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第7章 姉妹の和解 リッチモンド・ハイベルク領編
第3話 忍び寄る敵
しおりを挟むリッチモンド領郊外
両親に修道院に入れられたケリーはつまらない生活に嫌気が刺し、町へと抜け出して来た。
領都では夏祭りが近づき、領都への旅行の準備に来たのか家族や恋人、友人らしき人々が楽しそうに買い物をしてるいる。ケリーの目にはみな今を満喫しているように映っている。
「羨ましい…。私はどうしてひとりぼっちなのかしら。どうして私がこんな目に遭わないといけないのよ!!」
ケリーは足元にあった石を掴み、
「全部、全部、リーラとローズのせいじゃない!!」
ガン!と壁に投げ叫んだ。
「あなた、今、リーラとローズって言ったかしら?」
ケリーは肩をビクリとさせ、まさか暴言を聞かれてしまったと焦りだす。
「いえ、いえ。何も言ってません!」
「ふふふ、大丈夫よ。安心して。ローズってもしかして…ローズ・リヴァリオン・ラクラインって王女で国を捨てて侯爵の息子と玉の輿婚した女のことじゃない?」
頭からフードを被った女が腰をくねらせながからケリーに近づいてきた。
「あと…、リーラって騎士をしている子じゃない?確かリーラ・ハントンって偽名使っている王女でしょう?」
「えっ??あいつ??王女だったの…」
「あら?やっぱりあの2人のことだったのね。貴女?リヴァリオン国の子かしら?」
「えぇ、そうよ」
「知ってる?あのローズがゾーンの将軍の元へ嫁ぎ、リーラが教皇様のもとへ行けばリヴァリオン国は滅びなかったのよ」
「なんですって?!」
「あの二人、自分さえよければいいと思って国を捨てて逃げたのよ」
「ウソッ?!許せない!!」
「それで、貴女はなぜ二人に怒ってるの?」
「それは…」
ケリーは離れ離れになっていた恋人のルーカスをリーラに殺され、帝国に不法侵入していたルーカスの存在を報告しなかった罰として修道院に入れられている話をする。
「まぁ、可哀想に。貴女、私の元へいらっしゃい。貴女を雇ってあげるわ。そして、あの二人に責任を果たしてもらいましょう。あの二人をゾーンに連れて行けば、リヴァリオン国は再び復活できるのよ」
「本当??」
「貴女は国の救援者よ。ケリー。みな、貴女に感謝するわ」
「私はサンドラよ。一緒に来る?」
「はい。サンドラ様!どうかよろしくお願い致します」
淑女らしく、スカートの掴み礼をする。
「まぁ、貴女。しっかり教育されているのね?侍女として働けるわ」
「ありがとうございます。必ずお役に立てるよう頑張ります」
サンドラはケリーを引き連れ、高級な宿に入る。
「ソフィア、可愛いらしい子を拾ってきたのよ」
「あらっ、サンドラ様。大丈夫ですの?その子…」
「問題なくてよ。リッチモンド家に精通している子なのよ。侍女としての経験もあるのよ」
「良かったですわね。サンドラ様の目的に近づけそうですわ。貴女、あちらにいる侍女に色々聞きなさい」
「かしこまりました」
ケリーは頭を下げて部屋を出る。
「ソフィア、この宝石を換金しましょうよ。」
「そうね。ここの換金レート悪くないからいいかもしれないわね。換金したらこの場所も長居無用よ、出発しましょう。」
「貴女の母上はどうするの?」
「使用人に診療所に入れるよう命じたわ。正直足手纏いだわ。私の目標の障害になるもの。サンドラ様、約束忘れないでくださいね」
「もちろんよ、私に協力してくれたら、貴女のことも協力するわ。そして、貴女を貴賓としてゾーンに迎えるわ」
「ありがとうございます。サンドラ王妃様」
「駄目じゃない、その呼び方しないでって言ったでしょう」
「ごめんあそばせ、ふふふ」
「ふふふ、わざとね。なかなか使える子も拾えたし、私達の勝利を願い祝杯をあげましょう」
「いいですわね」
「「私の未来に乾杯」」
チャリーンとグラスを合わせワインを飲み干す。
「ふふふ」
「ほほほ」
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