捨てられた令嬢と、選ばれなかった未来

鍛高譚

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第3章:エミリアの逆襲と、皇太子との急接近

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皇太子との思わぬ再会、そして舞踏会への招待

 クリスティーヌの音楽会での朗読は、予想以上の反響をもってエミリアを取り巻く空気を少しだけ変えた。もちろん「アルバートに捨てられた令嬢」という事実は消えないが、少なくとも“無能な捨てられ令嬢”というイメージは払拭しつつある。社交界には、権力に媚びるだけでなく「実力ある人物を敬う」という側面もあるからだ。
 そうして、エミリアが少しずつ自らの存在感を回復させ始めた頃、またしても驚きの知らせがもたらされた。――皇太子アレクシス・ヴァレンタインからの、個人的な招待状が届いたのだ。

 「こ、これはどういうことでしょう……?」

 エミリアはその招待状を手に取り、動揺を隠せずにいる。文面は短く、「近日開かれる小規模な舞踏会に、貴女にぜひご出席いただきたい。詳細は追って連絡する」と記されていた。そして末尾には、皇太子の署名と印が押されている。
 「エミリア、まさか皇太子殿下とあの大舞踏会以来、個人的にお話しする機会でもあったの?」
 そう問いかけてきたのは、母のメレディス公爵夫人だ。彼女も当然ながら驚いている。正式な王宮行事ではなく、「皇太子殿下が開く小規模な舞踏会」。それは公務というより、アレクシス個人の社交に近い場所だ。そこに公爵令嬢一人を名指しで招くとは、普通ではあり得ない。
 「いえ……以前、晩餐会で少しお声をかけていただいたことはありましたが、それ以降は全く……」

 エミリア自身も混乱していた。確かに晩餐会で「君が酷い目に遭ってすまなかった」と皇太子から気遣いを受けたことがある。だが、それだけで個人的な舞踏会に招かれるものだろうか。
 ヘンリー公爵もその知らせを受け取り、娘の意向を確認してくる。
 「エミリア、どうする? これは国王陛下の主催行事ではないが、相手は皇太子殿下だ。おまえが断れば無礼と取られる可能性もある。一方で、下手をすれば王女クラリッサの気分を損ねるかもしれない。なにせ殿下とは腹違いの兄妹とはいえ、あまり仲が良くないという噂もある」

 家中で協議した結果、エミリアは「出席する」以外の選択肢はないと考えた。ここで断る理由を探すほうが難しく、皇太子の招待を無視してはウィンスレット公爵家全体に泥を塗ることになる。もし、王女クラリッサの警戒を買うとしても、今さら恐れることではない――アルバートとの件で、すでに彼女からは敵視されているのだから。

 数日後、詳細が書かれた追伸が届いた。舞踏会は皇太子アレクシスが所有する離宮で行われるらしい。参加者はごく少数の限られた貴族や国外からの要人、そして信頼できる王族関係者――つまり、かなり“特別”な空間になる見通しだ。
 日時が迫る中、エミリアは自然と緊張を高めていった。これまで王室が開く公式行事には何度も出席してきたが、“皇太子個人のサロン的舞踏会”など、ほとんど前例がない。果たして何を目的に、アレクシス皇太子は自分を招いたのか。
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