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第4章:最高の婚約者と婚約破棄された男の末路
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3.アルバートの暴走――王女クラリッサとの亀裂
エミリアとアレクシスが王女の“小宴”で去った翌日、ロンズデール公爵家では激しい言い争いが起こっていた。原因は言うまでもなく、昨夜のエミリアの挑発。そして、それに対するアルバートの苛立ちだ。
「……あの女、よくもあんな場で俺を侮辱してくれたな。まるで、俺が王女殿下を捨てるような物言いをして……!」
アルバートは応接間で荒々しく歩き回り、怒りを吐き出している。対するクラリッサは、そんな彼を冷ややかに見つめる。
「ふん、騒ぎすぎよ。私の宴でケンカでも始めるつもりだったの? お兄様が止めなければ、もっと面倒になっていたかもしれないわ」
「王女殿下! あれは私が悪いのではありません。エミリアが……」
「分かっているわ。彼女が余計な口を挟んだのは腹立たしい。でも、あなたも今後は気を付けなさい。ああいう場でムキになればなるほど、皇太子派はあなたを“単純で扱いやすい男”とみなすかもしれないでしょう?」
クラリッサの鋭い指摘に、アルバートはぐっと言葉に詰まる。確かにエミリアの挑発に乗って感情的に反応すれば、アレクシスらの思う壺だ。だが、そう分かっていても怒りを抑えきれないのがアルバートだった。
「そもそも……王女殿下は、どうしてあの“小宴”に皇太子とエミリアを招いたのです? もし本当に私たちがこの国を支配したいのなら、あんな連中には来てほしくなかったはず。……まさか、彼らの動きを探っているのでしょうが、逆に彼らに利用される危険もあります」
アルバートの問いかけに、クラリッサは不満げに唇を尖らせる。
「仕方ないじゃない。お兄様が来ると言い出したとき、私が拒否すれば“王女が皇太子を疎んじている”とさらなる噂が立つわ。むしろ、あの場で私たちが堂々と国政のビジョンを語ることで、“次期政権”の正当性を印象付けたかったの」
アルバートはようやく落ち着きを取り戻し、深い息を吐く。クラリッサも苦々しい表情を浮かべながら、椅子に腰掛けた。二人は共に野望を抱え、この国を自分たちの思うように動かそうとしている。それはおおむね合致する利害だが、お互いの性格の強さゆえ、微妙な亀裂が生まれ始めているのも事実だ。
(……エミリアめ。今さら俺の前に現れたところで、何を変えられるというんだ。俺はもう、王女殿下を手に入れ、国そのものを手に入れる寸前だというのに)
アルバートは心の中でエミリアへの敵意を燃やしつつ、次なる策を模索していた。少なくとも、あの小宴で自分の威光を示したつもりだったが、エミリアの挑発で彼のイメージがやや傷ついたのも事実。王女派の有力貴族の中には「アルバートは本当に大丈夫なのか」と不安を抱く者もいる。
「王女殿下、私はやはり、もう一度決定的な手段を取るべきかと考えます。……皇太子やウィンスレット公爵家が余計な動きをする前に、力で押さえ込む必要がある。例えば、王宮の守衛や近衛騎士の人事を大きく変えてしまうとか。……そうすれば皇太子も思うように動けなくなるでしょう」
その提案に、クラリッサは少し思案顔になった。
「近衛騎士の人事……。確かに悪くないわね。それに、ある程度の書類は父上(国王陛下)のサインを得なくても私が決裁できるから、今のうちに私たちに忠誠を誓う者を配置するのも手ね。……ただし、お兄様がそれにどう反応するか」
「気にする必要はありません。いずれ王女殿下が正式に“摂政”の地位を得れば、皇太子は形だけの存在に成り下がります。私は全力でお力になりましょう」
こうして、二人は密かに“軍と近衛の掌握”に向けて舵を切ることを決めた。政治の表舞台ではまだ大人しく“婚礼準備”をしているふりをしながら、裏で確実に体制を固める。これこそが王女クラリッサとアルバート・ロンズデールの進めるシナリオであり、いつの日か国王が崩御したり、健康を損ねたりすれば、一気に政権を掌握できるという算段だ。
その企みが順調に進んでいることを思うと、アルバートの口元には暗い笑みが浮かぶ。――(今度こそ、エミリアなど眼中にない。あの女がどう叫ぼうと、最終的に勝つのは俺だ。王女殿下を手に入れ、この国を支配する。……地味でつまらない女に興味はない)
しかし、そう思い込んでいること自体が、アルバートの大きな誤算だと、彼は気づいていない。エミリアの背後にいるのは、ただの公爵家ではない――国の未来を憂う皇太子アレクシス、そして王宮内外に密かに根回しを進める“反・王女派”の有力者たち。
嵐の前の静けさが、音もなく王都を覆い始めていた。
エミリアとアレクシスが王女の“小宴”で去った翌日、ロンズデール公爵家では激しい言い争いが起こっていた。原因は言うまでもなく、昨夜のエミリアの挑発。そして、それに対するアルバートの苛立ちだ。
「……あの女、よくもあんな場で俺を侮辱してくれたな。まるで、俺が王女殿下を捨てるような物言いをして……!」
アルバートは応接間で荒々しく歩き回り、怒りを吐き出している。対するクラリッサは、そんな彼を冷ややかに見つめる。
「ふん、騒ぎすぎよ。私の宴でケンカでも始めるつもりだったの? お兄様が止めなければ、もっと面倒になっていたかもしれないわ」
「王女殿下! あれは私が悪いのではありません。エミリアが……」
「分かっているわ。彼女が余計な口を挟んだのは腹立たしい。でも、あなたも今後は気を付けなさい。ああいう場でムキになればなるほど、皇太子派はあなたを“単純で扱いやすい男”とみなすかもしれないでしょう?」
クラリッサの鋭い指摘に、アルバートはぐっと言葉に詰まる。確かにエミリアの挑発に乗って感情的に反応すれば、アレクシスらの思う壺だ。だが、そう分かっていても怒りを抑えきれないのがアルバートだった。
「そもそも……王女殿下は、どうしてあの“小宴”に皇太子とエミリアを招いたのです? もし本当に私たちがこの国を支配したいのなら、あんな連中には来てほしくなかったはず。……まさか、彼らの動きを探っているのでしょうが、逆に彼らに利用される危険もあります」
アルバートの問いかけに、クラリッサは不満げに唇を尖らせる。
「仕方ないじゃない。お兄様が来ると言い出したとき、私が拒否すれば“王女が皇太子を疎んじている”とさらなる噂が立つわ。むしろ、あの場で私たちが堂々と国政のビジョンを語ることで、“次期政権”の正当性を印象付けたかったの」
アルバートはようやく落ち着きを取り戻し、深い息を吐く。クラリッサも苦々しい表情を浮かべながら、椅子に腰掛けた。二人は共に野望を抱え、この国を自分たちの思うように動かそうとしている。それはおおむね合致する利害だが、お互いの性格の強さゆえ、微妙な亀裂が生まれ始めているのも事実だ。
(……エミリアめ。今さら俺の前に現れたところで、何を変えられるというんだ。俺はもう、王女殿下を手に入れ、国そのものを手に入れる寸前だというのに)
アルバートは心の中でエミリアへの敵意を燃やしつつ、次なる策を模索していた。少なくとも、あの小宴で自分の威光を示したつもりだったが、エミリアの挑発で彼のイメージがやや傷ついたのも事実。王女派の有力貴族の中には「アルバートは本当に大丈夫なのか」と不安を抱く者もいる。
「王女殿下、私はやはり、もう一度決定的な手段を取るべきかと考えます。……皇太子やウィンスレット公爵家が余計な動きをする前に、力で押さえ込む必要がある。例えば、王宮の守衛や近衛騎士の人事を大きく変えてしまうとか。……そうすれば皇太子も思うように動けなくなるでしょう」
その提案に、クラリッサは少し思案顔になった。
「近衛騎士の人事……。確かに悪くないわね。それに、ある程度の書類は父上(国王陛下)のサインを得なくても私が決裁できるから、今のうちに私たちに忠誠を誓う者を配置するのも手ね。……ただし、お兄様がそれにどう反応するか」
「気にする必要はありません。いずれ王女殿下が正式に“摂政”の地位を得れば、皇太子は形だけの存在に成り下がります。私は全力でお力になりましょう」
こうして、二人は密かに“軍と近衛の掌握”に向けて舵を切ることを決めた。政治の表舞台ではまだ大人しく“婚礼準備”をしているふりをしながら、裏で確実に体制を固める。これこそが王女クラリッサとアルバート・ロンズデールの進めるシナリオであり、いつの日か国王が崩御したり、健康を損ねたりすれば、一気に政権を掌握できるという算段だ。
その企みが順調に進んでいることを思うと、アルバートの口元には暗い笑みが浮かぶ。――(今度こそ、エミリアなど眼中にない。あの女がどう叫ぼうと、最終的に勝つのは俺だ。王女殿下を手に入れ、この国を支配する。……地味でつまらない女に興味はない)
しかし、そう思い込んでいること自体が、アルバートの大きな誤算だと、彼は気づいていない。エミリアの背後にいるのは、ただの公爵家ではない――国の未来を憂う皇太子アレクシス、そして王宮内外に密かに根回しを進める“反・王女派”の有力者たち。
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