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第7章 姉妹の和解 リッチモンド・ハイベルク領編
第2話 姉妹の心の内
しおりを挟む未払いだったトンネルの開通費用として受け取ったリヴァリオン国の宝。
交渉の際、クリストファーとビルは宝物庫の中で埃を被った赤、青、緑色の宝石が埋め込まれた剣と古ぼけた木箱に入った赤、青、緑、黒、金色の宝石のネックレスを選んだ。二人は埃が被った方が年代物で価値が高いだろうと判断した。他には同じように古ぼけた短剣や王冠などを適当に見繕いローズ王女の輿入れの持参金として得たのだ。
その後、ぺぺとエクストリアからそれぞれの宝には火、水、風、土の上位精霊(古の精霊)の加護がかけられていると説明を受けた。ちなみに緑色の宝石は古の精霊であるぺぺが黒色の宝石はエクストリアがラクラインの為に宝石に風、土の力を込めたのだ。精霊王も国を去る前に透明に輝く石に加護を込めラクラインに与えたネックレスがある。このネックレスは一年前にエリザベスが継承している。
火の剣……クリストファーは直感で何故か使いこなせるような気がしており、半年前に一度、火を出し剣を振ることが出来たがそれ以降は一切使いこなせていない。なんとしても使いこなしたいクリストファーはそれ以来リーラを練習相手に剣を振っている。
皇宮内 鍛錬場
カキーン
カキーン
鍛錬場に剣を合わす音が響く。
今日も火の剣を使いこなす為の鍛錬が行われていた。
「どうした?剣に迷いがある」
「えっ??陛下、そんなこともわかるんですか?」
「わかる。リーラとどれだけ剣を交わしていると思っているんだ」
「私は陛下の心の迷いなんて剣を通してなんてわかりませんよ」
「私の心の迷いをリーラごときに読まれるほど私は弱くない」
「むーっ。それじゃあ、私がまるで弱いみたいじゃないですか?」
「弱いだろう。正式な騎士になってまだ、一年しか経ってないぞ」
「そんな弱い騎士を副隊長に任命しちゃっていいんですか~」
リーラはプクッと膨れ気味に不満を言うとクリストファーはリーラのオデコをコツンと突き、
「私よりは弱いが信頼はしているから任命したんだぞ」
と優しい表情で笑いかける。
「えへへっ」
リーラは陛下に信頼を置いて貰えていると聞きなんだか嬉しくなる。
「悩み事はローズ夫人か?」
「えっ??」
「なんでわかったのかと言うような表情をしているな」
リーラはコクコクと頷くとクリストファーは笑い出す。
「リーラは分かりやすいからなぁ。多分、みな気づいているぞ」
「そうなんですか?!」
「まだ、ローズ夫人と話せてないのか?」
「はい。6番隊の立ち上げで多忙で時間がなかったです。今まで姉妹として接したこともなく、いきなり姉と言われても私はどうしたらいいかわかりません。何を話せばいいかなんて……」
「今まで辛い思いをして来たんだ。気を使って話す必要はないだろう。夫人も話したければ話してくるだろうし、その時にリーラがどうしたいのか想いのまま話せばいい。夫人も大人だ。リーラの辛かった気持ちをしっかり受け止めてくれると思う、不安な気持ちはあるかもしれないがもし話す時が来たら、逃げずに向き合えばいい。逃げるのは嫌いだろう?」
「嫌い…ですね。そうですね。くよくよ考えてないで、その時が来たら普通に話せばいいですね」
「リーラにくよくよ考えるのは似合わない。さぁ、私の鍛錬に付き合え。一向に火の剣が応えてくれないからな」
「陛下も一度火の剣が使えたからって、必死に剣を振るなんてそういうところ子供っぽいですよね」
「誰が子供っぽいだと!いつも要らぬことを話すのはこの口か?!」
クリストファーはリーラの唇を手で引っ張る。
「むーっ、ヒィたい~。ヒィどい~」
毎回繰り広げられる仲の良い2人のやり取りを周りの護衛達は生暖かい眼差しで見つめるのだった。
「リーラ、リッチモンドの夏祭りだが私も訪問する」
「陛下が直々に夏祭りお越しになられるんですか?」
「夏祭りではなく、隣国との開国に向けての話し合いの場を設けることになった」
「陛下が御出になられずともいいのではないのですか?」
「隣国との初めて接触だ、人任せにしたくない。私が帝都にいなくても皇太后や大臣達がいるから問題ないだろう。あと……」
「あと??」
リーラは何だろうと首を傾げる。
「リーラが初めての6番隊の遠征でリッチモンドで何か問題を起こしそうだからな。」
「ひどーい!!問題なんておこさないですよ!さっき信頼してるって言った癖に!」
リーラはクリストファーの胸をポカポカと叩く。
「あははは。すまない!すまない!問題を起こしそうだなんて言ってすまなかった。冗談だ、そんなに怒るな」
「もぅー!!副隊長なんだから、ちゃんと出来ますよ!!また、功績あげちゃったりしたら、ちゃんとご褒美くださいよ!」
「もちろんだ。そう簡単に功績あげれるか?」
「私、めちゃくちゃ頑張って、総隊長になるんです!だから功績上げますから!」
「総隊長だと?!」
クリストファーはリーラが総隊長になったら不安しかないんだかと心配な表情になる。
「夢は大きく持たないと駄目ですからねぇ~」
リーラはドヤ顔になる。
周りの護衛達は笑いながら、
「女性初総隊長!」
「リーラが上司かぁ~。」
「頑張れ!リーラ!」
と声援を送る。
「ありがとう、皆さん!!私、総隊長目指します!」
まさかリーラが総隊長になって祖国奪還計画を考えてるとは誰も知る由もない。
物陰でこの騒ぎを睨みつける人物がいた。
「父上。陛下に御用なら取り次ぎ致しますが……」
「いや、良い。急ぎではない」
去りゆくエステバン・コールディアに第2番隊隊長ラッセル・コールディアは声をかける。
「父上、お顔が怖いですよ。変な気をおこさないでください。リーラ嬢はオースティン兄上のお気に入りです。兄上を敵に回して我らに勝ち目などありませんからね」
「何を言っているのだ?確かにあの雌犬は目障りだかな。たかが平民の騎士だろうが。所詮捨て駒の1人だ」
足を引き摺りながらエステバンは鍛練場を後にする。
まだ父の耳にはリーラ王女のことは知られてないようだな。以前にまして陛下とリーラの距離はかなり縮んでいる。陛下がリーラが気に入っているのは間違いないだろう。もしリーラが妃候補に上がれば父は確実にリーラを消すために動く。リーラは兄上達の恩人だ。もしそうなれば兄上と父上は対立するだろう。親子で殺しあうのか??まったく我が一族同士で物騒なと首を振る。問題が起こらなければいいのだが…とラッセルは溜息をついた。
リッチモンド邸 帝都
「ローズ、準備は大丈夫かしら?」
「はい、義母様。大丈夫だと思いますわ」
にこりと笑うローズは初めてリッチモンド領に行く準備に追われていた。
「明日から出発かぁ。あー、ローズとしばらく会えないなんて信じられない!」
「ビル、うるさくてよ。たかが1ヶ月でしょうか?」
「母上はいいんだよ。ローズとカーティスに会えないなんて信じられないよ」
ビルは二歳になる息子のカーティスを抱き上げ、
「高い、高い~」
とあやす。
「あははは、おとーしゃま、もっと、もっと」
「ほら、高い、高い~。」
あはははとカーティスの笑い声が響く。
「ローズ、明日の護衛だが…。第4,6番隊の編成部隊が一緒についてくるんだ」
「第6番隊…」
「あぁ、リーラが任務として来る。すまない、新しい部隊編成でリーラが忙しくて君との仲直りの時間を設けることが出来なかった。大丈夫かい?」
「はい。大丈夫ですわ。心配なさらないで。もし、チャンスがあれば私から話そうと思いますわ」
「無理するなよ」
「ふふふ、ビル様は心配症ですわ。しばらく会えないのですから、ビル様を補充しなくては」
とローズはビルの胸に飛びこんだ。
「夏祭りには間に合うように僕も行くからね」
「はい、お待ちしておりますわ。ビル様の妻として立派に勤めを果たしますわ」
そして、姉妹はそれぞれの思いを抱えリッチモンド領への出発の日が迎えたのだ。
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