白い結婚でしたので、裏切り夫とはお別れいたします

鍛高譚

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第3章:交わされる偽りの弁明、そして決裂

23話

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 終焉と始まりを告げる鐘の音

 それからほどなくして、決定的な報せが届く。
 ギルバート・ウェインが、地方への左遷を言い渡された——という知らせだった。地方といっても「辺境の小さな島」だという。国境付近の海上要塞を管理する厳しい場所で、騎士の中でも“罰”のように送られるケースが多いという。
 その島は治安が悪く、生活環境も苛酷で、本人の希望がない限りまず行くことはない僻地中の僻地。ギルバートの上官が決定を下したらしく、当人は大いに反発したものの、すでに彼を庇ってくれる人物はほとんど残っていないらしい。結局、数日の猶予もなく島へ向かうしかなくなったという。
 噂ではリリアンと手を携えて行く可能性があるとも囁かれていたが、どうやらリリアンは王都に居ついてしまい、ギルバートを見限ったという話が濃厚だ。
 「……まあ、当然の結果でしょうね」
 私がその報せを知ったのは、父が騎士団の高位騎士から直接聞いてきたからだ。父は私の顔色を窺いながら言う。
 「クレア、お前はどう思う? ギルバートが辺境に飛ばされることについて……」
 どう思う、と言われても、特に何も感じない。彼を罵りたい気持ちもないし、哀れむつもりもない。彼が選んだ道の結末であり、自業自得なのだ。
 だから私は、正直に言葉を返す。
 「……そうですか。いずれこうなったとは思いますが、もう私には関係のない人です。ただ、あの人がどこへ行こうと、何をしようと、私の知ったことではありません」
 すると父は小さく頷いた。
 「そうだな。それでいい。お前が振り回される必要はない。……これで本当に、ギルバートの行いは報いを受けることになるだろう」
 そして数日後、ギルバートは王都を出発したらしい。船でしか行けない、孤島の要塞。そこは騎士団の中でも“左遷”の代名詞と言われる場所で、早々に逃げ出す者が多いとも聞く。
 私は、最初にその話を聞いたとき、ほんの少しだけ胸が痛んだ。悪人だとはいえ、かつては私の“夫”だった人間だから。でもすぐにその胸の痛みは消え、「彼の末路がどうなろうと、もう関係ない」と思い直す。
 父や母も、これ以上ギルバートの話題を口にしなくなった。私が平穏を取り戻すよう、気遣ってくれているのだろう。
 だが、その後間もなく届いた報せは、さらに衝撃的だった。ギルバートが行方不明になった——という。
 「何でも、島での任務中に姿を消したらしい。海の荒れた夜だったから、船で脱走しようとしたのではないかと噂されているが……」
 父からそう聞いたとき、私は愕然とした。けれど、不思議と動揺はしなかった。あの男ならやりかねないし、何かトラブルに巻き込まれたところで、もう私が責任を感じることはない。
 「……そうですか。何があったのかは知りませんが、もし助からなかったとしても、自分で招いた結果でしょう」
 まるで他人事のように答える私に、父も深く頷く。私が冷たいと思われても仕方ないが、あれだけ私を傷つけた男だ。今さら同情はしないし、まして救いの手を伸ばそうなどとは思わない。
 こうして、ギルバート・ウェインの存在は私の人生から完全に消え去った。
 私の「白い結婚」は、最悪な形で終わりを迎えたが、その後始末まで含めて、ある意味では“決着”と言えるだろう。
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