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第2章:新たな出会いと再起
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翌日、シェラは予定通りミレイアの部屋を訪れた。部屋に入ると、豪華な調度品の数々が目に飛び込む。元々、ミレイアは貴族の出身だが、両親を失い、親族であるシェラの家に引き取られた立場。にもかかわらず、こうして厚遇を受けているのは、彼女の愛想の良さや社交能力の高さがあったからだろう。
だが、一時は姉妹のように育った仲だというのに、今の二人の間には冷たい空気しか流れていない。
「まあ、わざわざ来てくれたのね。座ったら?」 ミレイアはソファの向かいを手で示す。シェラは控えめに腰を下ろし、その視線をしっかりと受け止める。 「それで、話って何かしら?」
ミレイアはカップに口をつけ、優雅に紅茶を飲む。一拍置いた後、彼女は唇を上品に拭いながら口を開いた。 「あなたには申し訳ないけれど、アレクシス様と私は結婚をするつもりなの。公にはまだ発表していないけれど、そう遠くない未来に式を挙げると思うわ」 わざわざ宣言するとは、あまりのあからさまさにシェラの胸が痛んだ。しかし、感情的になっては彼女の思う壺だ。シェラは努めて平静を保ち、「そう……」とだけ答える。
「それでね、その結婚式に、あなたを招待するべきかどうか悩んでいるの。いちおう同居人だし、従妹でもあるでしょう?」 挑発的な言葉。シェラは唇を噛むが、すぐに冷静に問い返す。 「私を招待するかどうかは、あなたとアレクシスの自由よ。私を侮辱するためにわざわざ呼ぶなら、丁重にお断りするわ」 「あら、まあ……強がりを言って。あなたが当日どんな表情をするか、ちょっと見てみたい気もするんだけど」
その悪意に満ちた言葉に、シェラは内心うんざりする。やはり、これが彼女の本性なのだろうか。かつての無邪気なミレイアはどこへ消えたのか。
しかし、その時、ミレイアの表情が不意に変わった。どこか憂いを帯びたような、複雑な色が混ざり合っている。
「……でも、本当にそれだけが理由じゃないの。ねえ、シェラ。あなたは侯爵家の令嬢でありながら、昔から目立たずに生きてきたでしょう? 私がいなければ、あなたが社交界で人気を博せたかもしれない。だけど実際には、地味で目立たないお人形さんみたいに扱われていたわ」
言葉の端々に棘が混ざるが、どこか自嘲じみた響きがある。シェラはまっすぐミレイアの瞳を見つめ、問いかける。 「何が言いたいの?」 「私ね、あなたを妬んでいたのよ。親を失った私をこの屋敷で受け入れてくれて、何不自由なく育ててくれた。それはありがたいと思っている。でも、あなただけが『本物の令嬢』として扱われて、将来は公爵家との縁組みまで決まって……。私がいくら社交界で賞賛を浴びても、正式な後ろ盾がない限り、本当の意味での地位は得られない」
ミレイアの言葉に、シェラは胸の奥がずきりと疼いた。まさか彼女がそんな思いを抱えていたとは。確かに、シェラは侯爵家の正当な血筋であり、ミレイアはあくまで引き取られた身。いかに社交界での評判が高かろうとも、「代わりの令嬢」に過ぎないと見られていたのかもしれない。
「だから、あなたが羨ましかった。そして、あのアレクシス様があなたの婚約者だなんて、なおさら認められなかったのよ。私のほうがきれいで、社交術にも長けているのに、なぜあなたが……ってね」 そう吐き捨てるように言うミレイアの瞳は、どこか悲痛にも見えた。その感情が正しいかどうかはわからない。ただ、彼女なりに苦しんでいたのも事実だろう。
しかし、それでも。彼女がシェラを裏切り、アレクシスを奪った行為が正当化されるわけではない。シェラはしっかりと感情を抑え、静かに言った。 「……そう。あなたの苦しみはわかったわ。でも、私を傷つけた事実は変わらないし、あなたがアレクシスと結婚しようがしまいが、私の人生はもう別の道を歩き始めているの」 「別の道、ね……。いいわ。じゃあ、思う存分やりなさいな。どうせあなたがどこまでできるか、私は見届けさせてもらうわ」
ミレイアは最後に挑発的な笑みを浮かべると、シェラを解放するように手を振った。その目には、まだ拭いきれない嫉妬と憎悪が混ざっているように思える。シェラは振り返らず、早足に部屋を後にした。
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だが、一時は姉妹のように育った仲だというのに、今の二人の間には冷たい空気しか流れていない。
「まあ、わざわざ来てくれたのね。座ったら?」 ミレイアはソファの向かいを手で示す。シェラは控えめに腰を下ろし、その視線をしっかりと受け止める。 「それで、話って何かしら?」
ミレイアはカップに口をつけ、優雅に紅茶を飲む。一拍置いた後、彼女は唇を上品に拭いながら口を開いた。 「あなたには申し訳ないけれど、アレクシス様と私は結婚をするつもりなの。公にはまだ発表していないけれど、そう遠くない未来に式を挙げると思うわ」 わざわざ宣言するとは、あまりのあからさまさにシェラの胸が痛んだ。しかし、感情的になっては彼女の思う壺だ。シェラは努めて平静を保ち、「そう……」とだけ答える。
「それでね、その結婚式に、あなたを招待するべきかどうか悩んでいるの。いちおう同居人だし、従妹でもあるでしょう?」 挑発的な言葉。シェラは唇を噛むが、すぐに冷静に問い返す。 「私を招待するかどうかは、あなたとアレクシスの自由よ。私を侮辱するためにわざわざ呼ぶなら、丁重にお断りするわ」 「あら、まあ……強がりを言って。あなたが当日どんな表情をするか、ちょっと見てみたい気もするんだけど」
その悪意に満ちた言葉に、シェラは内心うんざりする。やはり、これが彼女の本性なのだろうか。かつての無邪気なミレイアはどこへ消えたのか。
しかし、その時、ミレイアの表情が不意に変わった。どこか憂いを帯びたような、複雑な色が混ざり合っている。
「……でも、本当にそれだけが理由じゃないの。ねえ、シェラ。あなたは侯爵家の令嬢でありながら、昔から目立たずに生きてきたでしょう? 私がいなければ、あなたが社交界で人気を博せたかもしれない。だけど実際には、地味で目立たないお人形さんみたいに扱われていたわ」
言葉の端々に棘が混ざるが、どこか自嘲じみた響きがある。シェラはまっすぐミレイアの瞳を見つめ、問いかける。 「何が言いたいの?」 「私ね、あなたを妬んでいたのよ。親を失った私をこの屋敷で受け入れてくれて、何不自由なく育ててくれた。それはありがたいと思っている。でも、あなただけが『本物の令嬢』として扱われて、将来は公爵家との縁組みまで決まって……。私がいくら社交界で賞賛を浴びても、正式な後ろ盾がない限り、本当の意味での地位は得られない」
ミレイアの言葉に、シェラは胸の奥がずきりと疼いた。まさか彼女がそんな思いを抱えていたとは。確かに、シェラは侯爵家の正当な血筋であり、ミレイアはあくまで引き取られた身。いかに社交界での評判が高かろうとも、「代わりの令嬢」に過ぎないと見られていたのかもしれない。
「だから、あなたが羨ましかった。そして、あのアレクシス様があなたの婚約者だなんて、なおさら認められなかったのよ。私のほうがきれいで、社交術にも長けているのに、なぜあなたが……ってね」 そう吐き捨てるように言うミレイアの瞳は、どこか悲痛にも見えた。その感情が正しいかどうかはわからない。ただ、彼女なりに苦しんでいたのも事実だろう。
しかし、それでも。彼女がシェラを裏切り、アレクシスを奪った行為が正当化されるわけではない。シェラはしっかりと感情を抑え、静かに言った。 「……そう。あなたの苦しみはわかったわ。でも、私を傷つけた事実は変わらないし、あなたがアレクシスと結婚しようがしまいが、私の人生はもう別の道を歩き始めているの」 「別の道、ね……。いいわ。じゃあ、思う存分やりなさいな。どうせあなたがどこまでできるか、私は見届けさせてもらうわ」
ミレイアは最後に挑発的な笑みを浮かべると、シェラを解放するように手を振った。その目には、まだ拭いきれない嫉妬と憎悪が混ざっているように思える。シェラは振り返らず、早足に部屋を後にした。
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