『白い結婚でしたわよね? では私は自由をいただきます』

鍛高譚

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17話

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舞踏会へ――加速する思惑

 舞踏会が行われるのは、王都から少し離れた地方都市に構えるラクリア辺境伯家の別邸……なのだが、ここにディオン殿下も出席することが急遽決まり、周囲の貴族たちが色めき立っている。
 “辺境伯”といってもラクリア家は王族の遠縁にあたり、ディオン殿下も幼少期にこの領地で過ごしたことがあるという。近頃の“王子の気まぐれ”を考えれば、不思議な話ではないが……同席する人々は落ち着かない雰囲気を隠せない。

「……ディオン殿下も来られるんですね」
「ええ、そうらしい。ジル様はそのこともあって、なおさら“婚約者を堂々と紹介したい”と意気込んでいるとか。噂になっているから……ね」

 馬車の中、リコが言葉を濁す。私も苦笑するしかない。確かに“レラ・グランメリーは第二王子に興味を持たれている”などという噂が立っている以上、ジル様が私との婚約を強くアピールしたがるのは不思議ではない。
 もっとも、肝心の私自身は渋々だ。いまさらジル様から「やはり近づきたい」と言われても困るし、リディアの妨害は確実に増えるだろう。さらに、ディオン殿下にも妙な絡まれ方をしそうで気が重い。
 しかし、これが貴族に生まれた宿命というもの。私は深い溜息をつきつつ、リコとともにラクリア辺境伯家の別邸へ到着した。
 そこは美しい湖畔のそばに建てられた大きな邸宅で、庭園には色とりどりの花が咲き乱れ、夜にはランタンの灯が幻想的に揺れるという。すでに多くの馬車が駐まっており、華やかな衣装に身を包んだ貴族たちが次々と館へ入っていく。

「レラ、よく来てくれたな」
 入口付近で待っていたジル様が私に声をかける。淡いブルーのタキシードに身を包むその姿は相変わらず端麗だが、ここ数日で少しやつれたようにも見える。
 ――リディアとの板挟み、そしてディオン殿下への対抗心。おそらく精神的に疲れているのだろう。

「お呼びいただきありがとうございます。ジル様にはなにかとお気遣いいただいて……」
「いや、むしろこちらこそ助かるよ。君が来てくれなかったら、俺は一体誰を伴ってここへ来たらいいのか……」
 ジル様は苦い笑みを浮かべる。あれほどリディアと一心同体のように行動していた彼が、いまや正妻の私を伴わないと落ち着かなくなっている――その変化に正直、まだ私は戸惑うばかりだ。

「そろそろ中へ入ろう。……今夜は舞踏会だけじゃなく、いくつか余興も用意されているらしい。君が嫌がらなければ、一曲くらい一緒に踊ってほしいんだが……無理には強要しない」
「……そうですね。できるだけ、私も協力します」

 ここで断ってギスギスしても仕方ない。私は平静を装い、ジル様に手を取られながら館のホールへと足を踏み入れた。
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