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19 アンフィスバエナ
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「な、なんだいこいつは……!?」
数多の凶悪なモンスターを仕留めてきたはずのカンパニュラすら、そのあまりに凶悪な相貌を見て顔に恐怖を滲ませる。
その他の冒険者達に至っては、恐怖のあまり声も出せない始末だ。ただでさえ、暴力の象徴として恐れられるドラゴン。それが更に巨大になったような姿をしているのだから、当然の反応と言えるだろう。
この場でただ1人余裕そうな表情を浮かべているのは、目の前の怪物を召喚してみせたロベリアだけだった。
「いい反応してくれるなぁ…こいつを作った甲斐があったよ」
「つくった……? まさかっ!」
頭の中に浮かんだ1つの可能性に、思わず驚きが声になって現れる。
異なるドラゴン2体の特徴を併せ持ったようなその外見。ロベリアはもしかすると……禁断の技法を使ったのかもしれない。
「《生体配合》っ……!」
「ほォ、流石に知ってるか」
《生体配合》。
異なる種の生物同士の遺伝子を配合させ、その特徴を併せ持った新たな生物を生み出す魔法。
20年ぐらい前にこの魔法を用いて、手懐けたモンスター同士を融合させてより強力なモンスターを生み出す実験が行われた。
結果、配合こそ成功したものの、そのモンスターは制御を失って暴走。島一つを滅ぼしかけたところで、Aランク冒険者たちの活躍によってなんとか討伐されたと聞く。
それ以来、《生体配合》はギルドから『禁断魔法』に指定され、いかなる理由があっても使用出来ないようになってしまった。
「ご名答だ、こいつはドラゴンとレッドドラゴンを配合させたキメラ生物だ、すげぇだろ? 苦労したんだ」
「ただでさえ凶暴なドラゴン同士の融合……制御が効くはずがないのにっ…!?」
20年前に行われた実験では、かなり低級のモンスター同士によって配合が行われた。
それらでさえあの結果だったのに、ドラゴン同士だなんて考えただけで恐ろしい。
「そいつはどうかなァ……? やれ、《アンフィスバエナ》」
「――――!!!」
もはや文字では表せないような奇怪な呻き声をあげたかと思うと、アンフィスバエナと呼ばれた怪物は、その巨大な口からレッドドラゴンとは比較にならないほど巨大な、赤黒い炎を吐き出した。
「ひ、ひぃっ!」
「に、逃げろぉっ!」
それを見て、周りにいた冒険者たちは蜘蛛の子を散らしたように逃げようとする。
「くっ……《魔法反転》!」
すかさず、ミラが反射の魔法を放ち、その炎を跳ね返す。
炎は数百倍の力に膨れ上がり、アンフィスバエナに跳ね返る。
その際あまりの威力に、直撃してないにも関わらず爆風と熱風が巻き起こり、周りの家がミシミシと音を立てて吹き飛びそうになった。
「あっぶな…あれ当たったら確実に死ぬわよ!?」
「でも、逆にあんなの当たったら本体もただじゃ……ッ!?」
炎が跳ね返った時に発生した煙が晴れ、そこにあった光景を見て、絶句する。
なんと、あれほどの一撃が直撃したにも関わらず、アンフィスバエナは傷一つ無く、何事もないかのように佇んでいた。
そんなバカな……500倍以上の威力で跳ね返ったはずなのにっ!?
「アハハハハ!!! すっげぇじゃねぇかアンフィスバエナァ! 想像以上の耐久力だ!!」
ロベリアが満足げに手を打ち鳴らし、下品な笑い声をあげる。
「こいつに比べりゃあのドラゴンの耐久力なんてカスみたいなもんだな…あいつは《魔法反転》一発で大ダメージだったもんなぁ!」
「あのドラゴン……? まさかっ、アルヒ森林に出たあいつは……!?」
「アタシのプレゼントだよ、気に入ってくれたかぁ?」
ロベリアは相も変わらずニタリと顔を歪め、衝撃の告白をした。
私たちの会話が噛み合っているのならば、ロベリアが言っている『あのドラゴン』は、ミラとパーティを組んだその日に出会った通常種のドラゴンだ。
なんで弱いモンスターしか住んで居ないはずのアルヒ森林にあんな怪物がいるのかと疑問には思ってたけど、あれもロベリアの仕業だったなんて……! 冗談抜きに、こいつは全ての元凶かもしれない。
「ふっざけないでよ!? あいつのせいであたしたち死にかけたのよ!?」
ミラが顔を真っ赤にしながら、声を荒げてロベリアに抗議する。
それを見てロベリアは面倒くさそうに左耳をほじくる。
「うるせェな、生きてんだから別にいいだろ」
「良くないに決まってんでしょうがッ!! なんであんなことを……」
「ミラ、それは後で問い詰めよう…まずはあいつを倒さなきゃ」
興奮するミラの袖を引っ張って、ひとまず落ち着かせる。
とりあえずアンフィスバエナを倒さないことには、何も解決しない。
「それよか、あのロベリアって奴倒せば解決なんじゃないの!? 主人いなくなるから、あのデカブツも大人しくなるでしょ!?」
「逆だよ、今はロベリアのコントロール下にいるから安全だけど……もしそれが失われたら、暴走しだすかもしれない」
今のところロベリアが指示しない限りは、アンフィスバエナは動いてこない。
あれほど凶暴そうなヤツをどうやって制御しているのかは知らないけど……下手に制御を失わせたら、逆に危険かもしれない。
まずはアンフィスバエナから何とかして倒さなくてはならないだろう。
「でも、どうするの!? あいつめちゃくちゃ硬いわよ!?」
「ふふっ、簡単だよミラ」
「えっ……?」
あの無茶苦茶な防御力は、元となった黒いドラゴンのものを受け継ぎ、さらにそれが発展し強化されたような形になっているのだろう。となれば、黒いドラゴンのもう一つの特徴である再生能力も、かなり強化されている可能性も高い。
だったら、とる方法は一つしか無いだろう。
「防御が固すぎてダメージが通らないなら…それを上回るめちゃくちゃ強い魔法で一撃で倒せばいいんだよ」
「あんたホント脳筋よね!?」
何故か突っ込まれてしまった。どうしてだろう、我ながらかなり名案だと思うんだけど。
「まぁあたしも他に方法思いつかないからそれでいいんだけど…でも、どうするの? そんな魔法、こんな街中で撃って大丈夫なの?」
「だから、あいつを外に出そう。広い場所なら問題ないよ」
「あ、そっか……よし、《瞬間転移》!」
ミラは納得したかのように手を叩き、アンフィスバエナに向かって瞬間移動魔法をかける。
――しかし。
「………あれ?」
何も、起こらない。
魔法を使ったはずなのに、アンフィスバエナは一向にその場から消える気配が無い。
「くっくっく、無駄だよ、街の外には出られねェ」
「なんですって!?」
「《阻移結界》か……!」
《阻移結界》は、内部からの瞬間移動を封じる結界魔法だ。
牢に閉じ込められた魔法使いが《瞬間転移》で脱獄しないように、と開発された魔法なんだけど…厄介なものを使われてしまった。どこまで用意周到なんだこいつ…!!
「さァどうする……? こんな場所で高火力魔法なんか使えば街が滅んじまうぞォ?」
「ら、ラズカ……」
ミラが不安げな顔で私の横顔を見てくる。
どうすればいいんだ……この街から出ずに、何の被害も出さずに、アンフィスバエナを倒すには……!!
「ラズカ」
その時、私の背中に声がかけられる。
その主は――カンパニュラだった。
「アタシに作戦がある。この街に被害をほとんど出さずに、アイツを倒す方法が」
数多の凶悪なモンスターを仕留めてきたはずのカンパニュラすら、そのあまりに凶悪な相貌を見て顔に恐怖を滲ませる。
その他の冒険者達に至っては、恐怖のあまり声も出せない始末だ。ただでさえ、暴力の象徴として恐れられるドラゴン。それが更に巨大になったような姿をしているのだから、当然の反応と言えるだろう。
この場でただ1人余裕そうな表情を浮かべているのは、目の前の怪物を召喚してみせたロベリアだけだった。
「いい反応してくれるなぁ…こいつを作った甲斐があったよ」
「つくった……? まさかっ!」
頭の中に浮かんだ1つの可能性に、思わず驚きが声になって現れる。
異なるドラゴン2体の特徴を併せ持ったようなその外見。ロベリアはもしかすると……禁断の技法を使ったのかもしれない。
「《生体配合》っ……!」
「ほォ、流石に知ってるか」
《生体配合》。
異なる種の生物同士の遺伝子を配合させ、その特徴を併せ持った新たな生物を生み出す魔法。
20年ぐらい前にこの魔法を用いて、手懐けたモンスター同士を融合させてより強力なモンスターを生み出す実験が行われた。
結果、配合こそ成功したものの、そのモンスターは制御を失って暴走。島一つを滅ぼしかけたところで、Aランク冒険者たちの活躍によってなんとか討伐されたと聞く。
それ以来、《生体配合》はギルドから『禁断魔法』に指定され、いかなる理由があっても使用出来ないようになってしまった。
「ご名答だ、こいつはドラゴンとレッドドラゴンを配合させたキメラ生物だ、すげぇだろ? 苦労したんだ」
「ただでさえ凶暴なドラゴン同士の融合……制御が効くはずがないのにっ…!?」
20年前に行われた実験では、かなり低級のモンスター同士によって配合が行われた。
それらでさえあの結果だったのに、ドラゴン同士だなんて考えただけで恐ろしい。
「そいつはどうかなァ……? やれ、《アンフィスバエナ》」
「――――!!!」
もはや文字では表せないような奇怪な呻き声をあげたかと思うと、アンフィスバエナと呼ばれた怪物は、その巨大な口からレッドドラゴンとは比較にならないほど巨大な、赤黒い炎を吐き出した。
「ひ、ひぃっ!」
「に、逃げろぉっ!」
それを見て、周りにいた冒険者たちは蜘蛛の子を散らしたように逃げようとする。
「くっ……《魔法反転》!」
すかさず、ミラが反射の魔法を放ち、その炎を跳ね返す。
炎は数百倍の力に膨れ上がり、アンフィスバエナに跳ね返る。
その際あまりの威力に、直撃してないにも関わらず爆風と熱風が巻き起こり、周りの家がミシミシと音を立てて吹き飛びそうになった。
「あっぶな…あれ当たったら確実に死ぬわよ!?」
「でも、逆にあんなの当たったら本体もただじゃ……ッ!?」
炎が跳ね返った時に発生した煙が晴れ、そこにあった光景を見て、絶句する。
なんと、あれほどの一撃が直撃したにも関わらず、アンフィスバエナは傷一つ無く、何事もないかのように佇んでいた。
そんなバカな……500倍以上の威力で跳ね返ったはずなのにっ!?
「アハハハハ!!! すっげぇじゃねぇかアンフィスバエナァ! 想像以上の耐久力だ!!」
ロベリアが満足げに手を打ち鳴らし、下品な笑い声をあげる。
「こいつに比べりゃあのドラゴンの耐久力なんてカスみたいなもんだな…あいつは《魔法反転》一発で大ダメージだったもんなぁ!」
「あのドラゴン……? まさかっ、アルヒ森林に出たあいつは……!?」
「アタシのプレゼントだよ、気に入ってくれたかぁ?」
ロベリアは相も変わらずニタリと顔を歪め、衝撃の告白をした。
私たちの会話が噛み合っているのならば、ロベリアが言っている『あのドラゴン』は、ミラとパーティを組んだその日に出会った通常種のドラゴンだ。
なんで弱いモンスターしか住んで居ないはずのアルヒ森林にあんな怪物がいるのかと疑問には思ってたけど、あれもロベリアの仕業だったなんて……! 冗談抜きに、こいつは全ての元凶かもしれない。
「ふっざけないでよ!? あいつのせいであたしたち死にかけたのよ!?」
ミラが顔を真っ赤にしながら、声を荒げてロベリアに抗議する。
それを見てロベリアは面倒くさそうに左耳をほじくる。
「うるせェな、生きてんだから別にいいだろ」
「良くないに決まってんでしょうがッ!! なんであんなことを……」
「ミラ、それは後で問い詰めよう…まずはあいつを倒さなきゃ」
興奮するミラの袖を引っ張って、ひとまず落ち着かせる。
とりあえずアンフィスバエナを倒さないことには、何も解決しない。
「それよか、あのロベリアって奴倒せば解決なんじゃないの!? 主人いなくなるから、あのデカブツも大人しくなるでしょ!?」
「逆だよ、今はロベリアのコントロール下にいるから安全だけど……もしそれが失われたら、暴走しだすかもしれない」
今のところロベリアが指示しない限りは、アンフィスバエナは動いてこない。
あれほど凶暴そうなヤツをどうやって制御しているのかは知らないけど……下手に制御を失わせたら、逆に危険かもしれない。
まずはアンフィスバエナから何とかして倒さなくてはならないだろう。
「でも、どうするの!? あいつめちゃくちゃ硬いわよ!?」
「ふふっ、簡単だよミラ」
「えっ……?」
あの無茶苦茶な防御力は、元となった黒いドラゴンのものを受け継ぎ、さらにそれが発展し強化されたような形になっているのだろう。となれば、黒いドラゴンのもう一つの特徴である再生能力も、かなり強化されている可能性も高い。
だったら、とる方法は一つしか無いだろう。
「防御が固すぎてダメージが通らないなら…それを上回るめちゃくちゃ強い魔法で一撃で倒せばいいんだよ」
「あんたホント脳筋よね!?」
何故か突っ込まれてしまった。どうしてだろう、我ながらかなり名案だと思うんだけど。
「まぁあたしも他に方法思いつかないからそれでいいんだけど…でも、どうするの? そんな魔法、こんな街中で撃って大丈夫なの?」
「だから、あいつを外に出そう。広い場所なら問題ないよ」
「あ、そっか……よし、《瞬間転移》!」
ミラは納得したかのように手を叩き、アンフィスバエナに向かって瞬間移動魔法をかける。
――しかし。
「………あれ?」
何も、起こらない。
魔法を使ったはずなのに、アンフィスバエナは一向にその場から消える気配が無い。
「くっくっく、無駄だよ、街の外には出られねェ」
「なんですって!?」
「《阻移結界》か……!」
《阻移結界》は、内部からの瞬間移動を封じる結界魔法だ。
牢に閉じ込められた魔法使いが《瞬間転移》で脱獄しないように、と開発された魔法なんだけど…厄介なものを使われてしまった。どこまで用意周到なんだこいつ…!!
「さァどうする……? こんな場所で高火力魔法なんか使えば街が滅んじまうぞォ?」
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ミラが不安げな顔で私の横顔を見てくる。
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