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16話
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王都の中心にそびえる白亜の王宮――その大理石の回廊を、シャル・ド・ネ・アルベールはゆるゆると歩いていた。
とはいえ足取りが遅いのは緊張ゆえではない。単に「朝食を食べ過ぎて少し眠い」からだ。彼女は欠伸を噛み殺しながら、腕に抱えた菓子箱を見下ろした。
「王宮のティーセットは一流ですけれど、お茶請けはイマイチですのよね。今日はわたくし特製“雲シフォン”で補強いたしますわ」
同行する侍女長マルグリットは、主君のマイペースぶりに半ば諦めの笑みを浮かべる。
――今朝、国王直々の召喚状が届いた。内容は“勲章授与と功績表彰”。通常なら正装で早馬を飛ばすところだが、シャルは「表彰式は午後。午前は睡眠確保」と決め込み、昼までしっかり惰眠をむさぼってから出発したのである。
謁見の間。
金糸のタペストリーとステンドグラスが陽光を受け、虹色の斑を床に落としている。
玉座の前で跪くシャルに、国王グスタフ三世が慈父のような笑みを向けた。
「公爵令嬢シャル・ド・ネ・アルベールよ。そなたの領地改革と慈善活動は、王国に多大なる恩恵をもたらした。ここに“金麦穂大勲章”を授与する」
近衛騎士がクッションに載せた勲章を捧げ持つ。シャルは「ありがとうございますわ」と頭を垂れ、胸元に輝く金色の麦穂を眺めた。
――でも正直、重量感で肩が凝りそう。昼寝の邪魔にならないかしら。そんなことを考えていると、王妃エリザベートが一歩前へ出た。
「そしてこちらは私からのささやかな贈り物。あなたの葡萄ジュースを、正式に“王宮公式飲料”と認定します。妊婦も子どもも楽しめる品を作ってくれてありがとう」
王妃がそっと手を差し伸べる。シャルは戸惑いながらも握り返し、柔らかな微笑を返した。
会場の貴族たちが拍手する中、国王が声を潜めて続ける。
「王太子との一件では苦労をかけたな。……あやつも自業自得、反省しておる。そなたの自由は尊重するが、いずれは我が王家以外にも良き縁談があるやもしれん。心に留めておいてくれればそれで良い」
つまり「息子は諦めたけど、君は国の宝だから味方だよ」という遠回しのエールらしい。
シャルは涼しい顔で頷いた。
「ええ、良きご縁があれば前向きに検討いたしますわ。――昼寝時間を侵害しない相手でしたら」
玉座後ろで控えていた侍従が咳を噴き出す。国王は目を瞬かせ、やがて腹の底から笑った。
「ははは! そなたらしい。よかろう、ティータイムを邪魔せぬ者を探すとしよう」
とはいえ足取りが遅いのは緊張ゆえではない。単に「朝食を食べ過ぎて少し眠い」からだ。彼女は欠伸を噛み殺しながら、腕に抱えた菓子箱を見下ろした。
「王宮のティーセットは一流ですけれど、お茶請けはイマイチですのよね。今日はわたくし特製“雲シフォン”で補強いたしますわ」
同行する侍女長マルグリットは、主君のマイペースぶりに半ば諦めの笑みを浮かべる。
――今朝、国王直々の召喚状が届いた。内容は“勲章授与と功績表彰”。通常なら正装で早馬を飛ばすところだが、シャルは「表彰式は午後。午前は睡眠確保」と決め込み、昼までしっかり惰眠をむさぼってから出発したのである。
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近衛騎士がクッションに載せた勲章を捧げ持つ。シャルは「ありがとうございますわ」と頭を垂れ、胸元に輝く金色の麦穂を眺めた。
――でも正直、重量感で肩が凝りそう。昼寝の邪魔にならないかしら。そんなことを考えていると、王妃エリザベートが一歩前へ出た。
「そしてこちらは私からのささやかな贈り物。あなたの葡萄ジュースを、正式に“王宮公式飲料”と認定します。妊婦も子どもも楽しめる品を作ってくれてありがとう」
王妃がそっと手を差し伸べる。シャルは戸惑いながらも握り返し、柔らかな微笑を返した。
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「王太子との一件では苦労をかけたな。……あやつも自業自得、反省しておる。そなたの自由は尊重するが、いずれは我が王家以外にも良き縁談があるやもしれん。心に留めておいてくれればそれで良い」
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シャルは涼しい顔で頷いた。
「ええ、良きご縁があれば前向きに検討いたしますわ。――昼寝時間を侵害しない相手でしたら」
玉座後ろで控えていた侍従が咳を噴き出す。国王は目を瞬かせ、やがて腹の底から笑った。
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