追放される前に、迷宮を支配しました ~聖女は王国を見限る~

鍛高譚

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8話:復讐の序章—恐怖の足音

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8話:復讐の序章—恐怖の足音



 夜の王都は、いつもとは違う不気味な静けさに包まれていた。

 城の中庭では、勇者アル・ミホイルをはじめとする勇者パーティーが、エクシード王子の命令を受けて密かに集まっていた。

 「……おい、本当にサラが生きてる可能性があるのか?」

 剣士ガルドが落ち着きなく辺りを見回しながら尋ねる。

 「あり得ない」

 アル・ミホイルは自信ありげに言い放った。

 「彼女は迷宮の最深部に捨てられた。あそこにはケルベロスがいるんだぞ。どんなに強かろうが、人間が生き延びられるわけがない」

 「そうよね……」

 神官エリーゼが不安げに呟く。

 「でも……何かがおかしいわ。最近、王宮の周りで妙な"影"が目撃されているって噂があるの」

 「ただの盗賊だろ?」

 ガルドが軽く笑うが、その表情にはどこか余裕がなかった。

 そんなやり取りをしていると、盗賊ディークが息を切らしながら駆け寄ってきた。

 「お、おい……ッ! まずい……これは……!」

 「何をそんなに焦っている?」

 アルは眉をひそめたが、次の瞬間——

 「ギャアアアアアアア!!!」

 城の外から、恐怖に満ちた悲鳴が響き渡った。

 一瞬で場の空気が凍りつく。

 「な、なんだ今の……?」

 ガルドが剣を抜き、警戒する。

 だが、その答えはすぐにわかった。

 ザッ……ザッ……ザッ……

 夜の闇の中から、ゆっくりと"何か"がこちらへ向かってくる足音が響く。

 「まさか……」

 エリーゼが震える声を出した瞬間——

 闇の中から、黒い鎧を纏った騎士が現れた。


---

恐怖の来訪者

 「貴様ら……」

 低く響く声が、彼らの耳を打った。

 その声の主——影の騎士の一人が、血塗れの剣を引きずりながら近づいてくる。

 「この城には……裏切り者がいると聞いた」

 アルたちは後ずさる。

 「……お前は、何者だ?」

 アルが震えながら問いかけると、影の騎士はゆっくりと顔を上げた。

 その目には、赤い光が宿っていた。

 「我は、主の命を受けた者……」

 「主……? お前の"主"って誰のことだ?」

 アルの問いに、影の騎士はゆっくりと答えた。

 「サラ・ラップ様だ」

 その言葉に、勇者パーティー全員の顔が青ざめた。

 「う、嘘だ……!」

 エリーゼが叫ぶ。

 「サラは死んだはず……! 私たちが、迷宮に置き去りにしたんだから……!」

 「愚か者ども……」

 影の騎士が剣を振るうと、一瞬で空気が張り詰めた。

 「貴様らは、主を裏切った。その報いを受ける時が来たのだ……」

 次の瞬間——

 影の騎士の背後から、数多の影が現れた。

 それはサラが支配した迷宮の魔物たち。

 巨大な狼、漆黒の蛇、そして異形の騎士たちが次々と現れ、王宮の庭を包囲する。

 「おい……なんだ、この数……!?」

 ガルドが叫ぶが、もはや遅い。

 魔物たちは静かに、彼らを囲い込んでいた。


---

サラの宣告

 その時——

 パチンッ

 小さな指の鳴る音が響く。

 「久しぶりね、勇者様」

 冷たい声が夜の静寂を破った。

 その声の主は——サラ・ラップ。

 闇の中から、ゆっくりとサラが姿を現した。

 白いローブを纏い、まるで神聖な存在のような美しさを纏っていたが、その瞳には冷酷な光が宿っていた。

 「サ、サラ……!?」

 勇者パーティー全員が硬直する。

 「まさか……生きていたのか!?」

 アルは驚愕の表情を浮かべる。

 サラは微笑む。

 「あなたたちが捨てた私が、生きていると困る?」

 その問いかけに、勇者たちは何も言えなかった。

 サラは一歩前へと進む。

 「私は、あなたたちを許すつもりはないわ」

 その言葉が放たれた瞬間——

 闇が動いた。


---

復讐の始まり

 サラの合図とともに、影の騎士たちと魔物たちが一斉に動き出す。

 「待て! 話し合おう!」

 アルが叫ぶが、サラは冷たく笑うだけだった。

 「今さら、何を?」

 「お前は……聖女だろう!? 人を裁くことは、聖女のやることじゃない!」

 「いいえ、私は"裏切られた聖女"よ」

 サラは杖を掲げる。

 「あなたたちに慈悲はないわ」

 その瞬間——

 魔物たちが勇者パーティーに襲い掛かった。

 夜の王宮には、次々と悲鳴が響き渡る。

 復讐の幕が、ついに開いたのだった。
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