欠陥だらけの完全無欠〜パーティ追放された二人が組んだら、最強のコンビになりました〜

侍兵士

文字の大きさ
20 / 21

19 アンフィスバエナ

しおりを挟む
「な、なんだいこいつは……!?」

 数多の凶悪なモンスターを仕留めてきたはずのカンパニュラすら、そのあまりに凶悪な相貌を見て顔に恐怖を滲ませる。
 その他の冒険者達に至っては、恐怖のあまり声も出せない始末だ。ただでさえ、暴力の象徴として恐れられるドラゴン。それが更に巨大になったような姿をしているのだから、当然の反応と言えるだろう。

 この場でただ1人余裕そうな表情を浮かべているのは、目の前の怪物を召喚してみせたロベリアだけだった。

「いい反応してくれるなぁ…こいつを作った甲斐があったよ」

「つくった……? まさかっ!」

 頭の中に浮かんだ1つの可能性に、思わず驚きが声になって現れる。
 異なるドラゴン2体の特徴を併せ持ったようなその外見。ロベリアはもしかすると……禁断の技法を使ったのかもしれない。

「《生体配合キメラリメイク》っ……!」

「ほォ、流石に知ってるか」

 《生体配合キメラリメイク》。
 異なる種の生物同士の遺伝子を配合させ、その特徴を併せ持った新たな生物を生み出す魔法。
 20年ぐらい前にこの魔法を用いて、手懐けたモンスター同士を融合させてより強力なモンスターを生み出す実験が行われた。
 結果、配合こそ成功したものの、そのモンスターは制御を失って暴走。島一つを滅ぼしかけたところで、Aランク冒険者たちの活躍によってなんとか討伐されたと聞く。
 それ以来、《生体配合キメラリメイク》はギルドから『禁断魔法』に指定され、いかなる理由があっても使用出来ないようになってしまった。

「ご名答だ、こいつはドラゴンとレッドドラゴンを配合させたキメラ生物だ、すげぇだろ? 苦労したんだ」

「ただでさえ凶暴なドラゴン同士の融合……制御が効くはずがないのにっ…!?」

 20年前に行われた実験では、かなり低級のモンスター同士によって配合が行われた。
 それらでさえあの結果だったのに、ドラゴン同士だなんて考えただけで恐ろしい。
 
「そいつはどうかなァ……? やれ、《アンフィスバエナ》」

「――――!!!」

 もはや文字では表せないような奇怪な呻き声をあげたかと思うと、アンフィスバエナと呼ばれた怪物は、その巨大な口からレッドドラゴンとは比較にならないほど巨大な、赤黒い炎を吐き出した。

「ひ、ひぃっ!」

「に、逃げろぉっ!」

 それを見て、周りにいた冒険者たちは蜘蛛の子を散らしたように逃げようとする。

「くっ……《魔法反転スペルリフレクター》!」

 すかさず、ミラが反射の魔法を放ち、その炎を跳ね返す。
 炎は数百倍の力に膨れ上がり、アンフィスバエナに跳ね返る。
 その際あまりの威力に、直撃してないにも関わらず爆風と熱風が巻き起こり、周りの家がミシミシと音を立てて吹き飛びそうになった。

「あっぶな…あれ当たったら確実に死ぬわよ!?」

「でも、逆にあんなの当たったら本体もただじゃ……ッ!?」

 炎が跳ね返った時に発生した煙が晴れ、そこにあった光景を見て、絶句する。
 なんと、あれほどの一撃が直撃したにも関わらず、アンフィスバエナは傷一つ無く、何事もないかのように佇んでいた。
 そんなバカな……500倍以上の威力で跳ね返ったはずなのにっ!?

「アハハハハ!!! すっげぇじゃねぇかアンフィスバエナァ! 想像以上の耐久力だ!!」

 ロベリアが満足げに手を打ち鳴らし、下品な笑い声をあげる。

「こいつに比べりゃあのドラゴンの耐久力なんてカスみたいなもんだな…あいつは《魔法反転スペルリフレクター》一発で大ダメージだったもんなぁ!」

「あのドラゴン……? まさかっ、アルヒ森林に出たあいつは……!?」

「アタシのプレゼントだよ、気に入ってくれたかぁ?」

 ロベリアは相も変わらずニタリと顔を歪め、衝撃の告白をした。
 私たちの会話が噛み合っているのならば、ロベリアが言っている『あのドラゴン』は、ミラとパーティを組んだその日に出会った通常種のドラゴンだ。
 なんで弱いモンスターしか住んで居ないはずのアルヒ森林にあんな怪物がいるのかと疑問には思ってたけど、あれもロベリアの仕業だったなんて……! 冗談抜きに、こいつは全ての元凶かもしれない。

「ふっざけないでよ!? あいつのせいであたしたち死にかけたのよ!?」

 ミラが顔を真っ赤にしながら、声を荒げてロベリアに抗議する。
 それを見てロベリアは面倒くさそうに左耳をほじくる。

「うるせェな、生きてんだから別にいいだろ」

「良くないに決まってんでしょうがッ!! なんであんなことを……」

「ミラ、それは後で問い詰めよう…まずはあいつを倒さなきゃ」

 興奮するミラの袖を引っ張って、ひとまず落ち着かせる。
 とりあえずアンフィスバエナを倒さないことには、何も解決しない。

「それよか、あのロベリアって奴倒せば解決なんじゃないの!? 主人いなくなるから、あのデカブツも大人しくなるでしょ!?」

「逆だよ、今はロベリアのコントロール下にいるから安全だけど……もしそれが失われたら、暴走しだすかもしれない」

 今のところロベリアが指示しない限りは、アンフィスバエナは動いてこない。
 あれほど凶暴そうなヤツをどうやって制御しているのかは知らないけど……下手に制御を失わせたら、逆に危険かもしれない。
 まずはアンフィスバエナから何とかして倒さなくてはならないだろう。

「でも、どうするの!? あいつめちゃくちゃ硬いわよ!?」

「ふふっ、簡単だよミラ」

「えっ……?」

 あの無茶苦茶な防御力は、元となった黒いドラゴンのものを受け継ぎ、さらにそれが発展し強化されたような形になっているのだろう。となれば、黒いドラゴンのもう一つの特徴である再生能力も、かなり強化されている可能性も高い。
 だったら、とる方法は一つしか無いだろう。

「防御が固すぎてダメージが通らないなら…それを上回るめちゃくちゃ強い魔法で一撃で倒せばいいんだよ」

「あんたホント脳筋よね!?」

 何故か突っ込まれてしまった。どうしてだろう、我ながらかなり名案だと思うんだけど。

「まぁあたしも他に方法思いつかないからそれでいいんだけど…でも、どうするの? そんな魔法、こんな街中で撃って大丈夫なの?」

「だから、あいつを外に出そう。広い場所なら問題ないよ」

「あ、そっか……よし、《瞬間転移トランスポータル》!」

 ミラは納得したかのように手を叩き、アンフィスバエナに向かって瞬間移動魔法をかける。
 ――しかし。

「………あれ?」

 何も、起こらない。
 魔法を使ったはずなのに、アンフィスバエナは一向にその場から消える気配が無い。
 
「くっくっく、無駄だよ、街の外には出られねェ」

「なんですって!?」

「《阻移結界ジャミングプリズン》か……!」

 《阻移結界ジャミングプリズン》は、内部からの瞬間移動を封じる結界魔法だ。
 牢に閉じ込められた魔法使いが《瞬間転移トランスポータル》で脱獄しないように、と開発された魔法なんだけど…厄介なものを使われてしまった。どこまで用意周到なんだこいつ…!!

「さァどうする……? こんな場所で高火力魔法なんか使えば街が滅んじまうぞォ?」

「ら、ラズカ……」

 ミラが不安げな顔で私の横顔を見てくる。
 どうすればいいんだ……この街から出ずに、何の被害も出さずに、アンフィスバエナを倒すには……!!

「ラズカ」

 その時、私の背中に声がかけられる。
 その主は――カンパニュラだった。
 
「アタシに作戦がある。この街に被害をほとんど出さずに、アイツを倒す方法が」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。 絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。 一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。 無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

処理中です...