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第3章:王太子妃となる日はあっさりと、しかし盛大に訪れましたわ
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(いいわ。ならばこちらも一枚上手な振る舞いをしてみせましょう。恥をかくのはそちらよ)
そう決めたわたくしは、あえて余裕のある笑みを浮かべ、クラリッサ令嬢の目をまっすぐ見つめた。
「まあ……。殿下がどなたに関心をお持ちかなど、わたくしの口からお話しするべきことではございませんが。ひとつだけ言えるとすれば、“わたくしは王太子妃として殿下を全力で支える”ということですわ。殿下が誰と会い、誰をどのように遇するかは、わたくしがとやかく言うべきではありません」
「あらあら、まあ……。随分と寛大なのですね。まるで“愛情のない夫婦”であるかのようにも捉えられますが、よろしいのかしら?」
「おほほ、それはどうでしょう? わたくしは殿下に絶対の信頼を寄せております。もし殿下が何か秘密を抱えていても、最終的に信じ合えるのが夫婦というもの。ましてや、他の誰でもなく、わたくしは殿下に“正式に選ばれた王太子妃”ですもの。たとえどこぞの噂話がどうであれ、殿下との立場は揺るぎませんことよ」
まくし立てたあと、わたくしは軽く口元に手を当てて笑ってみせた。すると、クラリッサ令嬢の取り巻き数名が「……っ」と肩を震わせ、言葉に詰まる。周囲で聞いていた人たちも「それもそうだよな……」と頷き始めた。
実際、わたくしは「アルベルト様に熱い愛情を注いでいる」わけではない。だが、“王太子妃”として揺るぎない地位を得ているのは真実だ。誰かが外野から口出ししようと、国王の裁可を受けたこの婚礼は正規のもの。よほどの不祥事がない限り、わたくしのポジションが崩れることはない。
そして、これを逆手に取って、「王太子妃は絶対的に強いのだ」と印象付ければ、今後“愛人の噂”を持ち出そうとする者も下手に動きづらくなる。なにしろ“正式な後ろ盾”を失わせるには、決定的な証拠と王家の全面否定が必要になるからだ。
わたくしの狙い通り、クラリッサ令嬢は少しムッとした表情を浮かべ、取り巻きもいたたまれなさそうに目を逸らしている。どうやら、わたくしがうろたえて自爆してくれることを期待していたのに、その目論見が外れてしまったようだ。
「そ、そう……。まあ、さすがは王太子妃殿下、言うことが違いますわね。わたくしなどには真似できませんわ。おほほ……」
「ええ、そうでしょうね。わたくしもあなたの真似はできませんもの。……それでは、失礼いたしますわ。お客様方にお酒の件をお詫びしなければなりませんので」
そう言い残し、わたくしはくるりと踵を返してクラリッサ令嬢たちから離れた。いっそ、ここで「どうしてそんな噂を広めようとするのですか?」と詰め寄ることもできたが、それは相手の“挑発”に乗る形になるだろう。冷静に対応したほうが、周囲の人々の印象は良くなるし、結果的にわたくしが“王太子妃としての品位”を示すことになる。
(残念でしたわね。どなたかはわからないけれど、わたくしのことを引きずり下ろしたいなら、もう少し上手く立ち回っていただかないと)
もちろん安心はできないが、この祝宴の場で“あからさまにスキャンダルを暴露する”という策は失敗に終わったようだ。そもそも、リリア様を直接この場に引きずり出すことも不可能だろうし、下手に平民の存在を叫んだところで、わたくしが否定すれば済む話になってしまう。結果、言いがかりをつけた者が王家に目をつけられるリスクのほうが大きい。
わたくしはハプニングを落ち着かせるために、先ほど騒ぎになった貴婦人たちを手厚くフォローし、医師のいる別室へ案内した。おかげで彼女たちは「王太子妃殿下はとても配慮が行き届いておられる」と気をよくし、最終的には失礼の波風もおさまった。クラリッサ令嬢が狙っていた“大きな混乱”には至らず、この場は円満に終わったのである。
そう決めたわたくしは、あえて余裕のある笑みを浮かべ、クラリッサ令嬢の目をまっすぐ見つめた。
「まあ……。殿下がどなたに関心をお持ちかなど、わたくしの口からお話しするべきことではございませんが。ひとつだけ言えるとすれば、“わたくしは王太子妃として殿下を全力で支える”ということですわ。殿下が誰と会い、誰をどのように遇するかは、わたくしがとやかく言うべきではありません」
「あらあら、まあ……。随分と寛大なのですね。まるで“愛情のない夫婦”であるかのようにも捉えられますが、よろしいのかしら?」
「おほほ、それはどうでしょう? わたくしは殿下に絶対の信頼を寄せております。もし殿下が何か秘密を抱えていても、最終的に信じ合えるのが夫婦というもの。ましてや、他の誰でもなく、わたくしは殿下に“正式に選ばれた王太子妃”ですもの。たとえどこぞの噂話がどうであれ、殿下との立場は揺るぎませんことよ」
まくし立てたあと、わたくしは軽く口元に手を当てて笑ってみせた。すると、クラリッサ令嬢の取り巻き数名が「……っ」と肩を震わせ、言葉に詰まる。周囲で聞いていた人たちも「それもそうだよな……」と頷き始めた。
実際、わたくしは「アルベルト様に熱い愛情を注いでいる」わけではない。だが、“王太子妃”として揺るぎない地位を得ているのは真実だ。誰かが外野から口出ししようと、国王の裁可を受けたこの婚礼は正規のもの。よほどの不祥事がない限り、わたくしのポジションが崩れることはない。
そして、これを逆手に取って、「王太子妃は絶対的に強いのだ」と印象付ければ、今後“愛人の噂”を持ち出そうとする者も下手に動きづらくなる。なにしろ“正式な後ろ盾”を失わせるには、決定的な証拠と王家の全面否定が必要になるからだ。
わたくしの狙い通り、クラリッサ令嬢は少しムッとした表情を浮かべ、取り巻きもいたたまれなさそうに目を逸らしている。どうやら、わたくしがうろたえて自爆してくれることを期待していたのに、その目論見が外れてしまったようだ。
「そ、そう……。まあ、さすがは王太子妃殿下、言うことが違いますわね。わたくしなどには真似できませんわ。おほほ……」
「ええ、そうでしょうね。わたくしもあなたの真似はできませんもの。……それでは、失礼いたしますわ。お客様方にお酒の件をお詫びしなければなりませんので」
そう言い残し、わたくしはくるりと踵を返してクラリッサ令嬢たちから離れた。いっそ、ここで「どうしてそんな噂を広めようとするのですか?」と詰め寄ることもできたが、それは相手の“挑発”に乗る形になるだろう。冷静に対応したほうが、周囲の人々の印象は良くなるし、結果的にわたくしが“王太子妃としての品位”を示すことになる。
(残念でしたわね。どなたかはわからないけれど、わたくしのことを引きずり下ろしたいなら、もう少し上手く立ち回っていただかないと)
もちろん安心はできないが、この祝宴の場で“あからさまにスキャンダルを暴露する”という策は失敗に終わったようだ。そもそも、リリア様を直接この場に引きずり出すことも不可能だろうし、下手に平民の存在を叫んだところで、わたくしが否定すれば済む話になってしまう。結果、言いがかりをつけた者が王家に目をつけられるリスクのほうが大きい。
わたくしはハプニングを落ち着かせるために、先ほど騒ぎになった貴婦人たちを手厚くフォローし、医師のいる別室へ案内した。おかげで彼女たちは「王太子妃殿下はとても配慮が行き届いておられる」と気をよくし、最終的には失礼の波風もおさまった。クラリッサ令嬢が狙っていた“大きな混乱”には至らず、この場は円満に終わったのである。
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