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第六章 強くなる

第百十八話 梯子の人生なんて

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 俺たちは穴の北にあるという水場を目指している。
 ムーラさんは一緒に同行してくれるらしい。
 
普段一緒に行動する事が多かったユニカ族のライラロさんやウェアウルフ族の
師匠とはまた違う種族のモラコ族。

 話を聞く限り水陸両用の優れた種族に思える。 
 戦闘にも長けているようだ。 
 俺の今の悩みの種の一つである地中からの攻撃を得意としているらしい。
 
 今度訓練に付き合ってもらいたいな。
 そう思案しながら歩いていると、目的地の水場周辺につく。

 綺麗な澄んだ池がみえる。その周りには木や石などもあり
一見するとオアシスのようにも見える。

 だが……しばらく見ていると池からとんでもない奴が出てきた。
 俺は目を疑った。こいつが間違いなくソレだ。
 見た目は豚だが尾びれのようなものがあり、牙が生えている。

 不格好にもほどがあるそれは、まさにピーグシャークの名に
恥じない外見だ。

「あれですよね」
「ああ、かなり獰猛なやつだ。あいつを倒さないと
道中の飲み水が確保できん」
「あいつ一匹だけなら俺様が丸焼きにするぞ?」
「いや、沢山いる。十分気を付けてくれ。地中からもでてくる」

 あの豚魚も水陸両用かよ。しかし焼いて食べたらうまそうだなあれは……いかんいかん、この
発想はメルザの役目だった。

「食えるのかな、あれ。焼いたらうまそうだ!」

 すみませんメルザさん。あなたの十八番を奪ったのは私です。

「ファナ、とりあえずあの一匹を弓で射抜いて引き寄せてくれないか?」
「わかったわ。ただ木がじゃまだから、ルインが私を担いでくれない?」
「ああ、わかっ……そうすると俺迎撃できなくない?」
「迎撃はミリルとルーにやってもらいましょう。ね? ミリル」
「ええ、勿論ですわ。ファナさん!」

 この二人ってこんなに仲が良かったかな。まぁ色々あったんだろう、うん。

「じゃあ俺様はファナの上から攻撃する!」
『えっ?』

 ファナと俺の声がはもる。どうやらメルザも混ざりたかったようだ。
 女子用梯子ルインとして生きていく事になった俺は、メルザを担いだ
ファナを持ち上げる。

 メルザは一番上で両手を挙げて楽しんでいる。それがやりたかったんだな……うん。
 俺も戦いたいよ。遠距離では無類の出番の無さ。

 上からファナは狙いを定めピーグシャークへと矢を放った。
 メルザも同時に燃臥斗を放つ。
 遠くで射抜かれ焼かれたピーグシャークは、怒りに震えながら
 俺たちの方へ突進してくる。 
 水場のモンスターだから火が効きづらいのか? 

 だが負傷した影響か、奴の動き自体は遅くなっている。

「るぴいーーーーーーー」

 メドゥーサリア船でルイが見せた黒い炎がピーグシャークにぶちあたり、奴は
動かなくなった。

 黒炎は通りやすいのか。ダメージ属性的には別物なのか? あれ。
 ほどなくしてピーグシャークが三匹程地中から出てきた。でかっ! 

「ブルブルブルブル!」

 不思議な鳴き声をあげるそいつらに、飛翔して鎗を構えたミリルが
ピーグシャークへと上空から鎗を突き立てる。
「ブギィイイイイイイイイ」

 強烈な悲鳴と共に一匹のピーグシャークが倒れる。
 俺だって飛びたい! けど俺は梯子だ。役割を全うしよう。

「俺も行ってくるわ。あいつ友達だし。挨拶してくるわ!」

 そう言ってレウスさんも出てきてピーグシャークに吹き飛ばされていた。
 あんた、本当友達いるのか!? 

「とりあえず出てきたのは一層できたみたいだけど、これくらいでいいのかしら?」

 そうファナが聞くと、ムーラさんは少しあきれた顔をして呟いた。

「あんたら、強かったんだな。あのピーグシャークをあんなにあっさり。
剣士さんは荷物持ちだったのか」

 違うんだ! 出番がないだけなんだ! 

 俺はメルザとファナを下ろすと、たたんだ梯子の様に膝から崩れ落ちた。
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