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幕間 例え利用してでも
しおりを挟む昔々その昔、まだ世界が今よりずっとずっと狭かった頃。
世界の全てを冒険し尽くし、この世の全てを知り尽くした4人の偉大な冒険者が居た。
人は彼らを、偉大なる冒険者にして全てを知る賢者であるという意味を込め、『冒賢者』と呼んだ。
彼らは、この世の全てを冒険し尽くしてしまったことに絶望し、その後の日々を自堕落に過ごしていた。
ある日、そんな彼らの前に、『神』を名乗る存在が現れ、こう言った。
『冒険を望む者よ、この難攻不落の塔を攻略してみせたあかつきには、其方らの願いを何でも聞き入れようぞ』
そうして彼らが連れていかれたのは、神の住まう場所。
彼等に用意されたものは、神が作り出せし神秘のダンジョン『叡智の塔』。
塔の中には見たこともない猛獣、入り組んだ迷路、どんな病でも治す薬、虹色に輝く宝石。
まさにこの世のものとは思えない、冒険家にとっての理想郷とも言えるものがあった。4人はしばらく、この未知の世界を踏み歩き冒険を謳歌していた。
だが、どんなものにも終わりは訪れる。ある時ついに彼らは、塔の頂上へとたどり着いてしまったのだ。それは彼らにとっての絶望だった。
もっと冒険したい、もっと未知を知りたい。
『人の子よ、よくぞこの塔を攻略成し得た、約束通り願いを聞こう』
《冒賢者》達が神に願ったのは、『永遠の冒険』。
まだ知らない未知の領域を、永遠に探検したい。一生涯をかけても冒険し尽くせないほどの広い世界が欲しい。
彼らの願いは聞き届けられ、世界は今とは比べものにならないほどに複雑、かつ大きくなり、彼らもまた永遠の命を手に入れた。
偉大なる冒険者である彼らはきっと今も、あまりにも広くなったこの世界で、最高の冒険をいつまでも楽しんでいることだろう。
■
「………」
真夜中、良い子は既にみんな寝静まっているであろう時間。
あたしは宿で、ラズカに貸してもらったお伽話の本に目を通していた。
なんでも「読まないと人生の9割を損してる」らしいので、この世界のことについてもう少し詳しく知っておくためにも、読んでおくべきだと思った。
「………神さまが、願いを叶えてくれる、ねぇ………」
正直、半信半疑。
ここに書いてあるのは夢物語そのもので、とても現実的とは言い難い。
だけど、縋るしかない。
雲を掴むような、まるで途方もないような話だけど、やっと見つけた『手がかり』だ。
「………もし、この話が本当なら………」
あたしは、まるでゲームの中のような、しかしリアルなこの世界から、抜け出すことが出来るかもしれない。
ラズカと昨日出会えたのは、本当に幸運だった。
最初は、シンパシーを感じていただけだった。それで勢いでパーティを組み、そこでドラゴンとかいうのにぶつかってしまった時は、後悔してしまった。
しかし、ラズカがあまりにも自分を卑下するものだから見てられなくなり、なんだか熱血漢みたいな事も言ってしまった。
その後ドラゴンを倒した時は、本当に運命的な出会いを果たしたんだと思った。これほどの相性なら、世界だって取れるとも言ってしまったほどだ。
しかし、その後だ。
その後聞いたことが、あたしという汚い人間の心を揺さぶった。
ラズカの夢を応援すると言っておきながら、一連托生だなんてほざいておきながら、あたしという人間は結局、『願いを叶えられる』という事を聞いた瞬間、自分勝手な事を考えてしまっていたのだ。
万に一つ、叡智の塔なるものがあって、そこに辿り着いたのなら。
ラズカを出し抜いて、あたしの願いを叶えよう、なんて。
首にかけてあるロケットペンダントを開け、その中にある写真を見る。
そこに写っているのはあたしと、あたしのたった一人の妹。
会えなくなって半年、きっと寂しい思いをさせてしまってるに違いない。
だから、例えラズカを利用するような形になってしまったとしても。
あたしは絶対に、帰らなくてはならない。最愛の妹が待つ、あたしの故郷へ。
「………待っててね、美奈」
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