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第1章:婚約破棄と屈辱の夜
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実際、エミリアは王女クラリッサに引けを取らないほどの美貌と資質を持ち、さらには多くの貴族から一目置かれる「教養と品性」を備えている。いくらアルバートに侮辱されようとも、それは決して彼女の真価を貶めることにはならない。むしろ、エミリアが本気で社交界を渡り合おうとすれば、アルバートなど足元にも及ばないほどの人脈と政治力を発揮できる――それを本人が活用するか否かだけの問題だった。
王女クラリッサのように派手な権勢を振りかざすつもりはない。だが、エミリアはこうも思う。
(もし、私が本当に怒ったら……彼らは、きっと後悔するでしょうね)
しかし、今のエミリアには、すぐに堂々と復讐する気力はなかった。長年慕っていた相手に、あれほどの言葉を突きつけられたのだ。自分の中の恋心が完全に死んだわけではない。それがかえって怒りを持続させるエネルギーになるかもしれないが、まずはこの傷を癒やす時間が必要だろう。
――そこへ、急ぎ足で廊下に飛び出してきた人物がいた。侯爵令嬢のリリアンだった。彼女はエミリアの無事を確かめるように駆け寄り、エミリアの手を握る。
「エミリア様、大丈夫ですか!? 私、あの場のあまりの酷さに耐えられなくて……あなたのことが心配で飛んできちゃいました」
リリアンの目には涙が浮かんでいる。親友としての純粋な同情と、怒りがごちゃ混ぜになった表情だった。エミリアはリリアンを安心させるように、ゆっくりと首を横に振る。
「ありがとう、リリアン。でも、私は大丈夫。……あそこでも見せたでしょう? 私、意外と打たれ強いの」
そう言いながら微笑んだものの、リリアンに隠しきれるほど上手くは笑えなかったかもしれない。彼女はそんなエミリアの心情を察し、さらに強く手を握り返してくる。
「許せませんわ、アルバート様も王女殿下も! どうしてあんなに酷いことが言えるのかしら! せめてもう少し人目のないところで話すとか、やりようはいくらでもあったはずですのに! ……ウィンスレット公爵閣下はご存じなのですか? いえ、きっとまだ知らないのでしょうけれど……」
リリアンの早口の言葉が、エミリアの胸を痛ませる。彼女としても、まさかこんな形で家名に泥を塗られ、恥をかかされるとは思ってもみなかった。父や母が知ったら、どれほど怒り、嘆くことだろう。しかし、それでも公爵家としていきなり王女やロンズデール公爵家を糾弾するわけにはいかない。その背後にある政治的な力関係が、あまりにも大きいからだ。
「……父には、私の方から話します。リリアン、今は何も言わないで。ね?」
「わかりましたわ。……でも、苦しかったら遠慮なく私を頼ってくださいまし。私はいつでもエミリア様の味方ですから」
リリアンの素直な友情に、エミリアは改めて救われる思いだった。公爵令嬢ともなると、周囲には腹の探り合いをする者も少なくない。そんな中で、リリアンだけはいつも変わらずに親身になってくれる。まるで妹のように、心配をしてくれる存在は貴重だった。
エミリアはリリアンに小さく微笑みかけ、「ありがとう」とだけ伝えた。リリアンは安心したようにうなずき、エミリアの背中をそっと撫でてくれる。けれど、その言葉や優しさがどれほどありがたくても、今のエミリアの心は深く傷ついていた。
(婚約破棄、ね。それも王女殿下との結婚が近々発表されるという。――そんな筋書き、初めから決まっていたのかしら)
きっとアルバートは、王女を手に入れるためにずっと策を練っていたに違いない。エミリアの婚約者という肩書きを利用して王族に近づき、いざ王女の信用を得たら、あとは不要になったエミリアを捨てる。そんな計算をしていたと思うと、これまで彼を信じていた自分が馬鹿らしくなる。だが、その悔しさ以上に、今は――ただ空しさが胸に広がるばかりだった。
やがて舞踏会の会場からは、また曲が響き始める。遠くから聞こえる陽気な旋律が、エミリアには皮肉に感じられた。さすがに今戻る気力はなかった。リリアンはエミリアの様子を窺い、「もう退出しましょう」と提案する。
エミリアもそれに同意し、そっとため息をつく。貴族としての義務を考えれば、最後まで場にいるべきなのだが、もはやこれだけの醜態を晒された後に戻る理由もない。むしろ、これ以上噂の的になるような時間を過ごすよりは、さっさと立ち去ったほうがいい。
「……そうね。リリアン、ごめんなさい。せっかくの舞踏会なのに、私に付き合わせてしまって」
「そんなこと、おっしゃらないでください。エミリア様の方が何倍も辛いのだから」
そう言ってリリアンは、ほとんど泣きそうな顔でエミリアを気遣ってくれる。エミリアはそれに軽く微笑み返すしかなかった。もう言葉もあまり出てこない。彼女たちはそうして密かに馬車を呼び、ウィンスレット公爵家へと戻ることにした。
――こうして、「婚約破棄」と「屈辱」の一夜は幕を下ろした。だが、この事件はエミリアにとって何の終わりでもなく、むしろ始まりに過ぎなかったのである。
その夜、彼女は寝室の扉を閉めるなり、初めて声を上げて泣いた。それは悔しさと悲しさ、そして怒りが入り混じった涙。侮辱だけならばまだしも、ずっと信頼してきた相手に裏切られた悲しみは想像を絶する。真夜中の静寂を破るように、枕に顔を埋めながら声を殺し、ただ一人泣き続ける。
長い時間をかけて涙が枯れたころ、エミリアは思い浮かべる。自分が今後、どういう道を選んで生きていくべきか。王女に奪われた婚約者を取り戻す?――否、それはもはや考えられない。あの場での彼の傲慢な態度は、エミリアの中にあった愛情を深く傷つけ、粉々に打ち砕いた。
(もう、あんな人はどうでもいい。でも、それだけでは済まされない。私の尊厳を踏みにじったこと――後悔させてみせるわ)
決して感情任せに叫ぶような復讐心ではない。けれど、彼女の中にゆっくりと燃え始めた炎は、もう簡単には消えないだろう。もし彼らが、自分の都合でエミリアを捨てておきながらさらに幸せになろうなどと考えているのなら、そんな甘い考えは打ち砕いてやる。それが、公爵令嬢エミリア・ウィンスレットの誇りにかけた戦い。
その一方で、彼女は気づいていない。近いうちに、ある人物が彼女に手を差し伸べることを。――あの夜会へ遅れて姿を見せた、皇太子アレクシスの存在を。婚約破棄を宣言された屈辱の夜は、エミリアが己の運命を大きく変えるきっかけとなったに違いない。彼女の“逆転”はまだ始まったばかりなのだ。
王女クラリッサのように派手な権勢を振りかざすつもりはない。だが、エミリアはこうも思う。
(もし、私が本当に怒ったら……彼らは、きっと後悔するでしょうね)
しかし、今のエミリアには、すぐに堂々と復讐する気力はなかった。長年慕っていた相手に、あれほどの言葉を突きつけられたのだ。自分の中の恋心が完全に死んだわけではない。それがかえって怒りを持続させるエネルギーになるかもしれないが、まずはこの傷を癒やす時間が必要だろう。
――そこへ、急ぎ足で廊下に飛び出してきた人物がいた。侯爵令嬢のリリアンだった。彼女はエミリアの無事を確かめるように駆け寄り、エミリアの手を握る。
「エミリア様、大丈夫ですか!? 私、あの場のあまりの酷さに耐えられなくて……あなたのことが心配で飛んできちゃいました」
リリアンの目には涙が浮かんでいる。親友としての純粋な同情と、怒りがごちゃ混ぜになった表情だった。エミリアはリリアンを安心させるように、ゆっくりと首を横に振る。
「ありがとう、リリアン。でも、私は大丈夫。……あそこでも見せたでしょう? 私、意外と打たれ強いの」
そう言いながら微笑んだものの、リリアンに隠しきれるほど上手くは笑えなかったかもしれない。彼女はそんなエミリアの心情を察し、さらに強く手を握り返してくる。
「許せませんわ、アルバート様も王女殿下も! どうしてあんなに酷いことが言えるのかしら! せめてもう少し人目のないところで話すとか、やりようはいくらでもあったはずですのに! ……ウィンスレット公爵閣下はご存じなのですか? いえ、きっとまだ知らないのでしょうけれど……」
リリアンの早口の言葉が、エミリアの胸を痛ませる。彼女としても、まさかこんな形で家名に泥を塗られ、恥をかかされるとは思ってもみなかった。父や母が知ったら、どれほど怒り、嘆くことだろう。しかし、それでも公爵家としていきなり王女やロンズデール公爵家を糾弾するわけにはいかない。その背後にある政治的な力関係が、あまりにも大きいからだ。
「……父には、私の方から話します。リリアン、今は何も言わないで。ね?」
「わかりましたわ。……でも、苦しかったら遠慮なく私を頼ってくださいまし。私はいつでもエミリア様の味方ですから」
リリアンの素直な友情に、エミリアは改めて救われる思いだった。公爵令嬢ともなると、周囲には腹の探り合いをする者も少なくない。そんな中で、リリアンだけはいつも変わらずに親身になってくれる。まるで妹のように、心配をしてくれる存在は貴重だった。
エミリアはリリアンに小さく微笑みかけ、「ありがとう」とだけ伝えた。リリアンは安心したようにうなずき、エミリアの背中をそっと撫でてくれる。けれど、その言葉や優しさがどれほどありがたくても、今のエミリアの心は深く傷ついていた。
(婚約破棄、ね。それも王女殿下との結婚が近々発表されるという。――そんな筋書き、初めから決まっていたのかしら)
きっとアルバートは、王女を手に入れるためにずっと策を練っていたに違いない。エミリアの婚約者という肩書きを利用して王族に近づき、いざ王女の信用を得たら、あとは不要になったエミリアを捨てる。そんな計算をしていたと思うと、これまで彼を信じていた自分が馬鹿らしくなる。だが、その悔しさ以上に、今は――ただ空しさが胸に広がるばかりだった。
やがて舞踏会の会場からは、また曲が響き始める。遠くから聞こえる陽気な旋律が、エミリアには皮肉に感じられた。さすがに今戻る気力はなかった。リリアンはエミリアの様子を窺い、「もう退出しましょう」と提案する。
エミリアもそれに同意し、そっとため息をつく。貴族としての義務を考えれば、最後まで場にいるべきなのだが、もはやこれだけの醜態を晒された後に戻る理由もない。むしろ、これ以上噂の的になるような時間を過ごすよりは、さっさと立ち去ったほうがいい。
「……そうね。リリアン、ごめんなさい。せっかくの舞踏会なのに、私に付き合わせてしまって」
「そんなこと、おっしゃらないでください。エミリア様の方が何倍も辛いのだから」
そう言ってリリアンは、ほとんど泣きそうな顔でエミリアを気遣ってくれる。エミリアはそれに軽く微笑み返すしかなかった。もう言葉もあまり出てこない。彼女たちはそうして密かに馬車を呼び、ウィンスレット公爵家へと戻ることにした。
――こうして、「婚約破棄」と「屈辱」の一夜は幕を下ろした。だが、この事件はエミリアにとって何の終わりでもなく、むしろ始まりに過ぎなかったのである。
その夜、彼女は寝室の扉を閉めるなり、初めて声を上げて泣いた。それは悔しさと悲しさ、そして怒りが入り混じった涙。侮辱だけならばまだしも、ずっと信頼してきた相手に裏切られた悲しみは想像を絶する。真夜中の静寂を破るように、枕に顔を埋めながら声を殺し、ただ一人泣き続ける。
長い時間をかけて涙が枯れたころ、エミリアは思い浮かべる。自分が今後、どういう道を選んで生きていくべきか。王女に奪われた婚約者を取り戻す?――否、それはもはや考えられない。あの場での彼の傲慢な態度は、エミリアの中にあった愛情を深く傷つけ、粉々に打ち砕いた。
(もう、あんな人はどうでもいい。でも、それだけでは済まされない。私の尊厳を踏みにじったこと――後悔させてみせるわ)
決して感情任せに叫ぶような復讐心ではない。けれど、彼女の中にゆっくりと燃え始めた炎は、もう簡単には消えないだろう。もし彼らが、自分の都合でエミリアを捨てておきながらさらに幸せになろうなどと考えているのなら、そんな甘い考えは打ち砕いてやる。それが、公爵令嬢エミリア・ウィンスレットの誇りにかけた戦い。
その一方で、彼女は気づいていない。近いうちに、ある人物が彼女に手を差し伸べることを。――あの夜会へ遅れて姿を見せた、皇太子アレクシスの存在を。婚約破棄を宣言された屈辱の夜は、エミリアが己の運命を大きく変えるきっかけとなったに違いない。彼女の“逆転”はまだ始まったばかりなのだ。
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