婚約破棄されたので隣国に逃げたら、溺愛公爵に囲い込まれました

鍛高譚

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1-5新たな決意

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1-5 (ラノベ調リライト)

 夜の闇を抜け、空が薄く青を帯びはじめた頃――。
 フェリシアを乗せた馬車は、隣国エーバーハルト公爵領へと静かに走っていた。

 窓から差し込む朝の光は柔らかく、けれど彼女の胸の痛みはまだ消えていない。

(婚約破棄、偽りの罪、家族の失望……全部、一晩で崩れたのね)

 あまりにも急激な変化に、心が追いつかない。
 それでも、彼女の瞳にはもう、弱さではなく新しい光が宿りはじめていた。

(でも……ここで終わりじゃない。私の人生は、私が取り戻す)


---

◆リヒトの温かな言葉

 向かいの座席に座るリヒトは、気遣うようにフェリシアへ話しかけた。

「隣国へ来てくれる決断を、僕は嬉しく思うよ。フェリシア。
 君にはまだ、たくさんの可能性がある。この国で、それを存分に発揮してほしい」

 その声は、夜明け前のように静かで優しい。

「……ありがとう、リヒト。本当に、あなたには助けられてばかりだわ」

 心からの感謝とともに、彼女の頬をかすめた不安が少しずつ薄れていく。

「助けるのは当然だよ。僕は君を信じているから」

 短い言葉。
 けれどフェリシアにとって、それは救いそのものだった。


---

◆壮麗な公爵領

 数時間後、馬車は広大な土地を走り抜け、一際大きな建物の前で停まった。

「……すごい……」

 フェリシアは息を呑んだ。
 白い城壁に囲まれた公爵邸は美しく、堂々としている。
 庭には色とりどりの花々が咲き乱れ、噴水が朝日にきらめいていた。

「ここが……私の、新しい家……?」

 彼女の呟きに、リヒトは柔らかく頷く。

「ようこそ、フェリシア。ここで新しい人生を始めるんだ」

 胸がじんと熱くなる。
 もう居場所がないと思っていた彼女にとって、この言葉はどれだけ心を救っただろう。

「……私、自分自身を取り戻してみせるわ」

 その瞳は揺らぎのない決意で満ちていた。


---

◆“守られるだけの令嬢”にはならない

 公爵邸に入ると、使用人たちが礼儀正しくフェリシアを迎えた。
 リヒトが案内してくれたのは、上品な家具が揃えられた広い個室だった。

「この部屋は君専用だ。何かあれば、いつでも僕に言ってほしい」

「本当にありがとう、リヒト。でも……」

 フェリシアは彼の瞳をまっすぐに見つめ返す。

「私、守られているだけの存在にはなりたくないの。ここで、自分の力を役立てたい」

 その言葉に、リヒトの表情がわずかにほころんだ。

「……やっぱり、君は強いね。
 ――実は、君に頼みたいことがあるんだ」

「私に……?」

 リヒトはフェリシアを執務室へ案内し、一枚の地図を広げた。

「今、隣国との新しい貿易事業を進めている。
 君の知識と交渉力なら、きっと大きな力になる」

「貿易事業……」

 社交界で学んできた礼儀、交渉術、経済の知識。それらすべてが、リヒトの領地の役に立つ――そう言われたのだ。

(私でも……できることがあるんだ)

「ぜひやらせてください。私の力で、この事業を成功させてみせます」

 自信を取り戻しつつある声に、リヒトは満足げに微笑んだ。

「頼りにしているよ、フェリシア」


---

◆新たな旅路の始まり

 夜。
 フェリシアは与えられた部屋で、ひとり机に向かっていた。

(アルヴィン、クラリス……私は絶対に負けない。
 いつか必ず、真実を明らかにしてみせる)

 周囲に流されるだけだった“王太子妃候補”ではなく、
 自ら未来を切り開く“フェリシア・ドレイク”として――。

「私はもう、昔の私ではないわ」

 決意を胸に、窓の外の星空を見上げる。

 その光は、かつて舞踏会で見上げた星よりも、はるかに鮮明だった。

(ここからが……私の物語の始まり)


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