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三部 主と突き進む道 第一章 海底の世界へ向けて

第二百六十三話 海底第一層で一休み

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「ツイン、第一層、近い。まもなく」
「ああ……さすがにお腹空いた名。着いたら食事取れるか?」
「可能。一層、宙域。無重力。地上と同じにする」
「そんなこともできるのか。ブレディーは本当に凄いな」
「当然。闇賢者。万能」

 どこぞの聖女クラスだ。しかし闇賢者でした……それにしても海底にある無重力地帯か。
 てことは天井が海になるのか? こんな深海、人である以上恐怖しか覚えないが。

「入った。闇線状構造、解除。あ、忘れた。ドルドー、さようなら」
「ひどいっすーーーーーー!」

 ふわふわと闇が浮かび上がり、犬に変わる。ギリギリ海からは出ているが、危なかったな……。
 辺りを見回すと……天井はやはり海っぽいが、青黒い。光はないが、側面の壁らしきものが発光している。
 一体何で出来ているんだろう? いや、わかるはずもない。前世でのイメージを遥かに越えている世界だ。

「闇纏い。影重シャドーヘヴィ。重さ、適切。完璧」
「あっしだけ浮いたままっすよ!?」
「ドルドー、自分でやりーし!」
「冷たいっすねぇ……まぁいいっすけど! 影の重み!」

 全員地面? のような場所に着地した。叩いてみるとコンコンと鈍い音がする。かなり頑強だ。

「ブレディー、ここは安全か? もし安全そうなら……もうメルザが腹を空かして目を回してるんだ。
食べさせていいか?」
「……俺も空腹だ」
「安全。平気。ブレディー、食べる。食べ物?」
「よし、みんな出て来てくれ。全員浮くか?」
「平気。封印中、発動。かけた」

 イーファとドーグルはまだ目覚めていないようで、それ以外の全員を出した。
 パモに収納してあったピーグシャークの干し肉や、アップルパイなどを沢山出した。

「め、飯だ……俺様死ぬかと思ったぜ」
「ふっ、貴様のアップルパイはいつ食べても美味いな」
「あ、ベルローゼ。ずるいよ。カノンの分もとっといてよ」
「お兄ちゃん、それあたしのよ!?」
「こうしてみんなで食事を取るのなんて久しぶりね。うふふ、まさか海底で食事するなんてね」
「俺も食っていいか? な?」
「骨なら食べてもしょうがないっしょ」
「あら、可哀そうよ。私のあげるわ」
「カノン……カノっぴ。優しい。好き、大好き」
「あっしも食べたいっす! そのアップルパイってやつ!」
「みんなよっぽど腹減ってたんだな。パモ、ドーグルとイーファのはあるか?」
「パーミュ!」
「そうか。ならここに出したやつは遠慮せず食おう。それと、ブレディー。天井の海って重力
どうなってるんだ?」
「底、海面。重み、薄い」
「ほう……つまり……剣戒! コラーダの一閃!」

 俺は天井の海面を一閃した。
 同時にボトリと奇妙すぎるほどの海魚が落ちてきた。

「キャーーーーー! 何これキショイ。絶対猛毒っしょ」
「これ、アンコウみたいなやつだが少し違うな」
「アンコウ? 何よそれ。こんなの食べれるわけないわよ」
「いや、海底の魚は美味いんだぜ」
「ジュルリ。これ、喰えるのか? 喰っていいか?」

 我が主は相変わらず食いしん坊なようです。そうだ! メルザもいるし一応アナライズしよう。

「アナライズするから待ってくれよ……どれどれ」

 コウアンラプン

 深海に生息する伝説の魚。極稀に深海上層に出現する。
 肉は珍味で知られ、毒も持たない。
 深海を照らす光をたまに放つ。

「へぇ。面白い魚だな。毒はないようだから焼いて食べるか? 煮るのもいいな」
「どっちにしろ道具がないんじゃない? 水なら出せるけど」
「焼くにしてもかまどがないな。カットラスにでもさして焼くべきか……」
「君、氷雪造形術オボエタんじゃなかたっけ?」
「そうか。イメージ出来れば作れるか? しかし火で焼くとなるとなぁ……雪で固めてみるか。
妖雪造形術……カマド!」

 雪でカマドの形をしたものを構築してみた。出来たけど、確実に溶けるな。

「メルザ。これを土斗でコーティングできるか?」
「ああ。土斗! なんかなつかしーな。こうやってけろりん喰ったな」
「そういえばそうだったな。それじゃそこに乗せて……パモ、着火頼むぜ!」
「ぱーみゅ!」

 パモが下から火を入れる。うちのマスコットは優秀で可愛い。
 燃える物がないからメルザに風斗を使ってもらい、火力を上げた。

「僕の火炎も使いたいところだけど、燃えすぎちゃうよね」
「リルさん、それより私たちの方の状況、話さなくていいのかな?」
「ん? 二人とも結婚でもするのか?」
『えー!?』

 二人とも真っ赤になった。あれ、違うのか? 

「ち、違う! そうじゃなくてフェルドナージュ様の方の状況だよ!」
「っ! すっかり忘れていた。あまりにもみんなといるのが普通すぎて。あっちはどうなんだ? 
ベルータスはいたのか?」
「うん。分身体のベルータスがいたよ。フェルドナージュ様は片腕を失ってしまったらしい。
僕がいながら情けないことだよ。しかも奴は、フェルス皇国の兵士に紛れ込んでいたんだ……さらに
タルタロスの部下までね」
「なんだって!? 随分と想定よりずれた状態だったんだな。それで、リルたちはどうしてここに?」
「邪魔って言われたんだ……悔しかったけど仕方がなかった。フェルドナージュ様の命令通り動いた。
あっちにはアルカーンもいるから、平気だと思うけど」
「そうか。ジオもいるしな。みんな無事ならいいんだが……」
「ルイン、魚、焼けたぞ! 凄いいい匂いだ。喰っていいか?」
「ああ。みんなも食べててくれ。俺は少しその辺を見てくるから……あっつ!」
「ダメだぞ、ルインがとったんだからちゃんと喰え!」
「わーかった。食べるから! あっつ!」
「うふふ。本当に二人共、仲がいいのね。羨ましいわ」
「カノンとリルだって仲いーだろ? 俺様たちより」
「そ、そうかな。そう見える?」
「はぁ……あつあつで羨ましすぎるわね。見ていられないほど」
「本当っしょ。ルイン、偵察なら私も行くから」
「私もー!」
「いや、せっかく偵察用の術や装備を手に入れたんだ。ちゃんと使わないとな……
変幻ルーニー! 妖雪造形の術! アデリー! ……あまり遠くに行かない程度に
周辺を探ってきてくれ。頼むぞ!」」
「ホロロロー」
「ウェィ」

 シャーっと駆け出すアデリーと、逆方向にふわーっと飛んでいくルーニー。
 上空からの視点を共有しつつ、アデリーの方は帰りを待つ。

「いいなぁ。可愛いの二匹もいて。私も欲しいわ」
「ファナ。ドルドー、健在。いる?」
「いらないわよ、そんなエロイ目した犬」
「そんなこと言わず貰って欲しいっすよファナちゃーん!」

 あ、顔面に拳を叩き込んだ。ファナは相変わらず容赦ないが、ドルドーは嬉しそうだ……なんて
犬だこいつは。

「ん? ルーニーの方、何か変なのが見えるぞ。なんだろう、あれは」

 俺がルーニーの視界から見たものは……。
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