眠り姫は十年後、元婚約者の隣に別の令嬢を見つけました

鍛高譚

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第4章――十年の時を超えて、いま選ぶ未来

22話

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 そのとき、リリアナが口を挟んだ。穏やかだが、強い口調だった。
 「レオン。あなたの言わんとすることはわかります。でも、私が決めるわ。あなたが抱える気持ちも含めて、それを受け止めて一緒に歩む覚悟があるのか、ないのか。私自身が、最終的に決断することです」
 男らしい決断を促すのではなく、自分の意志をはっきりと示すリリアナを見て、レオンはただ息を呑む。彼女は続ける。
 「私もあなたと過ごした時間を大切に思っているし、その結果“あなたを愛している”と断言できます。でも……あなたがアーシア様を思う気持ちを消し去ることは、私にもできません。ですから、あなたが本当に望む未来がどこにあるのかを、はっきり教えてほしいのです。それを聞いて、私が引くのか、共に行くのかを決めます」
 ――なんて強い女性なんだろう。私は息を詰めて、リリアナの横顔を見つめる。覚悟を持った人は、こんなにも凛としているのか。
 一方、レオンは深く瞳を伏せる。自分の気持ちを正直に話さなければ、誰も前へ進めないことを痛感しているのだろう。
 「……俺は、アーシアのことを、もう一度“婚約者”として迎えたい気持ちがある。ずっと眠っていた時間を後悔するんじゃなく、今の俺と今のアーシアで改めて一緒になれるなら……そんな未来を想像したら、どうしようもなく心が震えたんだ」
 レオンの告白に、全身の血が逆流するような衝撃を受ける。心のどこかで「そうなってほしい」と願っていたけれど、実際に彼の口から聞くと、うまく息ができなくなる。
 でも、それは同時に「リリアナとの婚約は解消する」という意味になるはずだ。私は恐る恐るリリアナの様子をうかがう。だが、彼女は驚きもせず、ただ静かに目を伏せていた。
 レオンは苦しい表情で続ける。
 「でもリリアナ、お前との日々も嘘じゃない。お前を大切に想う気持ちも本物だ。……だから、俺はお前に選択を委ねるしかないんだ。こんな無責任な言い方をして、怒られても仕方ない。でも、今の俺にはそれしかない」
 ――ああ、レオンは本当に不器用だ。私もリリアナも、そんな彼をわかっているからこそ、こうして直接話し合いの場を設けた。
 一向に言葉を発さないリリアナを見て、私も何か言わなければと思う。だけど声が出ない。どうすればリリアナの思いを傷つけずに済むのか、答えが見えない。
 すると、リリアナは小さく息を吐き出し、顔を上げた。その瞳には、うっすらと涙の光があるようにも見える。
 「レオン……あなた、ほんとうに不器用ですね。私との日々も、アーシア様への想いも、本物だなんて……そんな綺麗事を言われたら、私だってあなたを憎めないじゃないですか」
 皮肉混じりの言葉だが、そこに怒りは感じられなかった。どちらかといえば苦笑のような響きがある。
 「でも……私もわかっています。あなたはもう、アーシア様に心を引かれている。それを否定したり押しとどめたりしても、きっと私たちはお互いに不幸になってしまうだけ。これからの人生、まだ長いのに……そんな苦しみを背負い込むつもりはありません」
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