欠陥だらけの完全無欠〜パーティ追放された二人が組んだら、最強のコンビになりました〜

侍兵士

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20 繋いだ手が引き剥がされる時

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「さ、作戦……?」

 カンパニュラが放った言葉を、思わず反芻する。
 街に被害を出さずにあの怪物を倒す方法を思いついた、というのだ。驚かずにはいられない。

「ああ、今《共鳴レゾナンス》使ってんだろ? 少しアタイにチャンネルを切り替えてくれ」

「わ、わかった」

 ロベリアに悟られずに作戦を伝えるためだろう、カンパニュラの指示に従い、私は《共鳴レゾナンス》の対象を一旦ミラから彼女に切り替える。

『いいか、――――』

『――――!!』

 カンパニュラは切り替えてすぐに、その思いついた『作戦』を私に伝えてくる。
 ――なるほど、この作戦なら確かに、なんとかなるかもしれない。

『準備にかなり時間がかかる、アンタ達2人でなんとか食い止めてくれ』

『何分ぐらいかかる……?』

『早くて20分ぐらいだ、多分あいつを食い止められるのはアンタ達しか居ない…頼めるかい?』

『20分……』

 現在、私が《共鳴レゾナンス》を使った時間は、約5分ほど。
 あいつを倒す時間を加味すると……かなりギリギリの勝負になる。
 ――けれど。

『……わかった、やってみるよ』

 初めて、カンパニュラに頼られたのだ。
 こんな状況でもそれは少し嬉しいと思えて……例えギリギリでも、成し遂げたいと思えてしまう。
 カンパニュラは私の返事を聞くと、ニカッと笑い、バンと私の背中を叩いた。

「よし、頼んだよ!」

「うんっ!」

 それだけ言うと、カンパニュラはくるりと身を翻し、周りにまだ少しだけ残っている冒険者達に向かって大声で叫んだ。

「アンタ達ィッ、今から少し協力してもらうよ!! アタイに着いてきなぁ!」

「な、なにをするんだ…」

「わからん…でもAランクのカンパニュラさんが言うなら正しいことだろう」

 カンパニュラの名声の賜物というべきか、冒険者たちは彼女の引率で街の外へと出て行った。

「……作戦会議は終わったか?」

 それを見届けると、ロベリアがいかにも退屈、といった雰囲気で大きな欠伸をかましている。

「…律儀に待ってたんだね」

「どんな風に足掻いて来んのか気になるからなぁ、ガッカリさせてくれんなよ?」

 ロベリアは腕を組みながら、クックッと不快な笑い声を上げている。
 ――本当に、こいつが何を考えているのか分からない。
 私が邪魔で殺したいのならば、そもそもロベリア1人で、もっと目立たない場所でこっそり、ということも出来たはず。
 しかし彼女は、こうしてわざと目立つような大掛かりな仕掛けをしておいて、挙句の果てに、逆転される可能性の芽を放っておいて、今もアンフィスバエナを待機させている始末だ。
 勝つことが目的じゃないのか? もっと何か重要なことが……?

「ボーっとしてんなよ」

 ロベリアがクンッ、と左手の人差し指を少し動かす。
 するとアンフィスバエナは巨大な左手を挙げ、私めがけて振り下ろそうとしている。
 ――そうだ、呆けている暇はない、カンパニュラの作戦通りに動かないとっ!

「――まずは第1段階だ、ミラっ!」

「えっと、あそこね!? わかったわ、《瞬間転移トランスポータル》ッ!」

 ミラがそれを唱えると同時に、私、ミラ、ロベリア、そしてアンフィスバエナの姿が住宅街から消える。



「……っと、ここはどこだァ?」

 ロベリアが転移された先で、場所を把握しようとするために辺りをキョロキョロと見渡す。
 私たちが転移してきたのは、この街の中央にある街一番の巨大施設……『コロシアム』だ。
 年に一度、ここに腕自慢たちが集まって、己の力を競い合うためにあるらしい。
 その大きさは、半径150mほど。ここなら、住宅街よりは比較的自由に動くことが出来る。
 
「なるほど、ここで魔法をぶっ放す魂胆かぁ? ククッ、こんな石造りのボロい場所で撃ったらどのみち街ごと巻き込み……」

「お喋りしてる暇が、あるのッ!?」

 ミラの叫びと共に、アンフィスバエナの周りに、球体状のフィールドが張り巡らされる。
 《絶対防域アブソリュートゾーン》…通常外部からの攻撃を防ぐ魔法だが、これは内部からの衝撃を外に漏れ出さないようにする応用版だ。

「まずどれくらいの攻撃でダメージが通るか確かめないと……ミラっ、行くよ!」

「分かった!」

 その合図と共に、ミラが右手をアンフィスバエナに向けて突き出し、詠唱の準備をする。
 私が唱える場合、ほとんどの魔法は詠唱は要らないけど……極一部の複雑すぎる術式は、詠唱のバックアップ無しでは流石に脳が疲れるので、こうして詠唱が必要になる場合がある。
 特に、今から放つものは、その最たる例だ。

「……《星より生まれ 星より出でしその命よ 今一度 天より授かりしその御身をあるべき姿へ返したまえ 死という名の産声を以って 魂の一片まで輝き尽きよ》…!」

 ミラが唱え終えると、アンフィスバエナの肉体の中心に、強大な魔力の光が収束する。
 するとロベリアは、感嘆するように自身の顎を少し指で撫でた。

「ほォ、こいつは……」

「《星命鏖華スーパーノヴァ》ッッッ!!」

 叫びと共に、ミラは右手を振り上げる。
 それを合図に、アンフィスバエナを中心に収束していた光が一気に膨れ上がり、鼓膜を突き破らんばかりの破壊音をあげて、一気に爆発する。
 同時に、アンフィスバエナを覆っていた防壁も、ピシピシとひび割れていき…衝撃をギリギリ漏れ出さないタイミングで、完全に消滅した。

「《絶対防域アブソリュートゾーン》がギリギリ持ち堪えられるのがこれが限界……これで倒せるなら、カンパニュラを待つ必要は無いんだけど…」
 
 ――流石に、そこまで甘くないだろう。
 現に、巻き起こった土煙の中から、苦しげではあるけどうめき声が聞こえてくる。
 そして数秒後煙が晴れると、中から、全身の4割ほどが消失したアンフィスバエナが姿を現した。

「ね、ねぇっ、結構効いてるんじゃない!? これならあと2、3発使えば…」

「いや……よく見て」

 かなりのダメージと傷を負っているにも関わらず、未だアンフィスバエナは立ち上がり――次の瞬間、全ての傷が一瞬で塞がった。

「うっっそぉ!?」

「あんなデタラメな再生力ッ……!?」

 再生することまでは当然予想できたことだけど、まさかここまでとは思わなかった。
 これは想像以上の威力の魔法を使わないといけないかも……! カンパニュラをおとなしく待つしかない!

「究極破壊魔法か……確かこいつであのドラゴンも倒したんだっけな、流石の威力だなァ」

 ……ロベリアの態度も理解できる。確かにこれほどの強大な切り札を抱えているのならば、余裕が生まれるのは当然かもしれない。
 事実、あれを倒す手段は存在するけど、カンパニュラが来るまでは絶対に実行出来ない手だ。この街どころか、大陸ごと消滅しかねない。

「さぁて反撃開始と行くか、きっちり耐えてみせろよ」

 ロベリアが手を突き出すと、アンフィスバエナは大口を開けて、極大の火炎弾を3発吐き出した。
 まずい、《魔法反転スペルリフレクター》で跳ね返せるのは一発が限度だ……! なら、防ぐしかない!

「っ、《絶対防域アブソリュートゾーン》!!」

 炎を受け止めるために、ミラが防御魔法を放つ。
 カンパニュラのそれすら上回る防御力は、見事3発の火炎弾を耐えきった……が、ところどころにヒビが入っている。

「ミラの適正なら隕石でも傷一つ入らないはずなんだけど……!」

「攻撃もバケモノ、防御も怪物、ホントヤバいわねあのドラゴン……!」

「アタシの最高傑作だからなぁ、じっくり味わってくれよォ?」

 アンフィスバエナは、今度は私たちを薙ぎはらおうと言わんばかりに巨大な尻尾をムチのように振るう。

「飛ぼう、ミラ!」

「《飛翔ウイング》ッ!!」

 すかさず、それを避けるために上空に飛ぶ。
 すんでのところで、尻尾は私たちに当たらず空を切る。その際、ビュオォッ、と凄まじい風切り音とともに、一瞬遅れて地面に貼られた防御壁が真っ二つになって消失した。

「ひぇぇ……!」

「当たらないように、このまま……うわっ!?」

 浮遊する私の横を、巨大な火炎弾が通過する。
 アンフィスバエナが放ったのであろうその一撃は、天高くへと飛んでいき……浮かんでいた雲を貫いて、そのまま天高くへ消えていった。
 アンフィスバエナは空中に浮かんだ私たちに向かって、次々と息を吐く間も許さずに、連続で火炎弾を放ってくる。

「くっ……一発でも肉体に当たればアウトだよ、気をつけて!」

「常に防御壁貼っておかなきゃ、死んじゃうわねこれっ!」

 まるでアクロバットのように空中を縦横無尽に飛び回りながら、火炎弾をなんとか躱していく。
 この状態で、なんとか20分持ちこたえれば……!

「……避けてばっかじゃつまんねェなぁ、ちゃんと派手にやってくれよォ!」

 ロベリアはイライラしたように魔道書を開くと、何かを詠唱し始める。
 ――まずいっ、何か仕掛けてくる!?

「ミラ、ロベリアを縛ろうッ!!」

「うんっ、《捕縛バイン………」

 その瞬間、わずか一瞬だけ、私たちを覆っていた防御壁が途切れた――と同時に、ロベリアの口が大きく歪む。

 ……!? まずいっ、嵌められ……!?

 気付いた時には、もう遅かった。
 直後、アンフィスバエナの尻尾が大きく伸び、ミラの肉体に巻きついた。

「……きゃあっ!?」

「ミラッ!!」

 それと同時に、物凄い膂力でミラの肉体が引っ張られ、アンフィスバエナの元へ引きずりこまれる。
 その衝撃で、私たちの繋いだ手は引き剥がされ……。

「………しまったッ……!!」

 瞬間、私たちを繋いでいた《共鳴レゾナンス》も途切れ――私は空中から落下し、勢いよくコロシアムの地面に叩きつけられた。
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みんなの感想(1件)

残響
2020.08.23 残響

もうこの作品は
更新されないんですか?
今日初めて読んでみて
とても面白かったので残念です
もし気が向いたら書いてみてください

解除

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