で何かあったのかい? さっきまでとは随分顔つきが違うけど」
「一人になって考えた。俺はどう見てもあの時死んでいる。
それを知った俺の主がどうなるかを考えてしまった。
あいつは心が優しすぎるから。きっと壊れてしまう」
「……そうか。確かに僕もフェルドナージュ様が死んだら
壊れてしまうかも
しれないね。君の気持もわかる」
「なら!」
「だが危険すぎるんだ。今度はきっと助けられない。
僕もサラもそこへは行けないんだ。
正規の方法で行くにはすごい時間がかかるんだ。ごめん、言えなくて」
「危険? 危険なだけで行けないわけじゃないんだな? 
どうしたら行ける? そのためなら何でもする。しなきゃいけないんだ」
「僕は君を失いたくない。なぜかわからないけど
君をひどく気に入ってしまったんだ。お願いだよ。
時間をくれないか?」

「その正規の方法ってどのくらい時間がかかるんだ」
「……十年はかかる」
「リル。俺はお前にすごく感謝してる。死にかけのところを
助けてくれただけじゃない。俺に興味を持ち、俺に話しかけ
様々な事を教えてくれた事。こうして俺を心配してくれる事にもだ。この恩は必ず返す。だから俺はその危険な方法とやらでも
絶対に死なないで見せる。俺を信じてくれ。
でないと俺は十年も経たずに死んでしまうかもしれない」
「……何もせず君が死ぬのは一番困る。ずるいなぁ、君は」
「すまない。その分の礼も帰ったら必ずするさ。メルザと一緒にな」

 リルは困惑した顔で思案する……と。

「このフェルス皇国の南に、地上へと通じる幽閉の辿りって場所がある。そこは過去の
罪に捕らわれた怨念の巣窟。
その怨念の魂に乗っていけば地上には出られるよ。
もし運良く地上に出られたら、その子の領域でその時計を
使いなよ。君の領域に繋がるはずだから。
それと君の領域が開いたなら、僕とサラの領域侵入の許可は出しておいてね」

 リルはそこまで考えてあの時計を……妖魔は変わり者が多いって言ってたけど、本当だな。
 本当に変わってて、呆れる程にいい奴だ。

 俺はリルの手を取って拳を握らせる。

「なに?」
「いいから。俺の国に伝わる、代々の友との挨拶だよ」

 俺も拳を握ってリルの拳に合わせる。

「ありがとう友よ。俺は必ずリルの元へ戻る」
「そしてあたしと結婚してね。胸を触った約束だよ」
「それは既成事実だ! 断固拒否!」
「えー! あれは遊びだったのね」
「遊んだのはそっちだろ、サラ!」

 最後は少しお笑いになってしまったが、俺は二人に行き方の詳細や注意を聞いて、すぐ向かう事にした。

 目的地は決まった。
 いざ幽閉の辿りへ。
 どんな危険があろうとも。

 我が主のために!
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