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第6章 亡国の王女の子達
第5話 亡国の王女の子達ー1ー(キャサリンの母目線)
しおりを挟む私の名はレリーズ・ローレンヌ。
ローレンヌ王国の生き残りの王女だ。
私が15歳の時に父は宰相ザイデリカの罠に嵌り、無実の罪を着せられ、父、母、兄は民の前で処刑されたそうだ。
異変に気付いた護衛騎士であるアンドレアが捕まる前夜にこっそり抜け出し彼の故郷であるコールディアに逃がしてくれたのだ。
我が父とコールディア侯爵はもともと友人関係にあり、もしもの時は私を助ける約束をしていたそうだ。そのためにコールディアの騎士であるアンドレアを護衛として私につけたのだ。
もともと一つの国であったコールディア公国は、いち早く帝国側に入り公国の名を捨て民の為に属領となったのだ。
父の友人であったコールディア侯爵は帝国の脅威を父に語り、早く属領に入るように勧めていたが政を宰相のザイデリカに握られていたため思うようにいかず、結局、あらぬ罪を着せられ一族は滅ぼされ、ザイデリカが侯爵としてノーザンランドに寝返ったのだ。
コールディア侯爵は私に何度も助けれずにすまないと謝って下さった。コールディア侯爵は何も悪くなく、政を下の者に任せすぎた我が一族の非なのだ。
コールディアで暮らし始めると私のオレンジ色の髪は大変目立つため、この国特有の髪の色である緑色のかつらを被り過ごした。
やがて、ローレンヌがザイデリカの支配下に入ると厳しい法や税制度のため逃げたす人が増えのだ。こうしてオレンジ色の髪のローレンヌ人がノーザンランド各地に流出する。
コールディアにも逃げて来たオレンジ色の髪の人も増え、私もかつらを外すことができたのだ。
私は年上だった護衛騎士であるアンドレアに昔から想いを寄せており、想いが結ばれ恋仲となった。
国を追われ辛い日々を乗り越えることが出来たのも彼が私の側にいて、愛してくれたおかげだ。
私の面倒見てくれていたコールディア侯爵も私達のことを祝福してくれたのだ。
しかし、彼は婚儀あげるのはやめようと言った。
いつの日かローレンヌが復興できるかもしれない…。
その時に子にローレンヌの名を継がそうと…。
私はローレンヌ復興などどうでも良かった。あなたの本当の妻になりたかった。花嫁姿をあなたに見てほしかった…。
しかし、彼の家門であるロゼッタ家はコールディアの名門騎士家系で恐らく私達のことを祝福していないのだろう。
私は追われている身分だ、彼の家に迷惑をかけることは出来ない。私はアンドレアの内縁の妻となる。
穏やか日々が続く。
1人目の元気な息子が生まれ、2人目には可愛らしい娘が生まれた。家族が増え幸せな日々が続く。
ある時、侯爵様から孫達の教育係になってほしいと声がかかる。2人の子供の為にもお金はあった方がいいと思い教育係を引き受けた。何年かして、教育係として侯爵家に出入りしていると、かつての家臣と出会してしまった。
それから私達の逃避行が始まる。
我が家にザイデリカの追っ手が来る前に逃げ出す。コールディア侯爵様がグランディアへの逃亡経路を作って下さった。
しかし、グランディナへ向かう道中に追手が追いかけて来たのだ。アンドレアは1人で追手を止めると言い出し、必ず合流するから先に逃げろ、子供達を頼むと言われ、無我夢中で子供達を守るために逃げきった。
なんとか無事グランディナに着いたが何日待ってもアンドレアが来ることはなかった。
貧しいながら3人で細々と生きる。
息子のネイサンが無事騎士学校に入り給金も頂け3人の生活も楽になる。
給金がもらえるからと娘のキャサリンも生活の為と騎士学校に入ろうとしていた。確かに父に似て剣の腕はいいが、かわいい娘には人並みの女性の幸せを築いてほしいと複雑な思いを抱いているとグランディナに病が流行り、私は病をこじらせてしまった。
「ゴホ、ゴホ」
「お母様大丈夫?縫い物の仕事休んだ方がいいよ」
「ゴホ、ゴホ。大丈夫よ。少し寝ていれば元気になるわ」
医者に診てもらうお金もなく、我慢をしていると病状は益々悪化し、立ち上がる力もなくなり自らの最後を悟る。
アンドレア、ごめんなさい、2人をしっかり見届けてることができそうないわ。
「キャサリン、よく聞いて。あなたの本当の名前は、キャサリン・ローレンヌよ。私達はローレンヌ王族の生き残りなのよ。いつか国を復興できる時がくれば国を立ち上げて。父様みたいに強く優しい子になりなさい。
愛してるわ。
ネイサンにも愛してるって伝えてね。
ごめんなさいね…
小さいあなた達を置いて…
ごめんなさ…い…」
「お母様、嫌よ!置いていかないで!目を開けて!!おかあさまー!!」
私は優しくキャサリンの髪を撫で、目を閉じる。
きっと、この2人ならいつの日がローレンヌを復興させてくれるわ。
アンドレア、大丈夫よね。
アンドレア……
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