上 下
22 / 33
第2章 旅立ち

3 孤児院への来訪-2-

しおりを挟む
 馬車は海と港町が見える小高い丘の孤児院に到着した。俺は馬から降りるとナディアをエスコートするために扉へ向かうが既に騎士隊長カルロスがその役を務めるために扉を開けていた。

「姫様、どうぞ」

ナディアはカルロスの顔を見るなり、不満そうな顔をする。

「カルロス、私の護衛騎士はガルダナ様よ、おまえは控えなさい」
といつもやさしいナディアがカルロスの手を拒むと遅れて駆けつけた俺を待っていたようだ。

——可愛すぎるだろッ
俺はナディアの手を取ると、彼女は微笑みながら馬車を降りた。

「ガルダナ様、孤児院でのエスコートよろしくお願い致しますわ」

可愛い顔で懇願されたらもちろん叶えるのが男の勤めだ!

「もちろんだ!」

 俺のデレデレした顔を周りの騎士達は呆れかえり、カルロスは俺のことを睨みつけているんだろう、殺気をビンビンと感じる。ナディアはそっと俺の腕に手を添えた。ナディアは手の温もりが服を通して感じらる。

——うーッ、このまま抱き締めたい!!

 欲望に駆られそうな俺を別の角度から殺気を感じる。リラジだ…朝から不謹慎なことをせず真面目にやれと五月蝿いぐらいに言われていたのだ。度々、可愛さ余ってナディアを抱き締めていたがその行為な駄目男の典型だそうだ。女性との付き合いには順序が必要で、いきなり抱き締めたりするのは紳士的な行為ではないそうだ。ナディアに対していつでも紳士でカッコ良い俺様でいたいから我慢しているのだ。

「姫様、ようこそお越しくださいました」
孤児院長のローランが深々と頭を下げた。

「ローラン、今日一日よろしく頼みます」

「かしこまりました」 
とローランは再び頭を下げる。

 この男は港町ポルトの代表で、町を栄えるために孤児院だけでなく、港町に外国からの商店街を作ろう考えた発案者なのだ。今日は完成した孤児院と商店街のお披露目式なのだ。

「今日は子供達にお菓子を持ってきたわ、サーヤ、子供達に配ってきて」

「ありがとうございます、子供達も喜ぶます」
ローランはサーヤに子供達の場所を教えるとサーヤら袋いっぱいのお菓子を持ち孤児院へと入って行く。

「では、姫様、式典にご案内致します、おや、お連れの騎士様は珍しい赤毛なのですね…どちらの国でいらっしゃるのですか?もしかすると南の国でしょうか?ご出身は?」

「え…っと…」

——天空界…って言えないよな…
と俺が困っているとナディアがピシャリとローランを止めてくれた。

「失礼よ、控えない」

「失礼致しました。どうも他国に関心がございまして、新たな国の情報収集が癖になっております。騎士様失礼致しました。では、お披露目会はこちらでございます」


ローランは関係者が集まる場所へと案内する。大勢の拍手に迎えられたナディアは落ち着いた様子で孤児院設立、祝いの辞を述べたのだった。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

Cのようには、うたえない。

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

僕は明日、君に殺される

ミステリー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

ホラー交換日記

ホラー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

星屑のリング/わたしの海

SF / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

太陽の烙印、見えざる滄海(未完)

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:20

サプレッサー

ミステリー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:6

魔王の生まれ変わりは元勇者と親子になる!

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:88

打蕾

ミステリー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...